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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
128/308

123.調査

『お願い。頼んだわ』


『分か――』『大丈夫サラ。私達に任せて』


 サギリとサラさんが二竜(ふたり)で頷き合っている。

 完全に僕は蚊帳の外だ。



 今日は巻毛お姉さんとサラさんの代わりに、土の遺跡に向かう日だ。


 土の遺跡は、聖国から僕達の足で30分程度と比較的近い場所にある遺跡だ。

 遺跡の形状としては地下に広がるタイプで、地上部分は森に覆われている。

 壁面が土色をしている他は特にこれといった特徴のない遺跡だが――あえて言うならば。この遺跡の特徴は、その広さだ。

 この遺跡の地下部分。それはかなりの範囲に広がっている。

 階層は地下6層まで、各階層の広さも端から端までの距離が優に1km以上もあるのだ。


 この遺跡。その広さから、発見当初は地下都市だと考えられていたらしい。

 ――最下層で祭壇が発見されるまでは。


 その祭壇の存在と壁面の色調。

 この二つから、現在は近隣の遺跡と同様、この遺跡は何らかの祭祀場の跡と見なされている。

 ちなみに、今となっては浅い階層に茶属性素材を目当ての冒険者が潜る程度で、深い階層は放置されているそうだ。


 ――全部ディーノさんからの受け売りなんだけど。


 ところで――そう言えばなんだけど、この遺跡の属性は茶属性なのに、何故()の遺跡というんだろう。

 そう思ってディーノさんに聞いてみたら、『そっちの方が語呂が良いから』という理由らしい。

 大したことのない理由だし、本当かどうかも分からないけど――妙に説得力のある理由だった。



 ――――――


 時間は午前8時。


 発着場に朝1便の出発時刻がやってきた。

 今日は巻毛お姉さんとの簡単な打合せがあったため、早朝6時の便(明けの1便)は運休して、2往復目に相当する朝1便からの運行だ。


 見学で初めて青の遺跡に行った時みたいに、乗客がほとんどいない事態を想定していたけど――既に座席は埋まっている。

 今は、乗客の荷物を積み込んでいるところだ。この荷物積み込みが完了次第、土の遺跡に向けて出発する予定だった。


『何だか荷物多くない?』


「そうだね。多いね」


 僕の呟きにユニィが小声で返す。

 今日の乗客は6人だけど――荷物がやけに多い。

 青の遺跡で一番荷物が多かった時と比較しても、倍ぐらいの荷物がある。


『重い方が脚力の鍛錬になるから、私は構わないわよ?』


『いや。僕も荷物が重いのは平気だけど――ね。遺跡で何かあったのかなぁ』


「うーん。どうなんだろ」


 三()()で話しながら、荷物を荷台に乗せていく。

 やがて荷物も積み終わり、土の遺跡に向けて初めの一歩を踏み出した。



 ――――――


「だから荷車を一台借りようって言ったんだよ」


「まぁそう言うなよ。結局、荷台の広い竜車が見つかったんだから良いじゃないか」


「そういう問題じゃないっての」


 いつもの通り。

 騒々しい二人を横目に、俺はリーダーのクラウスに問いかけた。


「なぁ。いまさらあの遺跡に何かあると思うか?」


「さぁな。――依頼は依頼だ。何事もなければそれで良し。何かあったとしても、俺達は()()()()を報告するだけで良いんだからな」


「それはそうなんだが――噂じゃあ青の遺跡も何の前触れもなく()()()が作動し始めたって言うじゃないか。もしかしたら――な?」


 そう。俺達は今――土の遺跡へと向かう竜車に揺られている。

 目的は遺跡の最深部。祭壇があると言われる大広間の調査だ。

 依頼主は冒険者ギルド。青の遺跡での異変を受けて、他の遺跡でも異常がないかを確認する必要があるらしい。


 俺は手元の地図に視線を落とした。ギルドから貸与された遺跡内部の詳細地図だ。

 土の遺跡は地下6階までの深さがある。すでに踏破された遺跡とはいえ、最短距離で進んでも祭壇までは片道で1日以上掛かるだろう。


 ――荷台にちらりと目をやる。

 通常の遺跡探索用の装備に加え、遺跡で数日泊まり込むための野営用装備を追加している。

 最短だと、往復で一泊二日で済むはずだが――遺跡の内部では何が起こるかわからない。

 むしろ今回の場合は、何かがあることを前提とする必要がある。

 自然、荷物も多くなってしまったのだ。


 ふぅと一つ息を吐く。

 まぁ、クラウスの言う通り「依頼は依頼」だ。

 変に気負う必要はないのかもな。


 ただ――


「お前らいい加減にしろよ」


 騒々しい二人は黙らせておいた。


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