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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
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121.おちついた

 今日も元気なお日様の下。

 僕は木陰に寝そべっていた。


 ラズ兄ちゃんじゃないけれど、地面の上にお腹から顎までを付けて寝転ぶと――何だか気持ちが落ち着く。

 考えも上手くまとまりそうだった。



 目を瞑り。

 進化樹をイメージしながら『ツリー』のキーワードを念じる。


 ()()に展開されるのは、幾重にも分岐する進化樹の拡がり。

 これまで幾度と無く眺めていた、見慣れた光景だ。

 だけど今日見る場所はそこではない。


 進化樹の。

 その根本から分岐する1本の枝。

 言わずと知れた『リトルゼノラプトル』への分岐だ。


 ――この分岐から。

 僕は進化の道筋を見失ってしまったんだ。


 それまでは――僕は視線を移す。

 『リトルラプトル』から『エルダーラプトル』。そして『ハイラプトル』を経由して『オリジン』へと至る道。

 まずは王道とも言うべき『ハイラプトル』を目指しつつも、その先を睨んで物語に残るような職業の契約者(パートナー)――つまりは、勇者とか聖女とか呼ばれる人達と契約しようとしていた。


 今となっては、その話は子竜(こども)の描いた絵空事に過ぎないと分かるけれど。

 それでも――()と比べたら。


 進化樹の『リトルゼノラプトル』の先を見る。

『エルダーラプトル'』。そして――『ゼノラプトル』。

 この2つの進化は、ある種偶然の産物だ。

 残念ながら僕の意思が働いたものではない。


 そして恐らくこの先は――ある程度自分の意思で動かないと、進化することはできないだろう。


 ――だからこそ。

 もう一度、この2回の進化を振り返ってみようと思う。


 まず『エルダーラプトル'』には、『覚成の儀』を終えた瞬間に進化した。

 これは明らかに『覚成の儀』の影響だと思う。

 『リトルラプトル』が『エルダーラプトル』になるように。

 『リトルゼノラプトル』が『エルダーラプトル'』になったんだ。


 思えば『リトルゼノラプトル』に進化した時も『友誼の儀』の時だし、僕達の行う儀式が直接的――あるいは間接的に進化に影響しているのは間違いないと思う。


 次は『ゼノラプトル』だけど――こっちは()()()()()()()()()()進化してた。

 いや、僕から見るとそうとしか言いようがなかったんだけど――僕以外の話を含めるなら、この時影響した可能性があるものは四つだ。

 つまり――


  一つ、先程も考えた死にかけた後の復活。臨死からの帰還とか――ありそうだ。

  二つ、僕が飲んだ流行り病の薬に何らかの成分が含まれていた。出所不明の薬だし可能性としてなくはないと思う。

  三つ、サギリとユニィが『友誼の儀』を執り行った事。普通なら僕には関係ないんだけど、僕とユニィは契約で繋がっていたからその影響が出た――のかもしれない。

  四つ、ユニィが使った『リンケージ』の術の影響。未だに何の術かはわからないけど、だからこそ可能性は十二分にあると思う。


 これらの中で可能性が高いのは三つ目と四つ目。

 だって――この時は同時にサギリも進化しているからね。


 ――うん。

 進化に影響した要素についてはこんなものかな。



 それで問題は、次の進化のために何をすれば良いかなんだけど。

 結局、ここで詰まってしまう。


 脚竜族の儀式を行うにしろ、僕がまだ行ってないのは『婚姻の儀』と『葬送の儀』だけ。

 『葬送の儀』はあり得ないから除外するとして、残るは『婚姻の儀』だけど――悲しきかな僕にそんな相手が居る訳がない。


 ユニィが新しい脚竜族と『友誼の儀』を行うというのも、真面目なユニィの性格からすると、余程の理由がない限り無さそうだ。


 ユニィの使った『リンケージ』の術については、正直良くわからない。

 せめてこの術が何のスキルなのか――そして、何の意味がある術か分かれば判断できるんだけど。


 ――どれも良い方策が思い浮かばない。


 後は――これまでも考えていた様に、地道に僕自身のスキルを強化していくぐらいかな。

 だけど、これも何のスキルか分かっていないから、延々と同じ術を繰り返し使うぐらいしかできていない。

 何のスキルかが分かれば、もう少し効率的にできると思うんだけど――


 ここまで考えてふと。

 僕は以前から先延ばしにしていた事を思い出した。


 『鑑定』――そのスキルを使うことのできる人物が「西都」と呼ばれる場所に居る。


 ――これだ。


 僕のスキルもそうだし、ユニィのスキルもそうだけど。

 正体不明の謎スキルが何のスキルかが分かれば、その先の進化に繋げることができるかもしれない。


 僕は目を開く。

 視界が開ける。

 白い家々がお日様に照らされ輝いている。


 早速――西都行きについてユニィと相談しなくちゃ!


『ユニィー!!』






「ごめんね」


 僕の名案は打ち砕かれた。


 どうやら『鑑定』スキルは希少だから、料金が高いらしい。何と、1回の鑑定で金貨5枚必要だそうだ。

 つまり、僕とユニィで合わせて金貨10枚。

 道中の宿泊費等も含めるとそれ以上のお金が必要になる。


 ――少なくとも、1年以上はお金を貯める必要がありそうだ。


「私も気になってるんだけど――調べてみたら思ったより料金が高くて」


『――うん』


 次の進化のためにすべきこと――それは真面目に働くことだったみたい。


本エピソードは次回までです。

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