イベントクエスト
全然ストーリー考えてない。
「おぉ~お前ケットシーにしたんだ!」
「そうなの!かわいいでしょ~?」
現在ゲームの中心となる始まりの町アルクダットの町は全てのゲーム参加者が集う場所だ。葵もデータテストプレイヤーとしてこのゲームを始めたときはこのまちに3日ほど滞在した覚えがある。ちなみにアルクダットの町には居住地はなく、プレイヤー同士の争いもPvP舞台が儲けられており、それ以外の場ではダメージを与えることはできず、無理に行動をさせようとした場合はシステムから警告が来るようになっている。それに背いた場合は即BANが運命だ。
そして始めたばかりの人が9.999~割を占める現状、現実世界では恋人であろう人や友達であろう人が自分のアバターの見せあいや初回ガチャで引いたファントムの自慢をしている。
「なぁにいちゃん、暁ギルドの申請ってどこでできるかなぁ?」
「あぁ、それなら暁ギルドの本拠地だから、えっとぉ~そこの角曲がってすぐの赤い旗のところで受付のNPCに申請をすればいいんじゃないかな?」
「おぉ!ありがとうな!そや、これ俺のフレンドID!折角やしフレンドなっとこうや!」
「おう、いいぜ」
どのゲームにもギルドやフレンドがあるように、このゲームにもフレンドやギルドが存在する。ギルドどうしの対戦でGPを稼ぎ、そのギルドポイントをためることによってゲームを優位に進めることができる様々な恩恵がギルドメンバーに与えられる。
そして発売初日現在、もっとも有力なギルドがデータテストプレイヤーのSinが率いる暁。
リーダーがデータテストプレイヤーの場合、皆より先にゲームを始めている為に必然的にSinはレベルが高く、強く、GPの溜めが楽になり、恩恵を受けやすいからだ。このおっちゃんもきっとそれ狙いだろう。
かといってフレンドも多い方がいい。自分よりレベルの高いフレンドがいる場合、そのフレンドによっては寄生プレイ、つまり強い人と強いダンジョンにいって自分は見てるだけでそのフレンドに戦ってもらい、自分は苦労せずに報酬をもらうことができるからだ。
それとフレンドを多くもっておけば共闘クエストなどに人選しやすく、かつFPという共闘クエストに行った際、双方、はたまた複数人に発生するポイントでそれ専用のアイテムを購入することができるからだ。ちなみに葵は現在フレンド数6で、そのなかにSinも入っている。
このおっさんは葵のことをデータテストプレイヤーと見抜けておらず、ただフレンドほしさに葵に声をかけた。寄生プレイ目的のフレンドより断然いいフレンドになると思い、フレンド承諾する。
「おう、いいよ。
ほれ、このボタンを押せば完了だよ」
「おぉ!センキュー!
よっしゃ!ひとりめのフレンド獲得!
ってえぇ!?レベルが...にひゃ!ゴニョゴニョ。」
「ばっか!それは言うな!俺はデータテストプレイヤーだよ。」
「おぉ、悪いな。なんだデータテストプレイヤーならそういってくりゃあいいのに。ま、共闘クエストのときゃよろしく頼むわ。俺も頑張るけど、データテストプレイヤーがいれば百人力よ。」
「任せろって。それと、俺の名前はデータテストプレイヤーじゃない。アオイだ。」
「そうやな、んじゃあよろしく頼むわ。アオイ」
「あぁ。」
んじゃな~!と声をあげると暁ギルドの方へ向かっていく。今日はゲーム発売記念のイベントダンジョンがあるはずだ。そこで、アルクダット西方面にあるイベント受け付け会場へむかう。
イベント受け付け会場につくと、発売記念イベントのクエストを確認する。やはりどのクエストも初心者向けだ。逆に上級者、中級者向けのクエストはない。そして共闘クエストとランクアップクエストもある。ランクアップクエストとは簡単に言えば延々とモンスターの強さが上がっていく塔だ。ランクアップクエストは個人用と共闘用が併合されていてどちらでも同じように受けれるようになっている。ランクアップクエストにも上限はあり、大体のランクアップクエストは100だ。そして上の階へ進むと魔物の数が多くなっていくため、非常に人柄が面倒なクエストだ。
共闘してくれるデータテストプレイヤーが周りに居ないか辺りを見渡す。そこには先程話したSinの姿があった。
「よう、Sin。」
「あ、やぁアオイ。つい昨日までどこもかしこもがら空きだったのに販売スタートしてすぐこの有り様さ。いったいどうやってソフトを購入してるんだろうね。」
「さぁね」
Sinは非常に人柄がいい。頼まれたら断れないタイプの人間だ。さらに自分が強いことを傲る人物でもない。アバターの容姿としてはわりとイケメンでギルドの制服の赤いラインの入ったオレンジを基調とした服になっている。ちなみに顔は現実世界の顔を再現したらしく、嘘をつかない性格のために、少々憎たらしい。
「そうだ、発売記念のクエストにランクアップクエストがあるんだ。個人クエストは後回しにしてランクアップクエストを二人で攻略しない?」
「その相手を丁度探してた。Sinと組めるとはラッキーだ。」
「俺よりも強いのに良く言うよ。とりあえず、どっちがクエストを受けても同じだから僕が受けておくよ。来てくれ、じゃ、お先に」
「おう。すぐいく。」
Sinがイベントマップに飛ばされるのを見届けるとSinのクエストに参加する。準備完了をおして葵もイベントマップに向かった。