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第三話 少年ラツェルと女傭兵レナーテの運命は絡み合い始める

 午後になった。

 閲兵式が始まる。

 査閲を経て傭兵たる資格を得た者たちが最後に臨む儀式だ。

 郊外の野原に宿営地を敷いたプセヒパーテン傭兵団の陣内に集うのは六千人の傭兵たち。

 そこにはラツェルも並んでいる。

 御遣いは並んで名前を言うところまでで、その後は姿を消せばいいのだったが……流れに身を任せるままこの舞台に臨んでしまっていた。

 整列などせずただ雑然と群衆を形成する彼らを前にまず傭兵隊長の訓示が始まる。

 この大集団全員に聞こえるように声を張り上げるのだ。指揮官は声が命だと言われるのは本当だ。


「余がこの傭兵団の長、プセヒパーテンである」


 兵たちの視線がお立ち台の上の人物に集中する。

 黒の甲冑を身にまとい精いっぱいの威厳をほとばしらせる彼は、持ち前のカリスマで兵たちに自分を強く印象付けようとしていた。


 傭兵隊長……それは奇怪な地位を持つ存在だ。

 もともとは貴族でありながら彼らは利益追求をする企業家に他ならない。

 教養と非人間的要素さえあれば一介の傭兵隊長と言えども貴族さえ凌ぐ財を築くことができた。

 名声と功名でもって募兵することのできる唯一の存在たる彼らは諸侯に対し強気に出られた。

 必要な金を必要な時に集める能力が最も重要で、彼らは戦争の契約金を上手く獲得してくる能力を持っていた。

 その金で平時は子飼いの将校団を養い、有事は兵団を組織するのだ。

 中隊長達との地位は決して同格ではなく、中隊長たちがともかく命があってよかったと胸をなでおろしている間に隊長は生涯最高の利益を上げていた、などザラであった。

 金に対する根性は汚く、死んだ兵の名前を傭兵リストにそのままにしておき、遺産を着服することさえままあった。

 そんな阿漕なことをする傭兵隊長でも、兵士たちから見れば彼の組織能力と軍事的能力だけが頼りなのだ。

 給料は決まっているのか、戦利品は見込めるのか、物の値段は適正にしてくれるのか。

 傭兵隊長とはその持ち前の能力だけを頼りにリスクを受け入れ兵を組織する、この時代の戦争の主役だったのだ。


 そんな生き物の一人であるプセヒパーテンは固めた黒い髭をいじりながら、傭兵隊長の地位を示す指輪を見せつけつつ言葉を続ける。


「余の戦列に加わる君たちは実に幸運だ。君たちは確実に勝利を手にするだろう。いや、本当はそんなものに興味はないだろう? 財宝だ! 金品だ! それが君たちの望みのはずだ。確かに君たちの中には給金に差がある者がいるだろう。それに不満がある者がいるだろう。そして武勇に優れぬもの、初めて傭兵となって不安がるもの、いい加減略奪での成果が上がらなくて辟易しているものもいるだろう。しかし、余の兵団ならば、誰しもに略奪の機会が平等に訪れると約束しよう! 諸君、ともに豊かな共和国を食い荒らそうではないか!」


