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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
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144.不安な気持ち

「本日はよろしくお願いします!」


 ユニィの元気な声がお屋敷の外まで響いてくる。

 今日も朝から元気だね――――


『ちょっと。何立ったまま寝ようとしてるのよ。昨日はしっかり寝たはずでしょ?』


『――――ぅん? 昨日は10時間しか寝てないよ?』

『十分じゃない!』


 ――耳元でギュロギュロ叫ばないでよ。頭に響くじゃないか。

 昨日は朝から晩までサギリの訓練に付き合ったから、ものすごーく疲れたんだよ。

 僕は薄目だけを開けてサギリを睨んだ。


 本当、何でサギリはこんなに元気なのさ。

 むしろそれを教えてほしいよ。


 僕達が睨みあっていると、お屋敷の玄関の扉が開いた。


「それじゃあ行くよ――って、何やってるの二竜(ふたり)とも」


 ユニィから軽い怒りの感情が流れて来る。

 僕はとっさに言い訳を考えて――


『リーフェが眠そうにしてるから』


 ――しまった。サギリに先を越されてしまった。

 それに――そんな言い方をされたら、まるで僕が悪いみたいじゃないか。


『――疲れが溜まってただけだよ』


 ――ほらね。

 ユニィが僕を見る目が冷たい。


 一度付いてしまった印象というのは、なかなか覆せないのだ。

 まぁ、眠そうにしてたのは事実だけど。



 ユニィと話している間に、銀鎧のお兄さんが鑑定おじさんを連れて現れた。

 おじさんに会うのは西都に到着した日以来だけど――相変わらず細い身体だね。


 鑑定おじさんは人族だけど、いわゆる普人族ではなくて樹人族という種族らしい。

 え? 植物人間?

 ――って思ったけど、銀鎧のお兄さんの話では樹人族は樹上での生活に適応した種族だったそうだ。

 今では普通に街中で暮らしているけど、昔の名残で体が細くて手足が長いんだとか。


「それでは出発します」


 鑑定おじさんと銀鎧のお兄さんが座席に座ったのを確認して、ユニィが出発の合図を出す。


 聖国までは一週間ちょっとの道のり。

 今度は――何事もなければ良いんだけど。


 僕は首から提げたおやつ袋に少しだけ視線を移すと。

 首を振って嫌な記憶を振り払った。



 ――――――


 ――えーと。

 それで、いきなり何でこんなことになってるの?


 油断したわけではない。

 したわけではないんだけど。

 僕達は――海を背に、三方を魔物の群れに囲まれていた。


「トルーパーアントですね。少々厄介ですが問題ありません」


 対峙しているお兄さんは落ち着いているようにみえるけれど――

 僕達は今、お兄さんと同じぐらいの大きさの魔物、10体以上に囲まれているのだ。


 しかもこの魔物、どうやら機動力の高い魔物らしい。

 竜車を引いているから全速力ではないとは言え、走っている僕達の後ろから追いつかれて囲まれるとは思ってもみなかった。

 ユニィが「事前調査ではこんなのが出るなんて話はなかった」と言ってたけど、こんなのに出会って生き残れるのは、よっぽど強いかよっぽど速いかのどちらかだと思う。


 そして――それだけ機動力が高い魔物に対して、こちらで戦えるのはお兄さん一人。

 お兄さんがどんなに強くても、同時に襲われたら捌ききれないと思う。


 そんな僕の不安な気持ちが伝わってしまったのか、ユニィからも不安の感情が流れてきた。

 サギリを見ると、何か言いたそうな顔でこちらを睨んでいる。

 ――なんで?


 僕が口を開こうとした時に、背後からおじさんの低い声が聞こえてきた。


「少々期待はしていたのだが、あの「聖域の騎士」の戦いを目の前で()()()とは。今回の依頼は大当たりだな」


 思わずそちらを振り返ると、おじさんの目が濃灰色に輝いていた。

 声だけ聞くと落ちついているのかと思ったけど――口元が笑っていて、正直怖い。

 怖いけど――あまりに場違いなその発言に、不安な気持ちが少し和らぐ。


 護衛が一人とか、確かに少しおかしいなとは思ったんだけど――そんなに強いの?

 僕が再びお兄さんの方を向いた瞬間だった。


「『フローズンアース』」


 お兄さんの声が聞こえて。

 そして――終わった。



「やはり水辺だと効果が高いですね。――はっ」


 周囲の魔物達。全ての脚部が完全に氷に覆われている。

 お兄さんはそんな氷漬けの魔物に近づいて、1匹づつ頭を潰していた。


 ――うん。

 確かにこれなら護衛はお兄さん一人で十分だね。


 ユニィも同じ気持ちだと思ったんだけど――

 安堵の感情と一緒に不安のような感情が伝わってきた。


 ――変なの。


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