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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第一章 芽生え
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1.微睡みの中で

よろしくお願いします。

 僕に意識が芽生えたのはいつの頃だったか。

 気が付けば母の腕に抱かれて微睡んでいた。


 そう、鱗を持つ母竜の手に。



 違和感はなかった。

 不安も不満も無く、日々を過ごしていた。


 ただひとつ。たったひとつだけ。

 僕には不可思議な記憶があった。


 天高く聳える巨石群。

 奇妙な鳴き声を放つ鉄の獣。

 そして、2本の足で真っ直ぐ立って歩く僕。


 周りの成竜(おとな)たちは言う。

 それは前世の記憶に相違なく。僕の前世は人族だったのだろうと。



 人族。

 それは僕たち脚竜族とは友好関係――いや、共生関係にある種族だ。


 僕たち脚竜族は、常に走ることを生き甲斐としている。

 それには後で述べる理由があるのだが、それもただ走るだけではなく、負荷をかけて走る。

 つまり、重い荷物を引いて走ることこそが本能に刻まれた喜びなのだ。


 片や人族。

 彼らは知恵はあるが、重いものを運ぶ力も、風のように疾る速さも、千里を駆ける体力もない。

 そこで共生関係だ。


 この関係がいつから始まったのかは定かではない。

 しかし、いつの日からか。

 脚竜族は、それぞれ一人の人族を友と定め。

 ある時は街中を。

 またある時は戦場を。

 またある時は前人未踏の秘境を。

 共に駆け抜けているのだ。


 さて、ここまでの話では、圧倒的かつ一方的に人族に利がある関係のように見える。

 しかし僕たち脚竜族にもしっかりとした。場合によっては人族よりも大きな利益がある。

 それが「進化」だ。


 僕たち脚竜族は進化する種族だ。

 その進化条件の一つが走ること。それも多く。速く。重く。遠く。広く。

 そしてもう一つの条件が絆。いわゆる信じる心。

 これらが合わさることにより、僕たち脚竜族は進化することができる。


 そして、進化の道筋は一つではない。

 走り方によって変化するし、絆のあり方によっても変化する。


 だから共生関係。

 決して家畜などではない。

 たまに勘違いする人族がいるけれども。



 ――と、まぁ小難しいことを言ったが、珍しく強そうな脚竜に進化すればモテる。

 とにかくモテる。

 僕達若い脚竜族にとっては、それがすべて。それが行動原理なのである。


 ちなみに集落で一番モテた()()()のは、『サンダーラプトル』のノルアじいちゃんだ。

『雷帝の再来』とか言われて、若いころはとてもとてもモテたそうだ――本人談だけど。

 ただ少なくとも、冒険者とかいう人種(?)の友人との冒険譚は、僕たち子竜(こども)たちの最大の楽しみだったりする。

 時々、どう考えても創作としか思えないトンデモ話も混じっているけどね!



『何になるのが一番モテるかなー』


 眠りにつく前の微睡みの中。

 僕は()()()を眺めながら思案に耽っていた。


 ――進化樹。それは僕個人だけが持っているスキル。いわゆるユニークスキルだ。

 効果は単純で、スキルを使用すると目の前に進化樹全体が表示され、クラス――生物としての種族(脚竜族)との区別のため進化種をそう呼んでいる――の進化の道筋がわかる。だから、狙ったクラスに進化ができるという優れモノだ。

 惜しむらくは、進化条件は分からないということだろうか。

 まぁ、今のクラスである『リトルラプトル』から『エルダーラプトル』への進化は成人するだけだから、簡単だけどね。


 参考だけど、ノルアじいちゃんの『サンダーラプトル』は、『エルダーラプトル』から『イエローラプトル』を経由してなれるらしい。

 普通の人は1回進化。多くても2回進化のところ、3回進化だからやっぱりモテたんだと思う。うらやましい。


 だけど、当然上には上がいて、歴史上を紐解くと「三天」と呼ばれる伝説の脚竜族がいる。


 ――一つ、「縮地」のハヤテ。クラスは『クロノス』。

 ――二つ、「飛天」のルテール。クラスは『フェザーリング』。

 ――三つ、「雷帝」のドルーガ。クラスは『メギドラプトル』。


 彼らは5回進化。当然進化樹上も末端に位置している。

 他の5回進化を見てみると、『ガイア』『デスゲイザー』『ヴォルケイノ』『レインボーテイル』といったところで、見るからにモテそうなクラス達である。


 ――でも、僕が目指しているのはそこではない。


 進化樹全体を眺め、一番端を見る。そこにあるのは、前人未到の6回進化。

『エインシェントラプトル』から進化できる『オリジン』。


 どうせ夢を見るなら大きく。

 前人未到。

 絶対絶対モテるよね! コレ。



 さて、前人未到の6回進化――いや、その前の進化も同じだけど。

 その鍵は絆を結ぶ人族にあるんじゃ無いかと、僕は考えている。

 村一番の進化頭、ノルアじいちゃんの友人は冒険者とかいう人種だった。


 この冒険者という人種。

 人族の中でも、いろいろな秘境に旅をしたがる習性がある人種らしい。

 それは、僕らにとって非常にありがたい習性だ。


 特に、ランクというものが高い冒険者ほど秘境に向かう傾向が強いそうだ。

 この前まで町に出ていた、従兄のラズ兄ちゃんが言ってたから間違いない。


 だけど、僕の狙い目はそこ(冒険者)じゃ無い。

 前人未到の領域を目指すなら、それだけじゃダメだ。


 ――ラズ兄ちゃんが教えてくれた、物語の中の主人公。

 勇者とか聖女とかいう特別な人種と絆を結びたい。


 そうすればきっと――6回進化(オリジン)にもなれるはず!


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― 新着の感想 ―
[一言] おお、すごい。 説明が多いのに引き込まれる。
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