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女の対決

作者: ゆめうさ

 お菓子を口にしながら妙子は相手を見た。

どうやら本気らしい。

 ロシアンルーレットをやる準備をしている。

外れたら、お菓子が食べれるので、妙子はそこまで気にしていない。


 高校の校舎の窓から差し込む夕日。

理香子はどうやって持ってきたのか、模造拳銃に玉を込める。

勿論実弾ではない。


 これは単なる遊びなのだ。

どちらかが彼の恋人になるかの。


 妙子は面倒臭げに理香子を見る。

準備は整った。


「まず。私から」

 理香子が頭部に拳銃を当てる。

リボルバーを回して、安全装置を外す。

「行くわよ」

そう言って彼女が引き金を引く。


 パシッ。と音がして、模造玉がHITした。


「ちょ、なんなのこれ!」

 理香子は腑に落ちないように、リボルバーを開いてみた。

だが、他の充填部分は空だった。

「何よ、ゲームにもなんなんじゃない!」


 妙子は「好きにすれば?」と言ったのだが、言い出した理香子が納得しなかった。

「仕方ないわ。善行くんは貴女にあげる」

「あ、そう」


 興味もなさ気に妙子は口にしたチュッパチャプスを、ガリガリと噛んだ。

所詮女子同士の、恋愛の奪い合いなんてこなんものである。

一瞬で決まってしまうのだ。


「善行くんを不幸にしたら、許さないんだから!」

 それだけ言い捨てると、理香子は教室から駆けて行った。

もしかしたら、泣いていたのかもしれない。


 善行と妙子は幼馴染で、恋愛感情もない関係なのだが、周囲には付き合っているように見えるらしい。

 ロシアンルーレット用のお菓子を紙袋に入れて、鞄に放り込んで、妙子は教室を出る。


 帰り際善行に会った。彼は生徒会の書記をやっている。

「お腹すいてない?お菓子ならあるけど」

のんびり言う妙子に善行は、何で貰ったか分からぬお菓子を口にして、帰路へと着く。


「できればもっと腹もちのいいお菓子がいいなぁ」

「贅沢言わないの!」

 妙子は善行の頭をポカリと殴って、黙らせる。

 

 結局ロシアンルーレットをしなくても、妙子と善行は変わらない。

何時もの通りだ。


「今度の差し入れ、クッキーが良いな」

「馬鹿、贅沢言ってんじゃないわよ!」

そんな会話が続いているのは、理香子のおかげなのか?


「なあ、妙子。そろそろさ」

「何?」

「真剣に付き合わねぇ?」

「何いってんの、バーカ!」

「そうだよなぁ、今更だよな」

「ま、良いんじゃない、このままで」


 妙子は善行の言葉を流して理香子の事を考えた。

可哀想に。見込みのない恋をするなんて。

しかし、それを止めることは誰にも出来ない。


 善行が次のお菓子を強請ったので、飴を取り出すと、妙子も早速口にする。


「なぁ、この飴、交換してみない?」

 唐突に言われて、きょとんとした妙子に善行の顔が近づいてくる。

彼は口移しで妙子と自分の飴を取り替えた。

「ん、こっちも結構美味いな」

 固まる妙子を残して、先に進む善行。

 妙子は5秒ほどして彼を追いかけて、思い切り後頭部をぐーで殴った。

「このくらいで、許すと思うなよ……」

「ってぇ、はいはい」


 ゆらりと善行の後を歩く妙子は、どう仕返しするか考える。

幼馴染なんて、女同士が対決してもあまり意味は無いのだ。

理香子にそれを分からせるには困難だろうが……。


 まぁ、今が今ならそれでいいと妙子は思った。

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