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第一話 プセヒパーテン傭兵団の夏の遠征が執り行われる

 この国の夏はそれほど暑くはならない。

 太陽が照り付ける野外にあっても彼らは勝手気ままに着飾っている。

 派手な服装だ。

 いや尋常の派手さではない。

 そのまま舞台衣装として通用しそうな色とりどりの服だ。

 鮮血のような赤いものあり、特別な染料で染め上げた真っ青なものあり、黄色は比較的控えめな発色だがそれでも十分まばゆい。

 被っている帽子からは目が覚めるような色の羽飾りがいくつも飛び出ている。

 彼らは原色の鮮やかさで彩られていた。

 三千人の男たちが一様にそんな衣装で自身を飾っている。

 いや一様という言葉は正確ではない。

 誰一人として同じデザインでその身を固めている人間はいないのだ。

 まさに千差万別、それでもその華美さの一点においては共通していた。

 そして身に付けているのはそんな衣装だけではない。

 甲冑である。鉄の鈍い光をたたえる金属鎧だ。

 胸に一枚のプレートを下げている者あり、膝当て脛当てを付けているものあり、帽子の代わりに兜を被る者あり、厳めしく輝く立派な全身鎧フルプレートを身に付けるものあり。

 それから武具。槍、刀剣、銃……。

 とにかく全員が雑然と武装していた。


 そうして何をしているかと言えば、城攻めである。

 小規模だが都市と呼べる街を囲んで大砲を食らわせている。

 雷のような大音が響き渡り、成人男性の体重ほどもあろう鉄球が街を取り巻く城壁めがけて撃ち込まれている。

 このままなら陥落は時間の問題に思えた。

 そんな戦場に眼をやる馬上の男が二人。


「総司令官代理殿、落城は近々でしょう」

「ふむ」


 総司令官代理と呼ばれた彼――フンピスは満足げに頷く。

 彼は今まさに攻められている都市に敵対する市の役人である。

 眼下に引き起こされている戦争状態は彼の街の市議会が議決した結果によるものだ。

 すなわち、傭兵団を雇い、政治的・経済的に邪魔者となった相手を再起不能に陥れる。

 この世界、この時代には一般的な問題の解決方法だった。

 戦争業務を委託されたのはコルンブルクという傭兵隊長。

 彼は有能だった。

 一か月以内に部隊と、一都市を落とすに足りるだけの攻城砲をかき集めたのだから。

 事態は二人の会話通り、順調に推移していた。

 ただ一つの懸念は包囲が完成する前に街から駆け出す騎馬を一騎、捉え損ねたことだったが、城攻めを初めて二ヶ月、これだけの期間何もなかったのだからこれから先も何が起こるはずもないように思えた。


