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魔法使いじゃないから!

魔法使いじゃないから!『レベル3―家庭訪問お断り―』

作者: すみ 小桜

これは、七生の災難のお話第三弾!

基、『魔法使いじゃないから!』の三作目です。

このお話だけでも、わかるようにはなっています。

  ―1―



 四月も後半を迎え、高校生活にも少しなれた僕は、朝からボーっとしていた。


 あぁ、平和だ。だが、その平和がすぐに壊される事になる!


 朝のホームルームの時、先生とその後にもう一人ツインテールの女の子が入って来た。転校生だと教室内がざわめく。


 「はあ! 何やってるの!」


 僕はついそう声を上げて立ち上がってしまった!

 勿論、教室内の視線を一斉に浴びる。


 目の前の転校生は、髪こそ黒いが、ミーラさんだ!

 何、転校生として現れているんだ! アニメか? ドラマか? 帰ったんじゃなかったのか!

 

 僕は、あきら七生なお。今年高校生になったばかりだ。登校初日の帰り道に、銀色に光る水色の髪に瞳の少女ミーラさんと出会った。

 彼女は、自分の世界からモンスターを召喚し、事もあろうにそれを倒すのを僕に押し付けた! 自分が使えなかった『杖』を冷たい雨の中で使わせて!


 お蔭で風邪を引いてその週は学校を休み、そのつえをふる姿を見られていたせいで、『かそう部』に入部させられた! ――この部は、趣味全開! 魔女っ子大好きの大場おおば幸映ゆきはると同じクラスの二色にしき愛音あまねさんがエンジョイする為に作った部だ!


 そしてミーラさんは、部活紹介の時にまた現れて、今度は前より強いモンスターを召喚した!

 全校生徒の前で、また魔女っ子のつえをふる姿を披露する羽目になり、仮だった部は承認され、僕は部長にされられた!


 今度会ったら許すまじ! もう、会いたくもないけどね!

 そう思っていたら、先日僕の目の前に現れた――! 





  ―2―



 「ふう。こんなもんかな」


 僕は腰に手を当て、自分の部屋を見渡した。

 いつもなら寝起きのままのベットも整えた。本棚の本もただ積んである状態なのをきちんと並べ見栄えよく見える。


 今日は、学生ならよく知っている家庭訪問の日。僕の学校では希望者だけ家庭訪問がある。

 部屋も覗かれるかもしれないので、四角な座敷を丸く掃くな感じだけど綺麗にした。


 僕は居間に向かうとそこには、お母さんがいつもより念入りに化粧をし着飾ってソワソワしていた。


 「部屋片付けたよ」

 「もう、そろそろかしらね」


 チラッと時計を見て確認して言ったが、予定の時間まで十五分程早い。

 まだ前の生徒の家にいるか移動中だよ。きっと……。


 ピンポーン。


 「来たわ!」


 インターホンで確認もせずに、お母さんは玄関に向かった。

 いや多分、配達かなんかだよ。いくらなんでも早すぎるって……。


 僕は、違ったわって戻って来ると思い、何か飲もうと冷蔵庫に手を掛けた。


 「来たわよ。七生」

 「え!」


 先生、早すぎるって! ――振り返って驚いた。

 お母さんの横に立っているのは、どう見ても白髪のおじいちゃんだ! 担任の先生は、若い先生だ。お母さんが気合を入れてるぐらい……。


 いやその前に服装が変だ。ワンピースのように、ただ上からスポッと着ただけの服だ。どこかで見たような……。


 「へえ、中ってこうなってるんだ……」


 僕は、その台詞の人物に釘付けになった! いや、正確には驚いて放心してしまった。


 紛れもなくミーラさんだ! そしてその彼女と同じ格好をおじいちゃんはしていた! ――見た事あるはずだ! それワンピースじゃなくて、向こうの世界の服装だったんだ!

 いや、今はそんな事どうでもいい! 何故いる。しかも、お母さん『来たわよ』って言ったよな?


 「ちょ! お母さんに何した?!」

 「いやぁねぇ。何もされてないわよ。それより言ってあったでしょ。お父さんの親戚が日本に来るから泊めるって話」


 ……いえ、聞いてません。

 お母さんに記憶を操作する何かしたんだ……。そんな事も出来るのかよ! アニメかよ! 映画かよ!


 「七生くんや。少し話をしようか?」

 「え? 何で名前を……」


 よく考えれば、僕は彼女に名乗ってない。なのに……。あ! 今、お母さんがそう呼んだのか!

 僕は、おじいさんに首を縦に振り頷いた。

 これ以上、お母さんを巻き込まない為に!