 演説は成功だった。

 兵たちは沸き立った。

 赤い袖、青い袖、長槍、剣、様々なものが天空へ向け幾度となく突き上げられ喜びが表明される。

 ここならば大金持ちになれる。

 世間知らずな新兵ほど大いに喝采を叫んだ。

 一般の兵士がまともに傭兵隊長が言葉を発する姿を拝むのはここまでだ。

 雇い主という総司令官がいても傭兵隊長は独立した指揮権を持つ。

 そんな大権を担う貴族出身のプセヒパーテンのような人間に、平民が大半の兵士たちがおいそれと接することができるはずもないのだ。

 兵たちが日常的に接するのは必然、直属の上司である中隊長となる。


 中隊長――彼らこそ傭兵軍の実質的中核と言っていいだろう。

 彼らの大半は没落貴族や出奔した貴族子弟が務めるのだ。

 しかし戦場ではお高く留まってもいられない。

 いざ騎馬の突撃を留める段にあっては、馬を降りて槍の隊列に加わらねばならぬものなのだ。

 つまり兵士と生死を共にする、貴族と平民との特別な、戦場なりの絆があった。 

 無論、だからこそ、彼らはカリスマ性を帯びるもの、必要とするものなのだ。

 彼らはその人間力とも言える人格的素養やネームバリューで各地から兵を引っ張ってくる。

 華々しい戦果を挙げればたちどころに略奪品のおこぼれにあずかろうとする人間が真夏のハエの群れのように集まった。

 兵たちの面倒も彼らが見る。

 兵が妻子のもとへ恥ずかしくない形で戻るには中隊長の口添えが必要だったし、兵士の再就職先のあっせんも仕事のうち。

 死んだ兵の財産が妻子にわたるようにするのもそう。 

 要は兵団の親父さんおっかさんというわけだ。

 問題は、そういう社会保障的役割を本当に実行している中隊長は非常に少数だったということ。


 そんな彼らの訓示が始まる。

 これでもって優秀な兵を自らの中隊に引き入れる大事な催しだ。

 ここで彼らは各々の中隊長の指揮下となる。

 選ぶのは兵士の側だ。

 基準は当然、「誰が一番稼がせてくれるか」……傭兵の頭にあるのは主君への忠義心ではない。 

 それだけなのだ。

 幾人かの中隊長が訓示を終えた後、ヨスの番がくる。

 格式ばったそれまでの演説と違い彼のは型破りだった。


「よお、荒くれども。とりわけ何度も募兵に応じてくれてるやつ、除隊期間はいい子にしてたか? 殺しなんかやっちゃいねえだろうなあ?」


 ワハハ、という声が上がる。

 除隊期間、つまり戦争がない時期の兵士たちはまさにイメージ通りの荒くれ者に戻り、乱暴狼藉に手を染めるものなのだ。

 殺人を犯しながら各地を転々とする人間すらいるのだ。


「俺の隊、知ってるやつは知ってると思うが、俺の隊ならお前らに一等稼がせることができるぜ。それに女にも事欠かねえ。なにせ俺の魅力に娼婦たちはメロメロだからな。おこぼれにあずからせてやるさ。ほかの隊が女日照りになるくらいな!」


 またどっと笑いが沸き起こる。

 一歩間違えれば嫌味な物言いだが持ち前の明るさ、個人的な魅力がそれを上手く包んでいる。 

 そうでなくては中隊長は務まらない。

 ヨスは拍手に送られて壇上から降りた。


 次はレナーテの番だった。

 彼女が兵士たちの前に姿を現した時、明らかにそれと分かる困惑や否定的なコメントに溢れたざわめきが起こった。

 慣れっこのレナーテは涼しい笑みを浮かべながら登壇した。

 彼女こそ先ほど言った数少ない、兵士たちのための保障を考える中隊長だった。


「まず言おう」


 透き通るような、それでいて力強い声だ。

 彼女の美しさに魅了されるもの半分、女が自分の上に立つことなどまっぴらだと反抗心を抱くもの半分といったところ。


「私のところに来れば一人も死なずに帰れるぞ、とまでは約束できないが、理不尽な死だけは絶対に回避すると誓おう」


 辺りはしんとなった。

 そんなことを言う中隊長は彼女が初めてだった。

 ラツェルもそれを聞いていたが、子供ながらに他の中隊長との違いを強く感じた。


「加えて給料の確実な配給。これを約束する。ほかの隊の様にろくにビールも飲めなくなるような事態にはしないとな」


 おおーっと感嘆が起こる。

 ヨスは頭をぼりぼりと掻き毟る。

 彼の作る隊は給料遅配がよく問題になるのだ。

 繰り返しになるが、中隊長という存在は兵士たちにとっては精神的支柱として非常に重要だ。

 自由が信条の傭兵とはいえ生き死にの戦場では皆中隊長を親のように仰ぎ絶対服従するのである(だからこそ中隊長がボンクラだと兵士集会での自決権を行使されて追い出される)。

