再び出会う
「気をつけ、礼。」
「おはようございます。」
朝のホームルームが始まり、私にとっての
転校2日目が始まろうとしている。普通ならドキドキするのだが、私はただ窓の外をぼんやりと眺めていた。
・・・・・・あの人あれから大丈夫だったかな?
そんなことを考えているうちにいつの間にか朝の連絡が終わり、先生が人数をとり始めた。
「・・・・・・ちっ」
いきなり、先生が舌打ちをした。
・・・・・・えーと・・・・・・どうかしたのかな?
「・・・・・・よし、全員出席だな」
何事もなかったかのように話始める先生。私は斜めの席をちらっとみた。席が空いている。
?先生気づいてないのかな?
でも、誰もなにも言わない。
言おうか言わまいか悩んでる私に構わず朝のホームルームは進んでいくのだった。
「赤羅ちゃーん!」
元気よく駆けていた転校して最初の友達、佐藤由香ちゃんが声をかけてきた。
「由香ちゃん。」
私が朝のことをきこうか迷っていると
「朝はビックリしたでしょ?」
と由香ちゃんは私の心をよんだかのように言った。
「え?」
「あそこ前原双牙って人の席なんだけど・・・・・・」
ここで由香ちゃんは声を小さくした。
「この学校で一番の不良なんだよ。ようするに要注意人物なの。赤羅ちゃんも気を付けた方が・・・・・・」
ガラッ
いきなり教室のドアが開き、一人の少年が入ってきた。
「ひっ!」
となりにいる由香ちゃんがお化けを見たときような声をだした。
・・・・・・あれ?あの人昨日の・・・
その少年は昨日の倒れていた少年だった。
・・・よかった、大丈夫だったんだ・・・
私が安堵していると少年はこっちをジロリと見て、近づいてきた。
「・・・・・・おい、ちょっと付き合え」
そして、私のてをグイッと引っ張って無理矢理教室から連れ出した。
えーと・・・・・・私、なにかしたかな?
ちらっと少年を見た。
・・・・・・こわっ
少年は眉間にシワを寄せて不機嫌そうな顔をしていた。
「やあやあ、赤羅ちゃん。いらっしゃい。」
私が連れてこられた場所は保健室だった。中に入ると椎名先生が笑顔で迎えてくれた。
「どうしたんだい?あー、双牙に無理矢理連れてこられたんだな。可哀想に。ダメだよ双牙、そういうことはちゃんと女の子の同意を得てからじゃないと。」
「ちがう!!お前が連れてこいって言ったんだろ!」
そんな二人の様子を私は唖然としながら眺めていた。
「とにかく、俺は連れてきたからな。」
そう言ってさっさと少年は立ち去ろうとする。
「へ~、双牙は赤羅ちゃんにお礼の1つも言わないんだぁ。」
「あれはこいつが勝手にしたことだ。俺は頼んでない。あれくらい、平気だった!!」
「へ~、平気だった・・・ね。自称最強の双牙くんは頭を石で殴られて脳震盪を起こし、で、無惨にも裏庭の隅で倒れたんだけど・・・。それが平気だったと。」
「・・・・・・」
・・・さらに怖い顔して睨んでるよ・・・
けど、当の睨まれている本人は相変わらずのにっこりした笑顔のまま。
「・・・・・・わかった。言えばいいんだろ!言えば!!」
最後には少年のほうがおれた。そして私の方をキッとみた。
「・・・・・・あっ、・・・あり・・・が・・・」
最後の方は聞こえなかったが、言いたいことは伝わった。
「いいえ、大丈夫そうでよかったです。」
私はその様子がおかしくてつい笑いながら言った。すると、
「・・・・・・・やっぱり同じことを言うんだな・・・・」
とボソッと少年が呟いた。私がその言葉の意図が分からず不思議そうにしていると
「そういえば自己紹介してないよね?赤羅ちゃん、こっちは前原双牙。まあある意味有名人だから名前はもう知ってるかな。双牙、こっちは海野赤羅ちゃん。二人とも同じクラスだからね、仲良くしなよ~」
と椎名先生相変わらずのゆるい口調。
「あっ、海野です。よろしくお願いします。」
急いで挨拶をした。そしたら少年こと前原双牙くんは
「・・・・・・よろしく」
とボソッと呟いて保健室から出ていった。
「・・・くく!」
前原くんがいなくなってすぐ突然笑い始めた椎名先生。
「凄いね。他人に干渉しようとしないあいつによろしくと言わせるなんて。やっぱり凄いわ赤羅ちゃんは。」
「??私は何も・・・」
「いいや、流石だね」
????????????????????
ハテナマークがたくさんの私に椎名先生が
「赤羅ちゃん、あいつをよろしく頼むよ。あいつは本当は優しいやつなんだ。」
と笑いかける。その顔が今までのとちがう真面目な顔だったので私はただ訳が分からないまま頷くしか出来なかった。
「ありがとう。」
そう言って彼は、再びいつものように笑いかけた。