 僕は二人を自分の部屋に連れて行き、バンッとドアを閉め二人に振り向く。


 「何しに来たんだよ! って、どうしてここがわかった!」


 思い返せば、学校の時もそうだった。一体どうやってわかったんだ!?


 「杖だよ。あれはワシが作ったものだ。どうだ、素晴らしいモノだろ?」


 そうか。だから杖を持って行ったあの日体育館に! 何故、よりによってあの日なんだ!

 いや、それよりこれはチャンスだ! 杖を返すチャンス!


 「すっごいものでした! 僕には勿体ない品物ですのでお返しします。それで、持って帰って、もうここには来ないで下さい!」


 僕は、机の上に置いてあった杖を手に取ると、おじいちゃんの前に突き出した。


 「いや、それはもう君のモノだ。大事にしてほしい」


 おじいちゃんは真面目な表情でそう言って、受け取るのを断った。

 いらないから返すって事なんだけどなぁ……。


 「いえ、すみませんがいりません。ごめんなさい!」


 杖を差し出したまま頭を下げる。

 この杖さえなければ、モンスターは連れてこないだろう。あるからいけないんだ!

 だが受け取ってもらえなかった。


 「返されても困る。さっきも言った通り、君にしか使えないレア物だった。いやぁ、見た目が普通のと一緒だから気づかなかったが、ミーラから聞いて驚いた。本当かどうかこの前見た時に、杖もレベルアップし滅多に作れない杖だった事が確認できた。色々と決める事もあってな。ご挨拶に来るのが遅れて申し訳ない。あ、ワシはパスカルと言って、ミーラの師匠だ。宜しくな」


 饒舌に語り出したパスカルさんに、僕は唖然としていた。

 ハッとして、僕は正気を取り戻す。


 師匠って、魔法使いの師匠なのか? 向こうの世界では自分で杖を造るのか? そんな事より僕にしか使えないってどういう事?


 「ミーラさんの師匠……パスカルさん、僕にしか使えないって? なんで?」


 「そこからか。……そうだな。この世界ではこういうのは造らんか。杖というのはな、我々が魔法を使う手助けをしてくれる物だ。普通は使う者を選ばん。だが、稀に意思を持つ物が出来上がる事があり、それは一人の者しか使えない。そして普通は見た目も違う。勿論、威力も性能も桁違いだ。だが……」


 「ちょっと、待って!」


 この人話長そう! 杖の性能うんぬんって僕に関係ないし!


 「いっぺんに話されても! っていうか、僕、杖いりませんから! この世界では必要がないものだし!」

 「何を言っておる!」


 何故かパスカルさんは、ビシッと真顔言った。


 「かなりのレア物なのだぞ! しかもレベルが上がるモノなんて滅多にできん! 君にしか使えないのだ! 今はまだちょっとした事しかできないかもしれないが、レベルが上がれば色々使えるようになる! ワシの名も上がる! ……いや、これは関係ないが。さっきも言ったように君にしか使えないのだ!」

 「………」


 いや、だから僕にしか使えなくても、この世界では必要がないもので……。

 はぁっと、僕は溜息をつく。

 たぶん、常識が違うのだろうなぁ。どうやったら断れるんだろう……。


 「あの本当に僕にしか使えないんですか? 例えばミーラさんがダメでもパスカルさんが使えるかもっていう可能性は……」

 「レベルアップした時点で、君しか使えないという事は明白なっている。杖の匠としては、それは本来最終目標になる品物だ! ワシの世界の者に渡っていれば、ワシの名は轟いたであろう。だからせめてレベルアップさせて欲しいのだ! この通りだ」


 パスカルさんは、僕に頭を下げた。


 気持ちはわかる。すっごいものを作ったのに評価されないって事だよね? でも、それって僕が悪いわけじゃなく、ミーラさんのせいだと思うんだけど……。とんだとばっちりだ!


 「あの……使う事も滅多にないし、レベルが上がった所で評価されないんですよね? だったら勿体ないかもしれないけど、飾るだけにしておいて下さい! 僕にはすぎる物です!」

 「何を言っている! 飾っておくだけなど! 杖は使ってなんぼだ! 普通は使い捨てだが、それは一生もんなのだぞ! それに、君が持ち主として選ばれた事は伝え、許可も頂いた! 存分に使ってほしい。レベルを上げる為に協力は惜しまない!」


 はぁ。ダメだ。勝手に許可までとってるし……。うん? レベル上げに協力する……てぇ!!


