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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

鬼子

作者: しらたま

むかしむかしあるところに、鬼の村に住む娘 が居ました。

娘は両親、祖父母、兄、弟二人の8人家族で、幸せに暮らしていました。


ところが、その幸せは長くは続きませんでした。


家を鬼子に襲われたのです。


この村が鬼の村と呼ばれるのには理由があります。


噂が流れたのはもう70にもなる長老も分からないほど前。


鬼の村と呼ばれ始めたのは18年前。


双子の鬼子が生まれてからです。


その子供の母親は鬼の子を身篭ったとして殺されてしまいました。


村の者たちは母親の次は子供たちだと殺そうとしましたが、何度やっても殺せません。

首を掻き切ろうとも、頭をかち割ろうとも、腸を引きずり出そうとも、たちどころに傷が癒えてしまうのです。


村の者たちはその鬼子たちに「恐ろしい」「不気味だ」と言い、近づこうとはしませんでした。


それでも心優しい娘は違いました。


鬼子と呼ばれ忌み嫌われる少年たちにも優しく接していました。


ある日は共に遊び、ある日は食べ物を。

特に近隣に川も無く、畑を荒らす事でしか食べ物を手に入れられない少年たちに、肉はとても喜ばれました。


恐らく、少年たちにとって友人と呼べる友人は娘のみだったでしょう。


だから娘は、少年たちがこんなことをしないと誰よりも知っていました。


それと同時に、娘がこの2人を間違えることはありません。


目の前に居る鬼は、まさしく少年たちの片割れでした。


運良く部屋の外に居た娘は、家族が殺され、喰われようともただ眺めることしか出来ませんでした。


弟が泣きながら「兄ちゃん、姉ちゃん」と助けを求めようとも。


「ごめんなさい。ごめんなさい。」と悲鳴とも呼べる謝罪をしながら喰われようとも。


そして娘はようやく気づきました。

死体の数が家族の人数より少ないことに。


耳を澄ますと弟の悲鳴と共にゴソゴソと音が聞こえました。


音のする部屋へ行くと、そこにはもう一人の鬼子が居ました。


家に来た鬼子は一人ではなかったのです。


足元には祖父と祖母の死体。

その上に庇うように倒れた兄を鬼子は喰っていました。


「なぜこんなことをするの」と、娘が問うと、鬼子は答えました。


「腹が減ったからだ」と。


その時、娘は鬼子たちの父親も鬼であったという話を思い出したしました。


目と髪のおかしな色に加え、この村の全ての人が生まれてからずっと20前後の青年の姿をしていたそうで、この村にいつ来たのか、いつ出ていったのか誰も知らない不気味な人間。


そして悟りました。


結局、半分は人の血が流れていようと鬼の子は鬼の子なのだと。


娘が、そんなもの作り話だと本気しなかった村人の戯言は間違っていなかったと。

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