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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
136/308

131.なんで

『ねぇバイス。これって一体どういうこと? 何で怪しいお兄さんがこんな所にいるの? ねぇなんでなんでなんで?』


 思わずバイスさんを問いただす。

 もしかして――おやつを餌に嵌められた?

 そう言えば、おやつをくれるからといって知らない人に付いて行ったらダメって、学校の先生から教わったような気がする。

 ――って、学校って何だっけ?


『どういうことも何も――この怪しいのが俺の契約者のトロアだよ』


「そうそう。俺とバイスは固い絆で結ばれているんだよ。って、あや――」

『ああ。そういうことだ』


 怪しいお兄さんが続けて何かを言いかけていたが、それを遮るようにバイスさんが頷いた。


 ――僕はふたりの言葉を聞きながらも、その様子を観察する。

 少しでも怪しい動き――例えばドアの鍵を閉めようとしたりとか――が無いかを監視する為だ。


 とりあえず今のところは、ふたりとも怪しい動きは見せていない。

 バイスさんはその場に無表情で立ったままこちらを眺めているし、一方の怪しいお兄さんは、怪しい笑みを浮かべながらこちらを見ている――って、あれ?

 そう言えば、今日も怪しいのはそのままだけど、前みたい(原色おじさん風)にがっついては来ないね。なんで?


 僕が思わず首を倒して傾けると、バイスさんが声を掛けてきた。


『――どうかしたのか?』


『うん。何だかね――前と違って、お兄さんが原色おじさんみたいな雰囲気で迫って来ないなぁって』


 ――うーん。どう考えても不思議。僕はさらに首を横に倒す。

 てっきり、もっと質問攻めにあったり、囲まれて周りをぐるぐるされたりすると思ったのに。


『原色おじさんが何かはわからないが、お前またそんなことしたのか?』


「おっと『そんなこと』とは心外だね、バイス。俺にも原色おじさんが何かはわからないけど――彼の事は()()()()勧誘しただけだよ」


『いつも通りじゃないか!』


「いつも通りだから何の問題もないだろう?」


 ふたりの間で何やら言い争いを始めてしまった。

 飛び交う言葉がだんだんと熱を帯びてくる。そして僕は――だんだん熱が冷めて(どうでも良くなって)きた。


 ――そんなことよりも、僕のおやつはまだなのかな?


 そう思ってバイスさんの方を見たけれど、僕の視線には気付いてくれない。

 もう少し時間がかかりそうだね。これ。



 僕はちょっと暇だったので、部屋の中を見回してみることにした。


 どこかにお菓子が落ちてないかな?


 そんなことを思いながら注意して見回していたら、棚の上に気になる絵を見つけた。

 多分、複写術と呼ばれる術で本物そっくりに描かれた絵だと思うんだけど――


 絵の真ん中には髭面のおじさんが居て、おじさんの肩の上には小さな少女が乗っている。

 おじさんの左には黒髪のお姉さん、右には赤い巻き毛の少女。さらに右側には黒髪の四角顔のおじさんが立っている。

 おじさんの左手は目の前にいる青黒髪の少年の肩に乗せられていて、そして――


『――なんで?』


 僕は思わず声が出てしまう。

 その声にバイスさんからの反応があった。


『どうした? ――ああ、記念写図(トレース)が珍しいのか。そいつは12、3年前の写図だな。ほら、そこの手前に並んで写ってる竜の右の方が俺だよ』


 バイスさんが説明してくれようとしたけど、その言葉は僕の疑問の答えにはなっていない。

 だって――


『ねぇ、なんでこんなところにいるの? 父竜(とうさん)


 今よりは明らかに若いけれど。

 バイスさんと並んで写っているのは――間違いなく父竜(とうさん)だった。



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