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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
120/308

115.盾

 ――1週間。


 初日は立ち乗りまで出た青の遺跡行きの竜車だけど――

 もうあの時の過熱も収まり、遺跡に向かう冒険者の数も落ち着いていた。


 ――つまりは、乗客全体の数も落ち着いてきたということで。


『お客さん――減ったよね』


「うん。でもこれが普通じゃないかな」


『そうかなぁ』


 僕は発着所を見回す。

 時間はお昼少し前。もうすぐ12時――昼1便の出発時刻だ。


 この時間は元々乗客も走る竜車も少ないんだけど――他の車には大抵幾人かの乗客が乗っている。

 乗客と御者の人が会話しながら待っているのが見えるから、いわゆる馴染みの客――というやつなのかもしれない。


 ――僕達の竜車?

 聞くまでもない。

 早朝6時の明けの1便と、帰りは夕方6時前になる昼4便。

 この辺りは利用者もいるんだけど――この時間(昼1便)は厳しいね。


『おなかすいたね』


『さっき食べたばかりでしょ』


 同意を求めた訳じゃないけど、サギリに呆れ顔で睨まれた。

 さっきのお肉はおやつなんだけど――それを言うと余計に睨まれそうなので黙っておいた。




「――空いてるか?」


「はい。もちろんです!」


 ――油断していた僕の耳に、ユニィの声が響く。

 振り返ると、1mを超す大きな四角い盾を背負った人達がユニィに話しかけていた。


 5人居るけど、全員が同じ様な盾を背負っている。

 当然、皆体も大きく腕周りも太い。

 そして――何故か少し異様な雰囲気だ。

 でも、この雰囲気には見覚えが――


「よし! 全員乗れ!」


「おう!」


 そんな事を考えている間に交渉はまとまったようだ。

 リーダーらしき人の掛け声に従い、残りの4人が声を合わせて答えると、次々と荷台に乗り込んでいく。


 ――まぁ良いか。


 ユニィが出発準備を始めたのを見て、僕は考えるのを止めた。

 多分重要なことじゃないと思う。そう多分。


「行くよ。リーフェ。サギリ」


『うん』『ええ』



 行先は青の遺跡。

 この1週間でずいぶん慣れた道だけど――油断はしない。


 ――『サーチ』。


 聖国を出てすぐに、声に出さずに念じる。

 魔物は――近くには居ない。大丈夫。

 遺跡に着いたら昼食だから、早く行かないとね。

 そういえば、今日の昼食は何――


 ガダダダダッ――


「こらっ! リーフェ」


『ごめんっ!』


 集中。集中。



 ――――――


「荷台付きで助かったな」


 俺は揺れる竜車の座席に深く腰掛けると、隣に座るサブリーダーのアントニスに声を掛けた。


「ああ」


 相変わらず口数の少ない奴だが、その腕前は確かだ。

 このパーティーで背中を預けられるのはコイツしかいない。


 ガダダダダッ――


「おっと」


 突然の揺れに声が漏れてしまう。

 道が荒れているのかもしれない。

 ――ちらりと荷台の後方に置いた荷物(大盾)を見る。

 先程の揺れでも動いた形跡はない。


 しかし――


「こんなものが必要になるなんて、どんな遺跡だろうな」


 思わず口をつく。

 俺達の専門は盗賊の拠点制圧等、対人戦闘だ。

 最近は魔物の討伐にも加わっているが――遺跡の探索みたいな仕事には向いていない。

 それでも遺跡に向かうのは、ギルド(冒険者ギルド)を通した要請があったからだ。


「――ああ」


 隣から声が聞こえた――が、どうやら俺への返答ではないようだ。

 左腕が小刻みに震えている。


「技――いや、術か?」


 珍しく、俺の問いかけにアントニスが答えた。


「――リーダーも習得しておいた方が良い」


 ――まぁ。

 言いたいことは分かるんだが。

 傍から見ると、少しばかり怖いんだよな。()()()


 俺は――

 遺跡の事を一時だけ忘れて、ため息を吐いた。


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