120.そうじゃない
今回諸事情により短いです。
「――という訳だ。まぁ、俺の私見でしかないがな」
聖国に戻ってすぐ。
僕達は角顔おじさんから先程中断した話の続きを聞いていた。
その話をまとめると――
『つまり――モテたい気持ちが強いほど、周りの黄金色に目移りして落ち着かないんだね』
こういうことらしい。
『ふーん。本当かしら?』
『――サギリは早く走ることしか興味ないからね。分かんないんだよ』
サギリが何だか横槍を入れてきた。
自分が平気だったからって、その言い草は――
『あら? 貴方モテたかったの? 私はてっきり――』
『当たり前でしょ!?』
僕はサギリの言葉を遮った。
なに言ってるの?
進化したらモテる。モテるから進化したい。
それが脚竜族の常識でしょ!
『でも、リーフェ。貴方進化してもモテないし、すぐに食べ物に釣られるし――』
サギリが僕の目を見る。
『――もう諦めたんだと思ったんだけど』
『いくらサギリでも、言って良い事と悪い事があるよ!』
あまりもの暴言に思わず口調が強くなる。
僕の口調にサギリも少し目を丸くさせた。
――そうだよ。
確かに何故か進化してもモテないし、お肉も甘いものも大好きだけど――まだ諦めてないから。
『僕が目指すのは6回進化。きっと――絶対。そこまで到達するからね!』
サギリの目の前に顔を寄せ、目を覗き込んでそう言い放つ。
『――分かってないわね』
サギリは僕から目を反らし、横を向いた。
――何だよ。
僕が何を分かってないって言うんだよ。
反論しようと僕が口を開きかけた――その時。
「こら! リーフェもサギリも。喧嘩しちゃ駄目でしょ!」
今まで黙っていたユニィが割り込んできた。
『そんなこと言ってもサギリが――僕の事、一生モテないって言うんだよ!』
「え? そこまでは言って無かったでしょ……」
あれ? そうだっけ?
ユニィから少し悲しみの感情が流れて来たけど――まぁ良いや。
とにかく。
サギリが何と言おうと、僕は絶対に6回進化に到達して、モテモテライフを満喫するんだ。
ここは譲れないからね。
僕が決意も新たに意気込んでいると、角顔おじさんの声がした。
「もうすぐ昼3便の時間だが――その様子だと無理そうだな」
ユニィがおじさんに頭を下げている姿を見ながら――ふと考える。
あの日から――ユニィと出会ってリトルゼノラプトルに進化してから今まで。
本当の意味では、進化について考えて来なかったのかもしれない。
確かにそれまでは、成竜後にハイラプトルになる――その為にすべきことだけを考えていたはずなのに。
多分。聞いたことも無い進化で、進化の道筋を見失ったことが原因だと思うけど――
もう一度見つめ直してみよう。
そう思った。




