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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
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122.本当の気持ち

「おいマーロウ。何だか楽しそうだな」


『そうか?』


 相棒の言葉に惚けてみせる。

 まぁ、感情は筒抜けなんだがな。


「見ればわかる。それより――何か分かったのか?」


 そう言うと、相棒は俺の手元を覗き込んできた。


 ――おいおい。配慮という言葉を知らないのか?

 いつまで経っても嫁の来手がないのはその辺りじゃないのか?


『そうじゃねぇよ。親友からの手紙だ。金を貯めて『鑑定』して貰うらしい』


「親友と言うと――リーフェスト君だな。そうか、ようやく『鑑定』を受ける気になったのか。彼の術は明らかに特殊だったし、結果が気になるところだな――ああ。それで楽しそうなのか」


『まぁそういうことだ』


 リーフェが鑑定を受けるのは、1年以上は先になるようだ。

 それでも――

 以前から謎であったリーフェのスキル。待ちさえすれば、その解明の糸口が見えてくるのだ。

 これが楽しくない訳がない。


 それに――


『他には、黄の遺跡という場所で目が痛くなったらしい。どうやらその遺跡では、モテたいという気持ちが強いほど、周囲の黄金色に目を奪われるみたいなんだが――』


 俺は思わず口角を上げる。


『そんな訳ないのにな』


 ――まったく。何を勘違いしているんだか。相変わらず面白い奴だ。


 相棒が「どういう意味だ?」とか言っている気がするが――聞こえなかった振りをした。



 ――――――


 ――イライラする。


 相変わらずリーフェには、考えていることが全く伝わらない。

 こういう時、マーロウがいれば上手くリーフェを誘導してくれるんだけど。


 今日だってそう。

 本当に言いたかったのは、諦めるとか諦めないとかじゃなくて。


『リーフェは本当はモテたいとは思っていない』


 単純に。そう単純にそれだけのことなのに。


 昔から――リーフェの『モテたい』という発言は周りに流されているだけで、本当にモテようとしていた試しなんかない。


 確かに、黄の遺跡でのリーフェは落ち着いてなくて、いつもの二割増しぐらいで奇行が見られたけど――どちらかというと、周りの黄金色から遠ざかろうとしていたように見えた。


 顔の四角い――ええと、ゴダールさんだったっけ?

 そのゴダールさんが言っていた「モテたい気持ちが強いほど、周りの黄金色に目移りして落ち着かない」という話とリーフェの行動は、似ているようで根本のところでは正反対だ。


 何故か本人は、その違いに気付いていないみたいだけど。

 ――私が指摘しようとしても、最後まで話を聞かないし。



 そこまで考えると、私は深く息を吸う――イライラを落ち着かせる。


 何はともあれ。

 黄の遺跡でリーフェが落ち着きを失うのは事実。

 当面――黄の遺跡行きの時は、私一竜(ひとり)で対応することになりそうね。



 ――――――


「――『鑑定』かぁ」


 思わず出てきた声とため息。

 その重さに自分でも驚く。


 今日リーフェが提案してきたこと。

 西都ウィスディンでの『鑑定』。

 もちろん『鑑定』の対象は、私とリーフェが持つ正体不明のスキルだ。


 ひとまずはお金を理由に先延ばしにしたけれど、お金はいつか貯まる。

 リーフェは『鑑定』に希望を抱いているみたいだけど――

 私は。正直言って、()()を知るのが――怖い。


 ――今まで『リンケージ』が発動した場面。

 サギリとの契約時に、解けゆくリーフェとの絆を繋ぎ止めた時。

 シードルさん達との壮行会で、シードルさんとロゼさんの絆を少しだけ修復した時。

 これらの時の効果から考えると、このスキルは「絆」に関連したスキルのように思える。


 だけど、このスキルの事を考えていると――私は不安に襲われる。


 何故かは分からない。

 初めは気のせいだと思ってた。そして、気付いた後も気にしないことにした。

 だけどその不安は消えることは無くて――

 だからできるだけ考えないようにしていたのだけれど。


「いつまでも逃げてはいられないよね」


 敢えて口にして、自らを奮い立たせる。

 まだまだお金が貯まるまでは時間が掛かるけど。


 『リンケージ』の術。正体不明の謎スキル。


 ()()にしっかりと向き合う覚悟を決めた。


次話から第5エピソード。

5章に向けて、少しずつ話の流れが加速します(予定)。

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