 給料をもらうのは中隊長の手を介してなのだからいやでも心証は中隊長に傾くというものだ。

 彼ら中隊長が兵士の給料の責任を持った。

 足りない武具を補うためやむなく自腹を切ったり、逆に余った経費を着服したり、ひどい場合には粗悪な装備を支給して差額を懐に入れるなどということもあった。

 先に述べたとおり、レナーテはかなり良心的な方だった。


 兵団に属する中隊長全員の訓示が終わる。

 さて、兵士たちが自分がどこに属するかを決めなければならぬ。

 無論員数五百人の縛りがあるから好き勝手はできないが、問われるのは一人で兵士六人分の軍事的価値を持つという古参兵たちがどこへ属するか、だ。

 中隊の「お得意様」と呼ばれる顔なじみは見知った中隊長のもとへ行くが、その時その時の気分で動く「渡り鳥」の所属が問題だった。

 果たして、今回はレナーテに軍配が上がった様だった。


「女で釣る作戦は失敗だったようだね、伊達男さん」

「黙ってろ。戦場で一番稼ぐのは俺だ」


 レナーテのからかいにぶすっとした様子で答えるヨスだった。ほかの中隊長たちがどっと笑った。



「どうして僕、傭兵なんかの手伝いをしちゃったんだろう……」


 ラツェルはまだ閲兵式場をうろうろしていた。

 彼は自分でも不思議であった。

 傭兵を憎んでいるはずの彼がどうしてここまで来てしまったか。

 それは流れであったし、多分に偶然の作用を含むのではあったのだが、まだ逃げ出していないのはなぜか。

 そもそも乞食として生きねばならない境遇であったから、一般的に言って傭兵は魅力的な就職先だった。

 それでも彼が孤児に甘んじていたのはひとえに傭兵への憎しみゆえだ。

 今回この「バイト」を引き受けたのは本当に食うに困ってのこと。

 当然本気で傭兵になるつもりなどなかった。こんな仕事は適当にこなしていればいいだろう。

 そう軽く考えていた。


 しかし少年はこれ以降の手続きの重みを何一つ知らなかったのだ。

 ラツェルは人の流れと、無意識に自分が選び取るままにレナーテ隊への所属の抽選の列に並ぶ。

 結果は、当たり。

 レナーテ中隊への所属が最終的に決定したわけだ。

 所属が決定した後兵士はどうするか。

 査閲官による軍人服務規程への宣誓がある。

 つまりゲオルグやその同僚たちの周りに集まって軍規に服することを誓うのだ。

 軍人服務規程曰く、許可なく陣営を離れることはできない、無許可の兵士集会の禁止、査閲のごまかしが発覚した際は罰金三ゴルテン、などなど。

 違反者には死刑が要求されることもあったが、実際には軽い罰しか実行されないことが多かった。その程度のものだ。


 そして上に規定あれば下に共同決定権あり。

 規定違反を認定する決定に兵士たちが集会を開いて民主的な共同決定権、つまり兵士による自治権を行使することもあったのだ。

 すなわち、こんな規定など有名無実な面が多かった。

 それでも、これに違反したものはその名誉を失う。どの共同体も、名誉を喪失したものには厳しかった。

 実質的な罰がなくても破れないものではあった。

 最たるものが、この宣誓を済ませた上で逃げ出すことだった。

 一人、また一人と兵士たちが雇い主たる司令官の代理人、査閲官のゲオルグに宣誓する。


「ハイ次の方。勝手に陣幕を離れず、未だ戦闘が続く最中に略奪を始めず、勝手に集会を開かないこと、およびもろもろに関して誓いますね?」

「はい、もちろんであります! 私は先に述べた軍人服務規定に従うことを誓います!」


 兵士たちは通常の集合の形態、輪になって宣誓の儀式をする。