「だが思ったより時間がかかったな。こんな城攻めは一か月で完了するはずだった」


 フンピスは苛立たしげにに口走る。

 実際その通りである。

 フンピス側からもたらされた問題さえなければ。

 コルンブルクは憎々しげに隣の男に横目をやりながら心中こう毒づく。

 ――お前たちの給料遅配がなければ兵たちがストライキを起こさず、スムーズに済んでいたものを、どの口が言うのか。

 これが一般的な戦争の在り方だ。

 傭兵に頼りながらも彼らを全面的に支援することができない。

 ゆえに事の進捗は遅々としている。

 この時代の悪習とも言えた。

 まあそれでもいい。

 コルンブルクは思う。

 これで城を落とすことができれば略奪での大儲けが待っている。

 少々のスケジュールの延滞など問題ではないほどに。

 しかしこのタイムロスが致命的となったことをすぐに彼らは思い知ることになるのだ。

 いよいよ街が降伏するかと思ったその時である。

 包囲陣の背後の小高い丘陵に別の軍勢が現れたのだった。


「なんとか間に合ったようだな」


 馬にまたがった、銃弾をも通さない漆黒の甲冑に身を包んだ男が姿を見せる。

 五十に差し掛からんとする、長い口ひげを生やした長身で立派な体格のその男は、名をプセヒパーテンと言った。

 丘に現れたのは彼が率いる傭兵団だ。

 都市を囲む軍団と同じように、これを構成する兵士達もみなけばけばしく染色された衣装を身にまとっている。

 その数三千、お互いの軍は数の上では拮抗するわけだ。

 プセヒパーテンのとなりの馬に乗る女が話しかける。


「これで赤字にはならなそう。まあ、こいつらを蹴散らすことできればの話だけど」


 レナーテ。

 プセヒパーテン傭兵団の紅一点。

 すらりとした体型と長い金髪が自慢で、その美しさに惹かれ兵団にやってくる者も多いほどの美貌。

 彼女ももちろん傭兵で、兵士たちと同じような、目が醒めるような色合いの服装をしている。

 だが若干二十三歳の若さながら将校として高給をもらう彼女のそれは数段質が良かった。


「ここまできて負けました、は通用しませんぜ、旦那」


 軽口を叩いたのはヨス。

 彼も軍団お抱えの将校で、三十代の美丈夫だ。

 日焼けした彫りの深い顔に無精髭も合わさりワイルドな伊達男の風情。

 その服装や甲冑や馬に施された装飾は比較的地味な色合いながら、それ故にかえって品がいい印象である。

 そのほか総計十名ほどの将校がいて、プセヒパーテンに種々のコメントをしていたが、紹介はこれくらいにしておこう。

 プセヒパーテンは固めた髭を撫でつけながらレナーテに指示を出し、使者として敵陣へ寄越す。


「使者のようです」


 コルンブルク傭兵団の将校の一人が言った。

 レナーテは軍旗をはためかせながら包囲軍の本陣へ近づいていく。

 フンピスもコルンブルクも当然既にプセヒパーテン傭兵団の出現に気づいていて、対応を協議している最中であった。

 女……? 

 フンピスとコルンブルクは馬に乗って近づいてくる人間が兜に収まりきらない長い金髪をなびかせているのに気づいて困惑する。

 レナーテは彼らの前方三十メートルまで近づくと、都市を襲う砲撃音にも負けることのない、大河の川向うまで届くと自慢の大声で口上を述べた。


「我らはプセヒパーテン傭兵団! この市との契約に従い馳せ参じた! すでに近隣の村々は焼き払ったぞ! 貴殿らの補給源はもうない! 直ちに包囲を解いて撤退せねば飢え死にあるのみだ!」


 プセヒパーテンだと? 

 コルンブルクの傭兵たちに動揺が広がる。あの「酷薄公」プセヒパーテン……。

 味方もろとも村に火を放った、捕虜を串刺しにして街道に並べ立てた、虚実定かならぬもろもろをみな口々に噂する。

 それほどに「酷薄公」の冷酷さは方々に響いていた。

 いや、それよりも口上の内容だ。近くにある村を焼き払っただと? 

 コルンブルクはうなりながら今の言葉が真実か吟味する。

 もし本当なら一大事だ。

 三千の兵を都市に取り付かせ続けるには当然莫大な量末が必要となる。

 それは周囲の村々に置いた守備隊――略奪部隊ともいう――から補給されるものだ。

 確かにそれら守備隊から補給物資を運んでくる輜重隊は到着が遅れていた。

 しかしコルンブルクは意思の力で気を強く持つと弱気な思考を振り払う。


(ハッタリだ、市はすでに陥落寸前。寸刻を惜しんでここまで全速で駆けてきたはずだ。そんなことをする時間はなかったはず)


 そこまで考えがいたってはたと気が付く。

 丘の上に現れた援軍に市内は大いに沸き立っていることだろう。

 ならそれを目の前で打ち破って見せたら? 

