表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
137/308

132.思い出話

父竜(とうさん)?』


 そう言って、バイスさんが僕の顔を覗き込む。

 そしてしばらく写図(トレース)の父竜と見比べていたけど――


『お前、そういえばブランの奴にそっくりだな――そうか、息子なのか。それなら――ああ。納得だな』


 そう言うと、バイスさんは首を縦に振り始めた。

 何に納得したのか分からないけど――父竜と僕は似ているということかな?

 うーん。僕はあんなにモリモリしてないよ――と思ったけど、写図の父竜は今よりスリムだった。うん。そう言われれば似てるかも?


 僕が首を傾けながら写図を見ていると、怪しいお兄さんが話し掛けてきた。


「そうか。君はブランの――なるほどね」


 そう言うと、両肩を捕まれる。

 何だか目が怖い。


 助けを求めてチラッとバイスさんの方に目をやると、バイスさんはまだ首を振り続けていた――多分楽しくなってきたんだね。

 うん分かる、分かるよ。よーく分かる。僕も時々そうなるから。

 でも――今は僕を助けて。

 ほら。肩を掴む力が強くなってきたよ。

 痛い。痛いって。


「それなら君も」


 ――覗き込んでくる目が怖い。


「――遠くに居るブランと連絡を取ったりできるのかな?」


 僕には――頷くことしかできなかった。




「これで良いのかい?」


 お兄さんがメモを僕に差し出してくる。

 連絡したい内容を紙に書いてもらったのだ。


『うん、大丈夫だよ』


 僕は軽く集中するとキーワードを口にした。


『それじゃあいくね――『ポケット』っ』


 目の前に現れた黒い穴に受け取ったメモを放り込むと、穴が閉じる。

 「え?」とかいう声が聞こえたけど気にしない。

 そのまま父竜(とうさん)(表情筋)を思い浮かべながら、続けて術を使う。


『『サーチ』――それから『ポケット』!』


 紫色の光が伸びた後――消える。

 これで村にいる父竜の所に『ポケット』が起動しているはずだ。


『これで後は待つだけだね』


 そう言って、ふたりの方を振り向いたら凄く変な顔をしていた。

 眉毛の間がウネウネしている。

 ――あれ? どうかしたの?


『何で『筋肉交信(テレマッスル)』じゃないんだ?』


「そうだね。ブランの息子なんだからてっきり――それにさっきの術。メモが吸い込まれて消えたけど、足場を作る術じゃなかったのかい?」


 ふたりの言葉を聞いて、僕も思わず驚いてしまった。


『いやいやいや。『筋肉交信(あんなの)』が僕にできる訳ないでしょ? もう少し常識的に考えてよ。さっき使ったのは『ポケット』と『サーチ』。僕のスキルだよ。それと――『ポケット』の使い方はこっちの方が正しいんだからね』


 ――何が正しいのかは良く分かんないけど。

 辛うじてその言葉だけは飲み込んだ。多分話がややこしくなる。


『もちろん、『筋肉交信(テレマッスル)』は普通なら『パワーラプトル』以外使えない術だけどな。ただ、()()ブランの息子ならもしかしたら――と思ったんだよ。――まさか、俺達の想像を超えてくるとは思わなかったがな』


「確かに。でも――よく考えたら、()()ブランの息子なんだから、これぐらい当たり前なのかもしれないけどね」


 ――何だかさっきから酷い言われようだ。

 だけど――


 冷静に父竜の事を思い出してみると、思わず頷きそうになってしまう自分が居る。

 いや、僕は「普通」だけど、父竜は――

 村の筋肉仲間(マッスルメイト)と一緒に焼肉(肉祭り)と称したパーティを開き、筋肉談義(世間話)に花を咲かせる。

 そんな村での出来事を思い出す程に、頷きそうになってしまうのだ。危ない危ない。



『――あの時も突然だったな』


 ――僕が一竜(ひとり)葛藤している間にも、話は進んでいた様だ。


「そうそう。突然『内なる声(マッスルボイス)』が聞こえたとか言い出した時は――さすがにちょっと驚いてしまったね」


『しかも――そのまま一歩も動かずに全身を震わせて――俺は驚きを通り越して怖かったな。後から『筋肉交信(テレマッスル)』という新術を開発したと聞いて、理解はできたけどな。理解は』


 ――ん?


 今、バイスさんはさらっと言ってたけど、父竜って()()を開発したの?

 え? もしかして村の仲間達に「覚醒者」って呼ばれていたのも、そういう意味だったの?


 ――何だか軽く頭痛がする。


 今日は色々有りすぎて頭が疲れてきたのかもしれない。

 そろそろ糖分を摂取しないといけないんだけど――いつまで経ってもおやつは出てこないし。


 僕は溜息を吐くと、いつ終わるともないふたりの思い出話に耳を傾けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