 まだ戦闘の時に隊列を組む以外整列するという文化はなく、集まる時は車座だ。

 兵士は手を挙げ二本指を立てて宣誓する。

 問われる問いの一つ一つにはい、もちろんであります、と答える。

 だが後での常套句は自分は宣誓などしてません、規定なんか忘れました、であった。

「軍人服務規程を忘れた、聞き逃した、そもそも聞いていない、という言いわけを禁止する」という項目を追加している傭兵団もあるほどだった。


「ハイ次の方。お、君かぁ。レナーテから喧嘩剣カッツバルゲルを受け取ってたんだね」


 ラツェルの番だった。彼は自分が今からすることの重大さなど全く気付かず、御遣いの一部のつもりで言われたとおりにする。


「そんなことをして。言われたとおりにしただけなんだろうけど本当はいけないことなんだよ? まったく。まあいいけどね。精々がんばんな。死ぬなよ。それじゃ、軍人服務規程を朗読させてもらうよ……あなたはこれらもろもろに関して誓いますね?」

「はい、もちろんであります!」

「誇りにかけて誓うかい?」

「はい!」


 ゲオルグは他と同じように書類に記入すると列へと下がるラツェルのことはもう気になどしなかった。

 ラツェルはラツェルで、自分が今しがたしたことの意味もよく知らず、これで「バイト」が終わったものと思っていたのだった。


 宣誓のその後に支度金を受け取った兵士たちは一旦自由行動。

 とはいっても陣幕を離れることはもはや許されない。

 彼らは今やプセヒパーテンの駒なのだ。

 支度金は、補給商隊と呼ばれる兵団にくっついて回る雑多な商人の群れで武器装備をそろえるためのものだ。

 彼らは陣幕内に居を構えていたから不都合はなかった。

 彼らは兵団と同じ規模いたのだ。このことからもわかる通り陣幕、野営地は一万人を超える大規模なものだった。


 ラツェルはキョロキョロとあたりを見回す。

 支度金として受け取った二ゴルテンは彼にとってはいまだかつて手にしたことのないような大金だ。

 「バイト」代以外にこんな金までもらうとは思ってもみなかった。

 勝手に持ち逃げしていい金には見えず、この金貨をどうすればいいのか途方に暮れていた。

 

「やあ、君! 君も傭兵になったんだろう?」


 とあるテントの前に差し掛かった時、一人の商人がラツェルに陽気に話しかけてきた。彼は武器商だ。


「は、はい。あの、僕……」

「わかってるわかってる。武器がなきゃ働けないもんな。これを見てみろ」


 取り出したのは四メートルを超える長大な槍、長槍だ。


「これさえあればもう騎士は怖くない! 捧げ持つだけでバッタバッタと落馬する! さあさあ持ってみな!」


 ラツェルは槍を持つ。しかしその槍の重心はあまりにも持ち手部分から離れすぎていて、地面に立てて垂直に保持するのが精いっぱいだった。小さなラツェルではとても敵兵に向けたまま保持するなどできそうにない。


「あ、あの、これ、ちょ……っと持つの無理、かな」

「はい、お買い上げぇ! 代金は一・五ゴルテンだよ!」


 有無を言わせぬとはあの事を言うのだろう。

 買わされてしまった。

 自力ではふらふらとしか持てぬバカ長い槍を支えながら陣幕内をとぼとぼと歩く少年ラツェルだった。


 自分がなぜここにいるかは十分承知していた。

 しかしなぜこうなったのかは皆目見当がつかない。

 彼は戦争を憎んでいた。

 自分が孤児になる原因となったからという個人的恨みからもそうだが、略奪、生命の尊厳の破壊、それを執行する死の司祭。 

 悪の権化たる傭兵という存在を憎んでいたのだ。

 だがこの「バイト」を引き受けたのは、本当に金欲しさからだったのか? 

