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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
122/308

117.次へと向かう

「もう身体は大丈夫なんですか?」


『ああ。待たせたな』


 ユニィに答えるディーノさんの声。

 その元気そうな声を聞いて――僕は安堵する。

 例の術の反動で動けなかった身体は、すっかり元に戻ったようだ。

 明日からはディーノさん達も仕事に復帰するらしい。


 ――だけど。

 そうなると、当然決めるべきことがある。

 今日事務所に集まったのは、その事を決めるためだ。

 巻毛お姉さんと角顔おじさんも長椅子に座っている。


「それじゃ、ちゃちゃっと決めちゃおっか」


 お嬢の掛け声でその話し合いは始まった。


「ふむ。今のままで良いのではないか? レイン嬢は忙しい所に加勢することとすれば良いだろう」

「どっちでも良いから、私のところを手伝って欲しいんだけど」


 おじさんとお姉さんは、早速自分の考えを発言する。


「土の遺跡はともかく、黄の遺跡は相性があるから――私達には無理ね。そうだね、ユニィちゃん達は――どうかな。黄の遺跡、試しにしばらく行ってみる?」


 お嬢がそんな二人の意見を受けて、ユニィに問いかけた。

 ユニィはこちらの方をちらりと見てからその問いに答える。


「――はい。私も――他の場所が見てみたいです」


「そう。それじゃあ当面はそれで決まりね。それで――」


 まだユニィ達の話は続いているけど、どうやら来週から何をするかについてはこれで決まったようだ。

 ――何とも話が早い。

 いいの? と思うぐらい、本当にちゃちゃっと決まってしまった。


『黄の遺跡って、そんなに変な所なのかな?』


『そんなこと知る訳ないでしょ』


 一応サギリに聞いてみたが、当然のように切り捨てられた。

 今回は本当に当然なんだけど――それでも少しもやもやする。


『行けば分かるわよ』


 そんな僕の後ろから声がした。

 この場にいる女竜(おんなのひと)と言えば――サラさんだ。


『あなたには無理でしょうけど』


 角度を計算しながら振り向いた僕の耳に、冷たい声が響いた。

 何だかサギリがもう一人増えたような。そんな錯覚に陥る。


『――何で?』


 思わず口をついて出た言葉は。

 ――きっと違う意味だったはずなんだけど。


『さあ? そんな気がするだけよ』


 ――多分。

 その答えは同じだった。

 ――そう思う。



 ――――――


()()も外れか』


 思わず溜め息が出てしまう。

 脚竜族発祥の地があると言われる南の大陸。


 既に10を超える集落を訪れているが――何ら新しい情報はない。

 俺が調べているのは、脚竜族(俺達)が執り行っている『覚成の儀』を初めとした儀式。

 その意味と成り立ちだ。


 『名付(めいふ)の儀』

 『覚成(かくせい)の儀』

 『友誼(ゆうぎ)の儀』

 『婚姻(こんいん)の儀』

 『葬送(そうそう)の儀』


 これら儀式は集落によって微妙に当て字が異なる。

 例えば『覚成の儀』であれば、他にも『核生の儀』、『格成の儀』――といった具合だ。

 そしてそれは――この大陸に来ても変わらない。


 発祥の地に近付けば、これら儀式の名前も当初のものに近付く。

 そしてそれらは、()()という形で目に見える傾向となる――


 ――そう考えてここまで来たんだが、少し見通しが甘かったようだ。

 現時点では、儀式の名前に特異な偏りは見られない。


 まぁ、調べた集落はまだ10を超えた程度。

 そして残りの集落はその10倍以上。

 悲観するにはまだ早い。


 ――そんなことよりも。


『おい。何やってるんだ。早く行くぞ』


 俺は相棒を呼び寄せた。


「ああ。今行く!」


 ――現れた相棒の姿を見て、溜め息が出そうになった。

 ――()()か。


『なあ。その恰好――いつまで続けるつもりなんだ?』


「ん? ――ああ。これも調査の一環だからな。しばらくは続けるさ」


 ――目移りして集中できないんだがな。

 俺は――溜めていた息を思いきり吐きだした。



本エピソードはここまで。

次話からは第4エピソードです。


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