 都市の士気は一気に崩れ、あっという間に陥落するだろう。

 そうだ、これはチャンスだ。

 もし仮に本当に補給がなくなっていたとしても、迅速に都市を落とし、そこから略奪すれば済むこと。

 道は一つだった。

 

「城壁への砲撃を中止する! 砲門を奴らに向けよ! 槍兵は騎兵に備え密集方陣を組め!」


 軍団はにわかにその指示に従って動き出す。

 レナーテはコルンブルクの意思を確認すると自陣へ取って返す。


「だってさ」

「予想通りだな」


 女傭兵の報告を余裕の表情で聞くプセヒパーテン。

 コルンブルク軍は銃隊と槍隊を整列させると丘の上へと進軍させ始める。

 ハリネズミのような槍隊があと百メートルにまで迫った時、プセヒパーテンは指示杖を振る。


「砲を放て!」


 火薬が爆ぜ、爆音が轟く。

 それは先ほどまで市を砲撃していた攻城砲ほどではないにせよ、砲弾を撃ち出すには十分だ。

 コルンブルクの兵集団に数多の砲弾が降り注ぐ。

 土煙が舞い上がり手足を千切られた兵士たちの悲鳴が聞こえる。

 何という弾の数だ……。

 コルンブルクはどかどかと着弾する砲弾にめまいを感じた。

 どう見ても尋常の量ではない。

 彼我の戦力差は見たところほぼ拮抗しているはず。

 敵の砲門数は通常の三倍はあるかに思われた。

 それらは正確に密集した槍の群れへと吸い込まれ、陣形を崩した。

 なぜこんなに正確な連射ができるのだ。コルンブルクは理解ができなかった。

「さすが、大金をつぎ込んだ甲斐があったな」

 プセヒパーテンがつぶやく。

 この世界のこの時代、砲術は職人芸であり、火薬の調合から何から門外不出の技術であった。

 砲術の専門集団は自らを高い給金で売りつけることができたのである。

 そんななかでもプセヒパーテンが今回雇った砲兵隊はこの国でも指折りの練度であった。

 五分に一発がせいぜいという当時の大砲技術にあって、この集団は三分に一発を撃てた。

 それをありったけ用意したのだからコルンブルクにとっては溜まらない。

 密集した槍隊に放り込まれた鉄の大玉はめちゃめちゃと人間をちぎっていく。

 地面を耕すほどの量だ。

 彼の傭兵たちは堪らず逃げ出す。

 こちらの砲はまだ用意ができないのか、コルンブルクはいら立って怒声を上げる。

 まだ無理であった。

 彼らが引っ張ってきたのは城攻め用の大型砲、まだプセヒパーテン軍の方に方向転換をすることすらできていなかった。

 プセヒパーテンは子飼いの親衛隊である騎兵に指示を出し、崩れた敵兵を狩らんとす。

 槍、短槍、剣、メイス、思い思いの武器を持ち全身鎧に身を固めた銀色の騎兵たちが敵陣へと突入していく。


「今回の砲兵隊はいいじゃないですか。あいつらのおかげで楽に勝てそうですぜ」


 と、ヨス。


「高かったからな。市からの報酬は弾んでもらわねば赤字だ。しかしくれぐれも油断だけはするなよ」


 将校団に戦況を楽観視する弛緩した空気が流れていたが、プセヒパーテンはこれを一喝し再度気を引き締めさせる。

 コルンブルクとてこれで終わる男ではないのだ。

 崩れつつある陣形、槍隊が浮足立ったベストのタイミングで突入してくる騎兵、間断なく雨あられと注ぐ砲弾。

 追い詰められつつある状況を打開せんとコルンブルクは起死回生の手を打つ。すなわち、こちらの歩兵でもって敵兵を誘引し、開かれたプセヒパーテン軍中央に騎兵を突入させようというのだ。

