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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
124/308

119.落ち着かない

 ――目が痛い。


 目が痛い。


 目が痛い。目が痛い。目が痛い。


 どこを見回しても――黄金色の輝きが目に入る。


 目を瞑っていても残像が目に残るようで。

 落ち着いて休むこともできそうにない。



 黄の遺跡――その遺跡の特徴は黄金色。

 全体的に黄色く、そして――金属のような光沢を持つ。

 それがこの遺跡の特徴だ。


 黄属性が表すのは雷と金――金属だからね。

 それに倣って、遺跡も黄金色をした金属で出来ている。

 ――そしてそれこそが、僕が今困っている原因なのだ。


 ――ああ。目が痛くて落ち着かない。



 黄の遺跡に到着した僕達は、帰りの便が出発するまでの間、黄の遺跡周りを散策していた。

 ――本当は待機所があるんだけれど、黄金色に囲まれて落ち着かなかったからね。


 だけど――遺跡の周りも黄金色に溢れていて、黄金色の草、黄金色の実がなる果樹、黄金色の鳥に、黄金色の甲虫――といった具合で、結局黄金色に囲まれる羽目となった。

 全くもって落ち着かない。


 あっちに行って、そっちに行って。

 また待機所に戻って、皮袋(おやつ袋)に頭を突っ込んでみたりして――


『何一竜(ひとり)で騒いでるのよ』


『――そっちこそ。何で平気なんだよ!』


 視界の中の黄金色を消そうとして躍起になる僕とは対照的に、サギリは平然としている。

 これがユニィ達が言っていた相性というヤツ?

 ――例えそうだとしても、何だか解せない。


「うーん。サギリは平気そうだけど、リーフェは駄目みたいね」


 ユニィの声が後ろから聞こえてきた。

 ――うん。こんなの無理無理。

 今度からは、ここはサギリ担当にしてもらおう。うんうん。そうしよう。

 僕は振り向きざまに訴えた。


『ここは僕には無理だよ――って、何で持ってるのそんなもの!?』


「そこで拾ったから――奇麗でしょ?」


『そんな羽根なんか捨てて! 今すぐ捨てて!』


「えー。良いじゃない」


 ユニィはいつの間にか黄金鳥の羽根を拾っていたようだ。

 無理やりポーチの中に突き刺しているけど――

 半分以上ポーチの口からはみ出している。

 中途半端に隠している分、余計にはみ出した部分の黄金色が目に映えて――落ち着かない。


 そんな時――待合所に僕達を呼ぶ角顔おじさんの声が響いた。

 ユニィとそんな攻防を繰り広げている間に、十分な時間が経過したようだ。




「結果は――ああ。聞くまでもなさそうだな」


 角顔おじさんが僕を見ながら一つ二つ頷く。

 そして、そのままサギリの方を向くとまた一つ頷いた。


「ふむ。珍しいな。こちらは大丈夫そうだ」


 何だかサギリが得意そうに――見える。

 ちょっと悔しい。

 サギリを睨んでいると、おじさんが呟く声が聞こえた。


「――総じて異性からの承認欲求が強い脚竜族は、ここでは平常心を保てない事が多いんだがな」


『え? それってどういう意味!?』


 僕は思わず聞き返す。

 承認欲求だか商人要求だか知らないけど、そんなの初耳だよ。


 当然、おじさんからの返答はない。

 ――僕の声は聞こえないからね。

 そう思っていたら、ユニィがフォローしてくれた。


「今の情報ってどこで手に入れたんでしょうか? 事前にギルドで入手した情報にもここに来る前に聞き取りした話にも、そのような話は無かったのですが」


「――ん? ああ。こいつは俺の経験則だ。色んな脚竜族を見てきたからな」


「経験則――ですか?」


「そうだ。――それよりも間もなく出発だ。その話はまた後だな――どうせ、今分かったところでどうしようもないだろう?」


 うーん。気になる。

 気になるけど――確かに、今分かったところでどうしようも無いよね。

 ユニィも同じ結論に達したのか、こちらをちらっと見て答えた。


「――そうですね。分かりました」


 その回答を聞いておじさんが頷いた。


「それじゃあしっかりついて来な」


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