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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
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101.ローカルルール

『少し緊張するわね』

『え? そう?』

「大丈夫だよ。多分」


 僕達は今。

 聖国の運送ギルドの目の前にいる。

 聖国は聖都とも呼ばれているだけあって、フォリアの町と比べると規模が数倍もそれ以上も大きい。

 だから、それに比例して運送ギルドの大きさも――と思ってたんだけど、大きさ自体はフォリアの運送ギルドと大きく変わらなかった。

 むしろフォリアの町のような竜舎が見当たらない分、敷地としては狭いのかもしれない。


 ――そうなのだ。

 周りを見回してみたけど、フォリアで随分お世話になった竜舎は見当たらないのだ。

 ちょっと残念。


「行くよリーフェ!」


 僕がそんなことを考えていると、ユニィが運送ギルドの扉を潜ろうとしていた。

 いつの間にか、サギリもついて行っている。


『待ってよ!』


 僕も慌ててユニィ達の元へと走った。



 ――――――


「所属変更手続きですね」


 ギルド受付のお兄さんが微笑む。

 何だか全体的にキラキラしてて――爽やかというのかな?

 そういう雰囲気のお兄さんだ。


「はい。お願いします!」

『お願いします』


 ユニィが封が為された手紙のようなものを、爽やかお兄さんに手渡した。

 どうやら、僕が気付かない間にフォリアの町のギルドで受け取っていたらしい。


「少々お待ちください」


 爽やかお兄さんは封書の中身を見ながら、分厚い本に何かを記入している。

 ――多分、フォリアで登録した時の情報とかだと思う。

 途中で一瞬手が止まりかけたけど、総じて手の動きは素早い。

 どこかの猫お姉さんの手続きに慣れた僕達には、脅威の早さだ。


 あっという間に記入を終えた爽やかお兄さんが、微笑みを浮かべたまま続ける。


「皆様はこちらのギルドは初めてだと思いますので、ここのギルドのローカルルールを説明したいと思いますが――宜しいでしょうか?」


「――はい」


 ローカルルール――フォリアのギルドで、依頼受託の為に護衛雇用が必須となった「あの告知」と同種のものだ。

 もしかして――この辺りでも護衛雇用が必須なの?

 少し身構えるサギリに疑問符を浮かべる僕。

 ユニィからは警戒の感情が伝わってくる。

 そんな僕達に、お兄さんは爽やかな笑顔で答えた。


「そんなに身構えなくても、難しいことではありませんよ」


 え? そうなの?


「こちらのギルドでは個人に対する依頼の斡旋は行っていません。ギルドは大まかな依頼種別毎に『ユニオン』と呼ばれる組織を認可します。そしてその各『ユニオン』が依頼者からの依頼を受注し、『ユニオン』に所属する個人に仕事を分配する形となります」


 ――えーと。それってどういうこと?

 今度は僕だけじゃない。サギリも意味が分からないという顔をしているし、ユニィからも疑問の感情が伝わってくる。

 僕達が疑問に思うことは、お兄さんにも想定内だったらしく、聞き返す前に補足をしてくれた。


「『ユニオン』とは同種の特徴や思想を持ったポーター同士の集まりです。長距離輸送。短距離輸送。重量物輸送に軽貨物輸送。輸送するのは荷物か人か。規模も大手から零細まであります。珍しいところでは荷物持ち専門という『ユニオン』もありますし、逆に複数種の認可を受けている『ユニオン』もありますよ」


 ――似た者同士で仲間になるっていうこと――かな。

 それで――ギルドに認可を受けた後は、自分達で好きなように依頼を受けるんだね。


 僕が考えている間に、ユニィが質問を続けていた。


「それって――どこかに所属しないといけないんですか?」


「はい。依頼を受ける為には『ユニオン』としての認可が必要ですので――最低でも自分だけの『ユニオン』を新規登録頂く必要があります。ですが――皆様のようなお若く伝手の無い方には、既存の『ユニオン』に所属することをお勧めしています」


 ――つまりは、今から仲間探しをする必要があるんだね。


『ねぇ。どうやって仲間を探すの?』


 僕が尋ねてみたけど、爽やかお兄さんの反応はない。

 やっぱりお兄さんには僕の声は聞こえてないみたいだ。


「どうやって、その――『ユニオン』に所属すれば良いのでしょうか?」


「そうですね――各『ユニオン』の拠点となる事務所を訪れるか――大手であれば、このギルド内にも出張所が設けられていますよ。まずはそちらでお話を聞いては如何でしょうか?」


 そう言うと、お兄さんは爽やかな笑顔を浮かべたまま、ギルドの奥を手で指し示す。

 お兄さんの手の先を目で追うと、そこには6つほどの長机が並び、それぞれ長机の後ろに人が座っている。

 おそらくカウンター代わりなのだろう。


「ありがとうございました」


 お兄さんにお礼を言うと一番近い長机に向かうユニィとサギリ。

 慌てて追いかけようと振り向いた時、後ろからお兄さんの声が聞こえた。


「同じ依頼種別で認可を受けていても、方針や雰囲気は『ユニオン』ごとに違うので注意してくださいね」


 そういわれてみれば、さっき『ユニオン』のことを説明する時に『同種の思想』とか言ってたね。




 ――何だか嫌な予感がする。






 誤字脱字報告を頂きました。

 ありがとうございます。


 12話辺りのカタカナのニが漢数字の二になっていたという事象でした。

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