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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
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109.注意

 日が高く昇る。


 照りつける陽光。きらめく水面。上がり行く気温。

 天幕の陰で休んでいた僕達にディーノさんの声が掛かる。


『おい。そろそろだぞ』


 僕は先程聞いた話を思い出しながら、その声に立ち上がる。


 休憩している間に、『黎明』の仕事の内容は聞いていた。

 ――そう。()()()から。


 やっぱり僕だけ聞き逃していたみたいだね――ってそんな話はその辺に埋めておいて。


 真面目な話。

 『黎明』がギルドに登録している依頼種別は、人員の輸送業務全般らしい。

 その中でも、今は聖国と周辺遺跡間の乗合竜車を営んでいるそうだ。

 実は老舗で昔は――とか何とか。ユニィは他にも聞いたらしいけど――僕はそんなの聞かなくても良いよね?


 ――ただ一つ。

 聞いた話の中で注意点があるとしたら――


『お。落ち目の器用貧乏()じゃねぇか』


 僕の思考を邪魔する無粋な声。

 その声に目を向けると、そこには大柄の脚竜族がいた。

 そう――これだ。


『あ? 中途半端なのはお前も同じだろ? この『フロンティア』の()()が』


『まぁそう喚くなよ。俺はこれでも3回進化だぜ? ――能力のある奴が、将来性のある側に付くのは当然だろ? お前達も――おっと』


 ディーノさんが尻尾を地面に叩き付ける。

 その仕草を見て、その脚竜族は後ろに飛び退いた。


 ディーノさんに絡んでいた脚竜族。飛び退くその体には緑色のラインが見えた。

 ――なるほど。大きい口を叩くだけはあるね。


 数少ない属性色進化の中でもさらに珍しい複合属性クラス。

 青と黄の複合属性を持つ『グリーンラプトル』だ。

 当然、僕も実物を見るのは初めてだった。


『つまんねぇ事言ってんじゃねぇよ』


 ――ディーノさんの言い分も分かる。

 繰り返しになるが、ディーノさんの『ハイラプトル』は決して「器用貧乏」ではない。

 むしろ「万能」と称すべきクラスなのだ。

 だから――『オリジン』の話は無くとも、もっと評価されても良いはずなのだ。


『そう――』

「ディーノ! また喧嘩してるの!? あれほど仕事中は大人しくしなさいって言ったのに。――ごめんね。ボレアス」


 ディーノさんに同調しようとした僕の言葉を遮ったのは、あろうことかディーノさんの契約者である茶髪お嬢だった。


 えーっ。ディーノさんは悪くないのに。

 そう思ったけど、お嬢は大柄な脚竜族――ボレアスだっけ――を連れて向こうの方に行ってしまった。


 ディーノさんをチラと見ると、まだ向こうの方を睨んでいる。

 ――僕は改めてフォローすることにした。


『『ハイラプトル』は凄いんだよ。万能なんだよ。可能性の塊なんだよ!』




 何言ってんだこいつ――って顔をされた。


 ――あれ? そういう話じゃないの?



 ――――――


 広場の周囲には、いつの間にか他の竜車が3台止まっていた。

 どの竜車も『黎明』の竜車より大きい。


 1台は白一色に塗られた竜車。レリーフには丸まった猫が描かれている。

 1台は不自然なほど綺麗に磨かれた竜車。レリーフに描かれているのは――山? 島? 何かそんなものだ。

 そしてもう一台。レリーフにツルハシが描かれた、ひと際大きい竜車のそば。

 そこには先程の脚竜族。ボレアスがいた。


 ――えーと。


『どこのユニオンかしら』


 サギリが竜車を見ながら、誰にともなくそう呟く。


「そうだよね。『ホワイトキャット』はギルドで見たのと同じレリーフだし間違いないけど――あとの二つはどこだろう?」


『さっきディーノさんが言ってたけど、あのボレアスとかいう脚竜族は『フロンティア』所属みたいだよ?』


 僕達も何とも考えずにその問いに答える。


『ふーん』


 サギリの返事も気の無い返事だ。


 ――どちらかというと、これからの『戦い』に興味があるんだろう。

 正直に言って、僕もさっきから気になってるからね。




 ――待つこと数分。

 その場の空気が――変わった。


 僕は遺跡の入口に目を向ける。

 そこには――遺跡から出てくる3人の冒険者の姿があった。


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