 あわよくば指揮官を討ち取り一気に勝負を決めんとする作戦。

 それを将校に伝達し自身も騎馬突撃の準備に入る。勇猛さで鳴らす彼は自ら死地に赴くことを厭わない男だった。

 騎兵を引き連れ長大なランスを手に敵目がけて丘を駆け上がっていく。

 果たして、彼の作戦は上手くいったように見える。

 プセヒパーテンの本陣前方まで進出したコルンブルクの銃槍連合隊に押される形で槍隊が左翼に流れ、乱戦が始まった。

 もはやプセヒパーテン軍中央を守るのは銃隊しかいない。今だ、敵指揮官はそこにいる、コルンブルクはそう確信して突撃を敢行した。


「上手くいったじゃん」


 レナーテがつぶやく。そう、この一連の軍の動きはすべてプセヒパーテンの策だったのだ。

 突撃してくるコルンブルク率いる騎兵隊に火縄銃隊アルケビューザーが火を噴く。

 数十騎の内数パーセントが倒れる。しかし勢いは一向に止まらない。次に火縄アルケブスの装填が完了する前に突撃を受け止めることになりそうだ。

 ここでプセヒパーテンが号令を発する。


「やはり火縄だけで騎兵突撃を防ぐのは無理だな。事前の指示通りにやれ! 武器転換だ!」


 コルンブルクは勝利を確信していた。

 小高い丘の上にある敵本陣はいまや唯一そこをまもっていた銃隊すら崩れ逃げ出し、丸裸になったように見えた。

 しかし、それは罠だった。何もなかったはずの前方に一本、また一本と長槍パイクが生えていく。

 バカな、今まで影も形もなかったというのに。

 そうか、足元の草むらに長槍を寝かせて隠していたのか……。

 気づいた時には遅かった。

 銃隊を構成していた兵たちは全員武器を長槍に持ち替えている。

 林立するそれはまさに槍の森、それらが一斉にコルンブルクたちの方を向いた。

 前面に出現する槍衾。

 葉型、短剣型、ダイヤモンド型、三角錐型、二又、三又、三日月形……。

 ありとあらゆる形状の穂先がさながら鉄の壁となって彼を襲い、その体を刺し貫いた。



「契約の履行、まことに痛み入ります。早馬が届いたのは本当に幸運でした」


 そう話すのは今しがたまで包囲のさなかにあった市の市長である。

 コルンブルクの戦死の後、彼の傭兵軍は総崩れとなった。

 見事それを打ち破った形となったプセヒパーテン軍は英雄として市の中に迎え入れられたのだ。

 石畳が敷かれた市のメインストリートで彼らは出迎えを受けた。


「口上は結構です。約束の金を受け取りたい。今回は砲もたくさん用意いたしました。経費も含めそれなりの金額を請求したい」


 プセヒパーテンは下馬する礼儀すら無視し、平身低頭と言った体の市長に要求を投げかける。

 馬から降りもせずに青空の下、さっそくこんなことを言うのは傭兵らしい態度と言えた。

 救われたことにより立場が圧倒的に違っている以上、市長は文句どころか不快感をあらわにすることすらできないはずだ。

 しかし彼が低姿勢を取り続ける理由は別のところにあった。それなのですが……と、心底申し訳なさそうに切り出す。


「じつは市の金庫には十分な資金がないのです。敵軍がやって来る前に市の役員がほとんどを持ち去ってしまって……。そのことが伝わらず、本当に申し訳ない。それに砲に経費を余分にかけたのはそちらの勝手では?」


 プセヒパーテンとこの都市は契約を結んでいた。

 すなわち、市が攻撃されれば何をおいても駆けつけるという契約。

 それには当然対価が要る。今ここに契約は不履行となったのだ。

 プセヒパーテンは自らの後ろに控える兵士達を振り返って言う。


「だそうだ。お前たちはこれで納得するのか?」


 カラフルな衣装を身にまとう荒くれ者どもは怒声を上げる。

 曰く、ふざけるな! 金を出せ! 何のために死ぬ思いをさせたんだ! と。

 あらん限りの声で不満を爆発させる兵士たち。行き場をなくした食い詰め者である彼らの力の集合は、お預けを食らえばどこへ向くかわからない。

 このまま放置すればプセヒパーテン自身にも危害を及ぼしかねなかった。


「兵たちはこのように申しております。余もこの者たちの長としてこれでは到底承服できませぬ。しかしあなた方は契約により定められた主君。ないものを出せと無理は申せませぬ」

