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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第二章 おつかい騎竜
13/308

13.お約束

 僕は目の前の黒い穴を見つめる。

 信じられない気持ちと、当然という気持ち。


 これは明らかにスキル――リトルゼノラプトルの固有能力によるもの――だと思う。

 だって、ユニークスキル(進化樹)を使った時と似たような感覚があったから。


 試しに、スキルの停止を念じてみると、黒い穴が消える。

 つまり、『キーワード』は――


『ポケット』


 ビンゴ! また目の前に黒い穴が開く。

 うんうん。ところでビンゴってなんだっけ。うんうん。


「ねぇリーフェ。その黒いの何?」


 僕が独りでコクコク頷いていると、ユニィが尋ねてくる。

 ふふふ。聞いて驚いてね。ユニィ。


『ポケット。僕のスキルだよ』


「ポケット?」


 ユニィにはピンと来ていないようだ。むむむ。


『ポケットだから、物を入れられるんだよ。多分』


 まぁ、色々試してみないと分からないけど、多分そうだと思う。多分。


「ふーん。便利そうだね! えい!」


 そうでしょそうでしょ――って、何してんのユニィ!


 油断していた僕の目の前で、ユニィが持っていた()を黒い穴に入れていた。

 まだ検証もしていないのに。取り出せなかったらどうするつもりなの!?


 ――――――


『出ろでろデロデロ』


 って具合に念じたら、中のものはすぐに出てきたんだけど――これって代金の銀貨じゃん!


 まあそう言う事で、現在僕はユニィをお説教中です。くどくど。

 何だか、目を毛刈り直後の裸羊みたいに丸くして「なぜ怒られているか分からない」という感情が伝わってきたので――『もしも出てこなかったら弁償だったんだよ? お手伝い30回追加だよ』と言ったら少ししおらしくなりました。はぁ。



『――もう帰ろう?』


 何だか、僕も疲れちゃった。

 帰ってスキルの検証もしてみたいし、また何かが起こる前に帰った方が良さそうだよね。


 代金はとりあえず包みごと皮袋に放り込んで、ユニィを背中に跨らせて。ツノうさおばさんの待つ隣村に走る。


 おうちに帰るまでがおつかい。魔物が出るかもしれないので決して油断はしない。

 周囲を見回しながら。けれども最高速でひた走る。


 黒い岩の分かれ道は右に曲がって、真っ直ぐだったよね。

 はいっ。分かれ道は右! っと。

 何だか途中でユニィが言いかけたけど、言い訳は帰ってから聞くんだからね!



 15分ほど走った後。

 ――僕達の目の前には、十字路がありました。

 あれあれ? こんなところ無かったよね?


 ――うーん。

 なんでこうなったか分からないけど、そういえば僕もよく迷子になるんだった。


 ユニィのことは言えないみたい。

 多分黒い岩の分かれ道の所だよね。そこしか分かれ道はなかったし。

 引き返そう――かな。



 ――――――


「あれ? 思ったよりも時間がかかったわねぇ。どうかしたのかい?」


 いえ。

 何も聞かないでください。

 ユニィと僕は、目で訴える。


「ま、まぁ。何があったかは知らないけど、初めてだからしょうがないさね。次は気をつけるんだよ」


 何かを察したツノうさおばさんがフォローしてくれた。

 ありがとう。ツノうさおばさん。



 気を取り直し、ユニィが僕の首に掛けた皮袋から代金を取り出して、ツノうさおばさんに渡す。

 ちょうど銀貨3枚だ。

 うん。これで1回目のお手伝いは終わり。あと49回。あっという間に終わりそうだね。


 僕達はそのまま村の門を抜け、ユニィの村へと走った。


 ――そういえば、見張りのおじさんが居なかったね。

 サボってるのかな?



 ――――――


「あー。こいつはマズイな」


 そう呟くと思わず溜め息を吐く。

 いや、今だからまだ良かったと言うべきなのか?


 何気なく聞いた質問だったが、その返答には思わず耳を疑ってしまった。

 何かの見間違いじゃないかと思って、自分の目で確かめに来たんだが……


「ギィギァ」


 木々の開けた場所に、ゴブリンがいる。

 しかも、1匹2匹ではない。見える限りでも10匹以上の数である。


ゴブリン(G)を1匹見たら10匹は居ると思え』

 それは冒険者界隈では有名な格言である。


 とは言え、流石に20匹見たというのは多すぎだと思っていた。

 だが――


「こいつは本当に100匹以上居るのかもしれんな」


 溜め息しか出ない。

 のんびりするために田舎に引っ込んだっていうのに、何故こんなことになるんだか。


「あー。あいつらを呼んで片付けさせるか」


 俺は後輩達の顔を思い浮かべながら、誰を呼べば楽ができるか考えていた。



(追記)

 わかってる人には蛇足ですが、一応補足。


 分かれ道は以下のような感じでした。

 なんで迷うんだというところですが、子供だから仕方ないということで、大目に見てあげて下さい。



├→ニルツ

クオルツ


(※ 上記の図の上=北ではありません。左下辺りが北です)

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