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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
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100.ウロウログルグル

 聖国に到着して――3日が経った。


 その間。

 僕とサギリは聖国の中をウロウロしたり、ブラブラしたり、グルグルしたりしていた。

 まぁ、家の中の掃除や模様替えは手伝えないからね。

 時々買い出しには付いて行ったけど、基本できること自体が少ないのだ。

 決してサボっている訳ではない。決して。


 ――それにしても。

 僕は改めて周りを見回す。



 ――ここどこ?



 いやほんと。

 この聖国とかいう都市。全ての通りがお肉を焼く網みたいに直角に交わってるのは良いんだけど――

 周りの建物が全部真っ白で似たような形だから、逆にどこがどの通りなのか区別できないんだ。

 僕には『サーチ』の術があるから、家に帰るだけなら問題ない。――それだけなら。


 ――僕は斜め後ろのサギリを見る。

 珍しく、雑貨屋で買いたいものがあるらしい。


 昨日は一竜(ひとり)で買い物に出たけど、道に迷ってしまったみたいだ。

 まぁ、本竜(ほんにん)は一切認めてないけど。

 帰りが遅いので『サーチ』の術を使ったら、探しに出る直前に飛ぶような勢いで帰ってきた。

 多分、『サーチ』の光を逆に辿って帰ってきたんだと思う。やっぱり、本竜(ほんにん)は認めてないけど。


 そのせいなのかな? 今日は僕に地図を渡して案内役を頼んできた。

 ――当然僕に拒否権はなかった。こんな時でもサギリはいつも通り理不尽なのだ。

 まぁ、僕も暇だったから丁度良かったんだけどね。


 ――と言う訳なので。この状況、絶対に何とかしないと。


 僕はサギリを横目に見ながら、強く心に誓う。

 迷ったなんてバレたら、何を言われるか分からないからね。



 僕は改めて手元の地図を見た。

 地図の上側真ん中には聖殿がある。

 そして残りの部分を縦横に区切る肉網状の通り。

 大小の通りが規則的に組み合わさっているけれど、大きな通りは縦横それぞれ11本ずつある。

 歩いてみた感じだと、300mぐらいの間隔だ。

 そして、小さな通りが大きな通りと通りの間に5本ずつ通っている。こちらは50mぐらいの間隔だ。

 サギリの目指す雑貨屋は、地図の上から7番目から8番目、右から2番目から3番目の大通りに囲まれた場所にあるらしい。

 その辺りに丸が書いてある。


 後は――僕はもう一度周囲を見回してみる。

 今居る位置が分かれば良いんだけど――目印になりそうなものはない。


 やっぱり――これしかないかな?

 この位置から見えなければ、見えるところに行くしかないよね。

 人が多いから嫌なんだけど――僕の名誉の為にはやるしかない。


『ポケット』


 すぐに、僕は目の前に現れた黒い穴に向かって跳びあがる。


『ポケット』『ポケット』『ポケット』


 僕はそのまま高く飛び上がると、周囲を素早く見回した。

 聖殿の位置。

 今居る通りは端から――3番目か。


 最低限この2つだけ分かれば問題ない。

 僕はそう判断して、そのまま通りに着地し――


『――どいてっ!』


 思わず声が出る。

 いつの間にか、着地地点に男の人がいたのだ。

 少しだけ時間の流れが遅く感じる。

 僕の声に、その人がこちらを見たけどもう逃げる余裕はない。


『ポケット』


 僕は咄嗟に『ポケット』の術をその人との間に発動した。

 そして、そのまま現れた黒い穴を蹴るようにして――その場から距離をとる。


『リーフェっ!』


 着地した瞬間にサギリが駆けつけてきたけど、返事をする余裕はない。


 ――危なかったー!


 まだ心臓がバクバクしている。

 少しでも気付くのが遅れたら、大惨事になるところだった。

 やっぱり人通りのある所では、この手は使わない方が良いみたい。


 僕は深呼吸して気持ちを落ち着けると、先程の男の人を見た。

 青黒い髪の毛の背の高いお兄さんだ。

 何だか半分口を開けたまま――顔が固まっている。怖かった――のかな? 怖かったよね?


『ごめんなさい。大丈夫だった?』


 ――返事がない。

 だけど当然だよね。僕達の声は聞こえないから。

 こんな時にユニィが居てくれたら助かるんだけど。

 ――そう思ってたら。


「き――」


『き?』


「君! さっきのスキルは何だい? それに――よく見ると珍しい模様だね!」


 ――あ。これやばいやつだ。

 僕の脳裏にはいつかの原色おじさんの姿が浮かんでいた。


『――それじゃ!』

「あっ! 待って――」


 僕は踵を返して走り始める。

 怪我もしてないみたいだし、大丈夫だよね?


『サギリも行くよ!』


 サギリにも声を掛けて、その場を逃げ出した。




『やっと着いたね……』

『そうね……』


 結局。

 雑貨屋に辿り着いた時には、既に夕日も沈もうかという時間だった。

 サギリが雑貨屋の前に立つ。

 そして――


 何故かこちらに戻ってきた。


『定休日――だって』


 僕は無言で沈む夕日を振り返り――目を細めた。

 今日ばかりはサギリも隣に立ち、目を細めて――



 ――と思ったけど、細めた目線の先(冷たい目で睨んだ先)は僕だった。


 いつも通りでちょっと安心した。





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