 「協力するってモンスターを連れて来るって事じゃないか!」


 今までの事を振り返ればそうなる! 冗談じゃない!


 「そうだ。我々の世界には、ここにはいない魔物が湧く。それを魔法で消滅させ魔力に返している。まあ、ここで消滅させれば、ワシの世界に魔力は還元されないが多少だ。問題はない」


 うん? 我々の世界に湧く?


 「魔界の手下がばらまいたモンスターじゃないの?」

 「魔界? 何の話だ?」


 ミーラさんが、あぁ……という顔をしている! 嘘だったのか! 何故そんな嘘を……。


 「ミーラさん……!」


 僕はミーラさんを睨み付けた。


 「だって、そのほうが盛り上がるでしょ? 好きだよね? 勇者と魔王」


 って、ニッコリ微笑んだ! ちょっと可愛いからって騙されないぞ! この嘘つきがぁ!





  ―3―



 「では、そんな勇者様に朗報です! レベルアップにご協力しま~す!」


 はぁ? 朗報……レベルアップ!?

 嫌な事しか浮かばないんですけど!


 「待って! モンスターは呼ばないで!」


 そう叫ぶも、いつの間にか光る円陣が彼女の斜め上に――また魔法陣が!


 「リンクする! 落ちて来て!」

 「だから、ダメだってばぁ!」


 僕が叫ぶも、ミーラさんはモンスターを呼んでしまった!

 パスカルさんは、何も言わずに神妙な顔つきで僕と現れたモンスターを見ている。


 って、何僕の部屋でモンスター召喚してるんだよ!!

 逃げ場もないし、放ってもおけないじゃないか!


 召喚されたモンスターは、見た目可愛いうさぎだ。大きさもこの地球にいるうさぎと変わらない。


 この前、召喚された熊よりもいいのか?

 なんて、思っていたらウサギはジャンプして、僕のお腹に体当たり!

 無様に僕はひっくり返った。


 ……めちゃくちゃ、お腹が痛いです。


 そう言えば僕、初めて攻撃食らったかも……。

 見た目より、全然狂暴だー!


 「ファイト―!」


 僕はパスカルさんの後ろに隠れ、応援するミーラさんを睨む。


 二人は手伝ってくれるつもりなんてないだろうな。杖をレベルUPさせる為には、僕が倒さないと意味がないんだから……。

 なんでこうなるんだ!


 「僕に力……いた!」


 仕方なしに杖を構え、台詞じゅもんを言うとするも、素早い攻撃でケリを入れられる。

 って言うか一方的だ。攻撃されるとわかったからか、着地するとすぐに攻撃態勢だ。


 僕に杖を使わせないつもりらしい。

 このモンスター、知力があるのかよ!

 大怪我するほどじゃないけど、地味に痛い。きっとあざだらけに違いない。


 「もう! 痛いって!」

 「何をしている! 杖が壊れたらどうするのだ!」


 突然のパスカルさんの憤慨に僕は驚く。――杖を盾にモンスターの攻撃を受け止めたかららしい。

 使い方は違うかもしれないが、呪文が間に合わないから仕方がないじゃないかぁ!


 「だって、台詞言われてくれないし!」

 「それは君と一心同体と言っていい品物だ! まんまの言葉でなくとも発動出来るはずだ!」


 パスカルさんの助言に僕は試してみる事にする。


 「倒せ!」


 飛びかかって来るうさぎモンスターに杖を向け、一言叫んだ!

 うさぎは、僕に到達する前に消滅した!

 僕はそのまま尻餅をつく。


 疲れた……。


 「素晴らしい! いやぁ、見事な杖だ!」


 褒めるのは杖ですか……。

 いや、もうこれ無理だよ。僕、魔法使いじゃないし!


 「あの僕は、魔法使いになる訓練も受けてないし知識もないんですけど……。ついでに勇者にも興味ありません!」

 「いやいや、ワシよりも出来ている! 大体その杖を使いこなしているのだから、立派な魔法使いだ!」


 うん? パスカルさんよりもって? 向こうの世界の魔法使いって弱いの?


 「パスカルさんって、魔法使いの師匠なんですよね? ミーラさんが弟子で……」

 「何を言っておる。ワシは、杖の匠と言っただろう。倒せる魔物は、これぐらいの大きさで動かないものぐらいだ。杖の試し撃ちをする程度だ」


 なんですとー!


 パスカルさんは、小指を立てて説明した。みみずか毛虫程度の大きさで動かない相手しか倒した事がないと言われた。


 「じゃなんで、ミーラさんは杖なんて使おうとしたの!」


 なんで使えないのに使おうとしたんだぁ! 迷惑この上ない!


