145.情報共有は大切
今回少し短めです
『いくらなんでも多くない?』
『そんなこと私に言われたって、知るわけないでしょ』
西都を出発してから、2日が経過した。
いや、たった2日しか経過していない。
それなのに――
『でも――魔物に襲われたの、もう4回目だよ? 1日1回以上だよ?』
『だから、そんなの私が知るわけないでしょ?』
明らかに異常な頻度。それも同じ魔物ばかりなのに、サギリの反応が冷たい。
マーロウなら一緒に考えてくれたんだけど――後で手紙を送って聞いてみよう。
うん。そうしよう。
「早く次の村まで進みましょう。やはり、この辺りは危険だ」
僕達がそんな事を言っている間に、氷のお兄さんが魔物を倒したようだ。
ユニィの背丈ぐらいある大きな氷の塊が街道脇にいくつか見える。
『そうだねユニィ。行こう?』
「――うん。そうだね」
そう答えたユニィから感じる感情は不安のままだ。
うん。やっぱり、一刻も早くこのエリアを抜けないと。
僕とサギリは顔を見合わせて頷くと、急いでその場を立ち去った。
――――――
僕とサギリは村長の家の前にぼーっと佇んでいた。
――いや。訂正。
サギリがじっとしていられる訳がない。
その辺りを走り回り始めたサギリを、僕はぼーっと眺めていた。
『長いね』
「そうじゃのう」
何の気なしに言った僕の言葉に、答える声がある。
その声の方を見ると、頭の眩しいおじいさんが座っていた。
――比喩じゃない。
ちょうど目の下に頭があって、光球の術の様にとっても眩しいのだ。
僕が目をぱちぱちさせていると、光球おじいさんがこちらを見上げてきた。
うん。少し眩しくなくなった。
「のう。お主、どこかで会わんかったかのう?」
おじいさんの突然の質問に僕は困惑する。
うーん。
正直、顔は良く見えないけど――
こんなに眩しいおじいさん。会ったことがあれば、すぐに分かると思う。
『――会ったことないよ。多分』
「そうかそうか。やっぱりそうじゃったか。そうじゃのう。お主と会ったのは水辺の洞窟じゃったのう。懐かしいのう」
――なんでそうなるの?
僕は首を傾けてみる。
「おお、その仕草も懐かしいのう。そう言えばお主、水に潜る前には必ずそうやってゴキゴキやっておったのう」
うーん。
何だか他の竜と勘違いしている気がする。
僕そんなに首をゴキゴキしないし、水に潜ったりなんてしないから。
というか、水の中に潜るとか普通の脚竜族はしないよ?
おじいさんの言う脚竜族は、レアクラスの『スイマー』だったんじゃない?
『僕、『スイマー』じゃないから水になんて潜れないよ?』
「分かっておる分かっておる。そういう話じゃもんな」
いや、何が分かってるの? このおじいさん。
コクコク頷いているけど、それやめて。眩しいから。
――僕が困り果てていると、氷のお兄さんとユニィが村長の家から出てきた。
ようやく、魔物出現の情報共有が終わったらしい。
僕もユニィと情報を共有した。
『ねぇユニィ。おじいさんが洞窟に行くと『スイマー』がゴキゴキと水に潜ったから眩しいんだよ!』
――ユニィに変な顔をされた。
困惑の感情も伝わってくる。
だけど大丈夫。――今回は僕も良く分かんないから。