 あの豊かな金髪に惹かれたからではなかったか? 

 もういい、ここから立ち去ろう。

 適当に槍をそこらへんにほっぽって街へ戻ろう。

 そう思っていた矢先だった。


「坊や!? 何でここにいるの!」


 ラツェルは声のした方を向く。

 レナーテだった。

 彼女は閲兵式が終わった後ゲオルグと連れ立って、今回の遠征費用の妥当性について議論を交わしながら陣幕内を散歩していたのだ。

 雲霞のごとく兵士の行き交う陣幕内からラツェルを発見できたのは全くの偶然だった。


「どうして? 名前を名乗っただけで帰れって言わなかったっけ?」

「えぇ? その子、ただの水増し要員だったのか?」


 二人は槍を抱えたまま突っ立っている少年を見下ろしながら言う。

 この少年にはまるで間違って舞台に上がってしまった観客のような場違いさがある。


「僕、なにかいけないことしました? あの、それと二ゴルテンなんて大金を受け取ったんですけど……。半分以上使っちゃったんですけど……」


 なんだろう。この女性を前にすると不自然に緊張してしまう。ラツェルはそれが不思議だった。


「誰がそこまでやれって言ったんだよ! 名前言ったら適当に並んでタイミング見て消えればそれでよかったのに! 支度金受け取っちゃったの? 槍まで買ったって!? えーっ?」


 レナーテが素っ頓狂な声を上げる。ラツェルはそれまでこの美しい女性に持っていたイメージとのギャップに驚く。


「……まさか本当に傭兵になっちゃうとはねえ。私の責任ってことになるかぁ。今からなんとかならないの? ゲオルグ」


「うーん、これじゃあもう遅いねえ。今更無効にはできないよ? 取り消しは効かない」


 レナーテはあきれたような、懇願するような目つきでゲオルグを見るが、彼は事務屋らしい態度でそれをはねつける。


「登記されてたラツェルさんは多分前金持逃げ組だね。来なかった人に同名の人がいたからこうなっちゃったってわけ。脱走は死刑だ。まあ大抵の場合執行はされないけどね。だから逃げ出すんなら可能っちゃ可能だ。でもそうしたとしてもきっとどこの共同体も受け入れてくれないだろうけど。どうせ孤児か何かなんだろう? 他に道、ないんだろう? だったらこの子はここで傭兵やったほうがいいさ。みんなそうしてる。孤児なら妥当な就職先だと思うけどね。それとも乞食に戻る? ラツェル君」


 ラツェルもこう言われて黙っている人間ではない。


「いいですよ。やってやりますよ。傭兵は大っ嫌いだし、略奪なんか死んでも加わらないけど、傭兵という生き物がどんなものか、この目でちゃんと確かめたい」


 レナーテはうって変わって冷静になって少年を見る。ラツェルというのか。


「自己紹介させて。多分この遠征中ずっとの付き合いになると思うから。私はレナーテ。中隊長さ。坊や、所属は? どこにしたの?」

「多分、あなたの隊です」


 レナーテは安堵してため息をつく。


「そっかぁ。そりゃあよかった。槍はどうしたの? 何? 補給商隊の商人から買った? 街で略奪品を買えば半値だったじゃん。仕方ない。その槍は元の半値で売って、その金で火縄銃アルケブスを買いな。そんで私の親衛隊になるんだ。そうすれば生きてられるから。」


 ラツェルは頷くしかなかった。


「まったく。その歳で傭兵かあ……楽な稼業じゃないのにさ」


 こうして、二人の数奇な運命は今、絡み合い始めたのだった。


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