 「だぁて。才能はなくとも一度は使ってみたいよね? どけてある杖があったからちょっと拝借して、この世界ならバレないかなぁって」


 ミーラさんは、詫びれた様子もなく言った。しかも、一体だけ呼ぶつもりが十体も召喚されてしまったって笑顔でのたまった!

 何考えてるんだよ! 召喚すらまともに出来てないじゃないかぁ!!


 「ばかも~ん!」

 「ごめんなさ~い」


 パスカルさんの正拳げんこつがミーラさんに落とされ、彼女は涙目だ。

 僕が文句を言う前に、天罰が下った!


 「あれは、試し撃ちしても発動しなかった品だから、退けて置いた物だ! 本当の失敗作だったらどうするつもりだったのだ!」

 「……そう、きっと運命だったのよ! 偶然じゃなくて導かれたのよ! そういうモノでしょ! 伝説の杖なんだもん! さすが師匠! 伝説の杖を造るなんて!」


 うわ~。すごい、よいしょだ……。しかも、パスカルさんも満更じゃなさそうなんだけど……。

 はぁ。ミーラさんに乗せられてどうするんだよ……。

 いやそれより、どうにかしなくては……。

 このままだと、杖のレベルを上げる協力をしなくていけなくなる!


 「あの! わかってると思いますけど、この世界には魔法使いなんていません! つまり杖というのは持ち歩かないんです! 人目に付く杖は持ち歩きたくないんです!」

 「じゃ、今みたいにこの部屋で召喚すればいいじゃない」


 僕の必死の抵抗をミーラさんはそう返した。

 しかし、整えたベットも綺麗に並べた本棚の本も、いつもよりぐちゃぐちゃだ!

 今回のモンスターは、物体を通り抜けなかった!


 「周り見てから言ってよ! 自分さえ良ければそれでもいいのかよ! そんな考えならお断りだ!」


 お人好しの僕だって、堪忍袋ぐらいある!

 デメリットしかない、しかも感謝すらされない事に何故協力しなくてはいけないんだ!


 僕は、杖をミーラさんに突っ返した。


 「悪いけどそれ持って帰ってよ! 君達に事情があるように僕にもあるんだ! 僕にも日常があるんだよ!」

 「うむ。わかった」


 パスカルさんは、僕の言っている事をわかってくれたようで頷いた。

 よかった……。


 「杖は持ち歩けるようにコンパクトになるように、改良を試みてみよう。報酬も検討する。どうだ?」

 「………」


 わかっていなかったぁ!!

 僕は、協力をしたくないって言っているんだぁ!


 「そんな事出来るの? って、報酬ってそっちの世界の常識じゃなくて、僕の基準に合わせないと納得できないけど……」

 「なんとかしよう。楽しみに待っていてほしい」


 ……楽しみにって。楽しみなわけないだろう!


 二人はその後、杖を持って帰って行った。


 ……まてよ。持って来たところで受け取らなければいいんだ。報酬に納得いかないって言って突っぱねればいい!

 僕はそう簡単に思っていたんだ。だが甘かった――。





 ―4―



 まさか、こんな方法を取ってくるなんて!

 来たって事は、杖をコンパクトにして、何かしらの報酬を持って来たという事だよな?

 有言実行。パスカルさんは優秀なのかもしれない。

 弟子を変えた方がいいかも……次会えたら提案してみよう。


 僕は、ため息をつきつつ、椅子に座り直した。

 杖の事は兎に角、彼女が転校生として現れた事は、僕にはどうしようも出来ない事だし、出来るだけ係わらないでおこう!


 「杖野つえのミラさんだ。あきらの親戚だ。日本に来たばかりのようだから皆色々教えてあげるように」


 先生の紹介に僕は固まった。

 その設定、そのままなのかよぉ!!


 帰国子女だの可愛いだの、教室内はミーラさんの話題で大盛り上がりだ。

 さっき、立ち上がった事もあるし、もう誤魔化せないんだろうなぁ。係わりを持たないなんて無理そうだ……。

 僕は小さくため息をついた。




 ホールムールが終わると、ミーラさんの周りには人だかりが出来ている。

 変な事を言わないか心配だが、ほおっておこう。


 「ねえ、審くん。彼女って決まってるのかしら?」


 そう声を掛けて来たのは、これでもかと大きな赤いリボンで髪を縛った二色さんだ。


 「何が?」

 「決まってるじゃない! 部活よ!」


 やめてくれ! 放課後まで一緒だなんて勘弁してほしい。


 「興味ないと思う!」

 「じゃ、落としてきてよ! ツインテールなんて魔女っ子の定番じゃない!」


 知りません。そんな事……。

 でも彼女に行かせて入部したら困る。僕が言ってダメだったって事にしよう。


 僕が頷くと、手がスッと胸ポケットに……。

 なんだろうと見ると、杖型ペンだった。ポケットにすでに装着されている。

 顔を上げると、ミーラさんがニッコリとして立っていた。


 「約束通りコンパクトにしてきたよ」


 僕は青ざめた。受け取る気がなかったのに、不意を突かれて受け取ってしまった!

