表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
117/308

112.お人好し

 ――くそっ。身体中が痛ぇ。


 まるで身体が自分の物ではないような――そんな痛みに顔が歪む。

 何度味わっても、この痛みには慣れそうもない。

 できることならば、二度と味わいたくないというのが本音だ。


 ――まぁ。あの状況じゃしょうがなかったけどな。


 傍らで事務仕事をこなすレインの横顔を盗み見る。

 このお人好しが、他人を見捨てられるわけがないからな。


 俺は一つ溜め息を吐くと、首を振って頭を切り替えた。


 それよりも――だ。

 俺が動けなくなると、一路線分の竜車が足りなくなる。

 決して乗車率が高いとは言えないんだが、それでも――なぁ。


 再びその横顔を盗み見る。


 ――ああ。

 やっぱり、何とも思ってなさそうだな。

 もう少し自分の為に動いても良さそうなものなのに。


 俺はまた一つ溜め息を吐いた。


『昨日のあいつらも、もう来ないだろうしな』


「そんなことないよ」


 おっと。つい口に出してしまった。

 けどな――


『いやいや。来ないだろ』


 青の遺跡からの復路。

 あんなガラ空きを見てもまだウチに来るとか――ちょっと頭おかしいだろ?

 少なくとも俺ならもう来ない。


「そうかなぁ?」


 レインが呟く。

 今日はやけにこだわるな。

 あいつらに何かあるのか?


 俺はレインを見つめる。今度はそれと分かるように。


「だってほら」


 窓の外を見たレインの言葉に合わせて――事務所の扉がぎいっと開いた。



 ――なんだよこいつら。

 頭おかしいんじゃねぇのか?



 ――――――


『お手伝いに行かないと、全身がギュウギュウガチガチで大変なんだよ!』


 今朝のリーフェの言葉だ。


 突然言い出した上に、やっぱり何を言ってるのかは分からないけど――焦りの感情だけは伝わってきた。

 落ち着かせてから改めて聞くと、どうも『ディーノさんが体調不良だからお手伝いに行かないと』ということが言いたかったみたい。


 何でそんなこと分かるの? ――って思ったけど、私もあの後の事が気になったから。


 だから今。

 私達は『黎明』の事務所を訪れている。



「本当に――いいの?」


「はい」


 念を押すレインさんの言葉に頷きを返す。

 結局――リーフェの懸念は正しかった。


 詳しくは教えてもらえなかったけど――ディーノさんは体調を崩してたし、今日から1週間程青の遺跡行きの路線はお休みする予定だったそうだ。

 だけどそれも「仕方ないよね」って笑い飛ばしてた。


 ――だから。


「それじゃ、この書類をギルドに出して頂戴」


 手渡された紙に目を落とす。

 「所属ユニオン登録票」。そのユニオンと代表者の欄には、それぞれ『黎明』、レインと書かれている。


 ――そう。私達は少しの間――ううん。きっと()()()()()()()()()()

 この『黎明』で働くことにしたんだ。

 その話を始めた時、サギリが真っ先に賛成してくれたのは、少し意外だったけど。


 ――ふと、ギルド受付のお兄さんの言葉を思い出した。


 ――「『ユニオン』とは同種の特徴や思想を持ったポーター同士の集まりです」


 きっと――自然とそうなるんだね。

 部屋の隅に集まっているリーフェ達を見て。


 そう思った。



 ――――――


 私は目の前でぐったりする男竜を見つめる。

 穴が開くほどに――見つめる。


 どれだけ見つめても――何の変哲もない、ただの『ハイラプトル』。

 リーフェが言うような()()()()()があるようには見えない。

 ただ昨日。目の前で見た光景だけが――その存在を確かなものと告げている。


 ――あれ程の強化術があれば。

 ハヤテの――『クロノス』の領域に近づくことができるかもしれない。

 リーフェは『秘密』だとか、『あれはそういうものじゃないよ』だとか言ってたけど。


 ――私は。

 自分の目で見定めるまでは納得できそうにない。

 ただ――それだけ。



 だから――隣でニヨニヨするのは止めてよね。

 まったく。


 少し長くなりましたが、第四章の導入はここまでです。ようやく章タイトルまで繋がりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