「おお、それでは……」


 市長は顔を明るくする。

 隣で様子をうかがっていたレナーテはこの男の厚かましさに眉を顰める。

 本気でこれで済むと思っているのだろうか。

 プセヒパーテンは声を張り上げこう言った。


「軍資金は底をついた! よって余はここで兵団を解散する! 後のことは余のあずかり知るところではない!」


 わー! と兵士たちが歓声を上げる。

 今この瞬間から彼らは契約主への乱暴狼藉禁止の誓約・服務規程から解放され、この市での略奪が可能となるのだ。

 三千の兵士たちは略奪の暴徒に化けた。

 途端に通りの店舗や民家に群がりと戸口を打ち壊し、中に押し入る。

 泣き叫ぶ住民から金品を奪い取り、婦女を暴行し、食料にむしゃぶりついた。


「な、なんということを!」


 市長が死にそうな声を上げる。


「傭兵隊長殿、どうかやめさせてください!」


 プセヒパーテンは市長を冷たい目で見返す。


「お言葉ですが市長様。もう彼らは余の配下ではないのです。暴徒に対処してくれというのなら止めるための兵がない。まことに心苦しいがご主君よ、また機会があればということで。さ、これで契約は終了ですな」


 プセヒパーテンは石畳にがっくりと崩れ落ちる市長を尻目に馬を返すと市外へ続く門の方へとさっさと去って行ってしまう。

 レナーテが慌ててその後を追わんと馬首を返す。

 この遠征のためだけに集めた兵士たちを解散した今、彼に付き従う兵は五十人もいない。

 将校団と親衛隊のみだ。レナーテは疲れ切った声で彼女の傭兵隊長に話しかける。


「あーあ、これだけやってただ働きとはねえ。骨折り損のくたびれなんとかだよ、これは。っていうか完全に赤字じゃん。どうすんのよさ」

「果たしてそうかな?余の隊には抜け目のないやつがいるだろう」

「どういう意味?」


 レナーテは聞き返す。

 報酬がもらえなかった以上今回の遠征は大赤字ではないのか。

 疑念はすぐに晴れる。

 ヨスだ。

 彼が市外に出たプセヒパーテンとレナーテたちを出迎える。

 ヨスの乗る馬の脇には縄で縛られた男の姿が見える。

 どうやら敵軍の司令官のようだ。

 戦いが終わってから姿が見えないと思ったら、そいつを捕まえていたのか。

 レナーテは合点がいった。

 このクラスの大物なら身代金は今回の赤字を補填するどころか黒字にするだろう。

 それでも割に合わない仕事ではあった。

 プセヒパーテンはふう、とため息をつき、そのことを愚痴る。

 しかし酷薄公の異名をとる彼でも今回の一件はひどい。

 契約相手を飢えた除隊兵士の群れに襲わせるなんて。

 悪名もこれ以上高まれば誰とも契約できなくなるというもの。

 ヨスがそのことを指摘するとプセヒパーテンは冷静に答えた。


「消しがたい悪名より印象深い勝利の方がより広がるものなのだよ、ヨス君。領主や議会というものは自分だけは傭兵をうまく使えると思っていることであるし。つまりは勝ったことが重要なのだ。傭兵にとってはな」

「さすがは旦那だ」


 こうして夏の遠征は終わった。

 次の契約が持ちかけられるまで彼らは傭兵隊長であるプセヒパーテンの食客として生活することになる。

 そう、次の戦争までの間……。

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