 しかもこの状況じゃ、受け取り拒否なんて出来ない。

 クラスの大半の者が、僕達を取り囲んでいた。ミーラさんと一緒に移動して来たみたいだ。


 「それ杖型のペンでしょ? そういうのって売ってるもんなんだ! いいわね! 私もほしいわ!」


 隣で嬉しそうに興奮する二色さん。僕は嬉しくない!


 「ねえ、あなたも『かそう部』に入らない?」

 「ちょ! 何誘ってるの!」


 僕がする事になっていたのに! 断られた事にするはずだったのに!


 「七生なおくんも一緒?」

 「そうよ。七生くんも一緒よ! 楽しいわよ!」


 何が七生くんだぁ! 楽しくなんてない! ――って、僕は言いたい!


 「じゃ、入る」

 「いや、そんな簡単に! もっと悩めよ!」

 「だって。一緒にいて、ここの生活を学べって言われてるし」

 「………」


 生活を学べって……いつまで居る気なんですかぁ?!

 もしかして、厄介払いしてませんかー!

 僕はがっくりと肩を落とした。


 「杖野さん、どんな部か知ってるの? 魔女研究みたいだよ? 審くんに付き合わなくてもいいと思うけど……」


 勇気を出して、そう言ってくれた女子に感謝だ!

 僕がうんうんと頷いていると、スッとミーラさんの前に用紙が突き出された。

 僕の後ろからだから振り返ると、何故か大場がいた。


 「何してるんだよ……」

 「何って、気が変わらないうちに入部届書いてもらおうかと思って」


 僕の質問に平然とそう答えた。

 なんで入部届持ち歩いてるだよ! って、もしかして勧誘しにきたのか用紙持って!


 驚いていると、ミーラさんは受け取った。


 「これに書けばいいの?」


 二人が頷くと、胸ポケットのペンで書き始める。


 「杖野ミラ」


 自分の名前を言いながら書いたその字は、凄く綺麗だった。


 いや君、外国から来たって事になってるよね? この字はどうよ……。


 「すご~い。杖野さん、字、綺麗ね」

 「うん。複写だからね」

 「複写?」


 二色さんの言葉にミーラさんは、サラッと凄い事を言った。

 それってつまり魔法って事でだろう!


 「あぁ、ペン字! そう言いたかったんだよな! ペン字で見て書く練習したって!」

 「うん?」


 ミーラさんは、僕の言葉に何それと首を傾げる。

 わからなくてもいいから、頷いておいてくれ……。

 通じたのか、ミーラさんは頷いた。

 安堵するもこれ、毎回、僕がフォローして回るのか?

 憂鬱な毎日になりそうだ……。





 ―エピローグ―


 その日の放課後、部室にて自己紹介が行われた。

 その後、大場と二色さんは、楽しそうにミーラさんと話している。


 「七生くんは、魔法使いになってくれるって言ってくれて、師匠が凄く喜んで……」

 「ちょっと待て! 何の話をしてるんだぁ!」


 ちょっとボーっとしていたら、凄い話を平然とミーラさんは語っていた。

 こっちには魔法使いなんていないってこの前言ったよね?

 それに喜んでないから!


 「何、焦ってるんだよ」

 「今、あなたが杖を振り回した時の設定を聞いていたのよ! 凄いわね」


 設定じゃなくて、事実なんですが……。

 まあ、モンスターが見えないんじゃそうなるんだろうけど……。

 これ以上二人に、変な印象与えないでほしい。


 「言っておくけど、僕、魔法使いになるなんて言ってないからな!」

 「あ、そっか。最初から魔法使いだもんね」


 ミーラさんの言葉に、何故か二人は頷いた。


 「違うから! 僕は魔法使いじゃないから!」


 さて今回も、大切だから二度言っておく!


 「魔法使いじゃないから!」

如何だったでしょうか?

シリーズをまだお読みでない方で、興味を持たれた方は是非レベル1からどうぞ☆

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

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