表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/46

そのさん・試験試験でこともなし!





さて、三高は進学校というわけではないが、底辺高でもない。色々と問題のある学生こそ多いものの、学力的に言えば中程度といったところだろう。

当然ながら試験のたぐいもそれに見合ったもので、程々の難易度であった。


つまり楽な人にとっては楽だがそうでない人にとっては程々の難関であって。


「とりっくおあとりーと? ………………『悪い子はいねがー』、と」

「根本から間違えてんぞマサ」


織臥 正義。悪鬼羅刹を蹴散らす正義のヒーローたる彼は、ちょっとお馬鹿だった。

教科書と参考書をにらみながらうんうん唸る彼と対峙している太平は、自らも教科書をめくりつつ正義に問うた。


「しかしなんだって急に試験勉強し出したんだ? 確かお前さん仕事の関係である程度免除があるだろうよ」


正義の味方――対特殊犯罪下請け業務に関わる者は、その危険度と引き替えに一般の生活の中でも様々な恩恵を受けることができる。特に正義のように先祖代々脈々と家業を続けてきた者などはお目こぼし(・・・・・)も多々あった。

ぶっちゃけ癒着とかそんなんだが、まあ世の中そんなもんである。正義の味方だからといって善人とは限らないのだ。

だが、それに甘えていられないと考える者もいるわけで。


「いやさあ、この家業もそんな長々とやるのは難しくなってきてな。……やたらと人は増えるし孤高のヒーローとか時代遅れ言われるしアイテムは増えて買うのが大変だしやたらとてこ入れ激しいし。ともかく将来とか考えると学歴とか資格とか真剣に考えとかないとなあ……」

「どこも厳しい世の中だな」


イケメンだから生き残れるというわけではないのである。

それはそれとしてまあがんばる姿勢は悪くはなかろうよと、どこか微笑ましい気持ちで太平は正義を手伝っていた。自身にとっても復習になるし一石二鳥というやつだ。


天下 太平。時折過激な行動をするので勘違いされているが、基本的にはまじめな学生である。

ただし周りはそうでもないが。


「たいへーちゃん、ここ教えてここ!」

「ふ、凡才とは大変なものですわね。このわたくしに頭を垂れるのでしたら、手取り足取り懇切丁寧に教授してさしあげてもよろしくてよ?」


にぱりんと愛想よくまとわりつく女装男子と、高笑いしながらポーズを決め高飛車に言い放つ縦ロール。

もちろん太平は冷たい視線を二人に向ける。


「それは嫌みか? 喧嘩を売っているのか? この成績上位者ども」


そう、普段の行動はあほなこの二人だが、成績は学年トップクラスだったりする。成績に人格は関係ないという典型的な例……なのかも知れない。


「ち、ちがうですにょ? 純粋に分からないところがあるから……」

「教科書もらって三日で丸暗記するチート脳が嘘を言うな。どーせマサだけじゃなく自分も構えって腹だろうが」

「ふ、その程度ならわたくしにもできますわ! その上で最高ランクの帝王学を学んだわたくしに教えが請えるのですよ? これ以上の名誉がありますかしら?」

「帝王学いらねえよ。これでも身の程はわきまえてるわい」

「「「「「うそだっ!」」」」」

「……なぜクラス総出でツッコミ入れてくるか」


眉をひそめる太平だが、不機嫌な顔になりつつも対応する。


「だってお前らよく考えてみろ、どう考えたって人の上に立つ器じゃないだろうがオレ」


クラスメイトは一斉に想像した。

怖い想像になった。


「人の上に立つ器じゃないって言うか立ってほしくないって言うか、恐怖政治?」

「聞こえてんぞ赤坂」


端っこでこっそり呟いていた綾火の言葉を聞きとがめる太平。いや普段のアレっぷりを見ていたらそう言いたくもなるだろう。特に正義や綾火は時々最前列で見せつけられるってか思いっきり関わってるのだから。

しかし意外なことに、太平はまあわかるがなと理解の色を示した。


「基本気が短くて乱暴者だからなオレは。ついかっとなって行動するとこ見てりゃあそう言う考えにもなるだろうよ。後悔はしてないが」

「「「「「自覚あったんだ!?」」」」」


意外な事実であった。っていうか分かってやってたのかこの男。


「あ、あのさあ、分かってるんだったらもう少し控えるとか何とか、考えた方が……」


恐る恐る言ってみる綾火。しかし案の定太平は憮然とした顔で言い返す。


「控えて面倒ごとがなくなるんだったらそうしてるわい。黙ってても面倒ごとが向こうから飛び込んでくるから、火の粉払ってたらこのざまだ」

「火の粉を払っているというか、火元から完全に叩き潰してるっていうか……」

「いちいち飛んでくる火の粉払うよりゃそっちの方が面倒なくていいというのが、最近のオレの持論だ」


間違ってない、間違ってはいないのだが……一般人は自分の手でそれをやろうとは思わない。そう言うときのために自分たちとかいるんだけどなー、などと少し虚しさを覚える綾火だった。

とにもかくにも、と太平は放っておかれていぢけている恋の方へと向き直った。


「そういうわけで気持ちはうれしいがオレとあまり関わらない方がいいぞご令嬢。せっかくの経歴にわざわざ傷を付けることはねえだろ」

「あ、気を遣ってるつもりだったんだ」


単なる自虐ネタじゃないのねと、まひとがちょっと感心したような表情になる。ツンデレか、ツンデレなのか。

……いや、この男に限ってはありえないような気がする。


「なにをおっしゃいますの! 清濁併せ飲んでこそのノブリス・オブリージュ、貴方ひとりの宿命ごとき飲み干せぬ鯉ヶ滝ではございません!」


気を遣われたのがよほどうれしかったのか、即座に立ち直り明るい顔で宣う。聞きようによってはヒモとして囲む宣言ともとれるいいざま、つうか本人的には思いっきり告白したつもりなんではなかろうかもしかして。

が、当然のように太平は理解しない。


「家まで出して大事にする気かお前さん。そこまでしていらんというに」

「いやそういうことじゃあ、ないと思うよ?」

「そうですわ! 大切なのはわたくしと貴方! 二人のつながりこそが新たな未来への道標となるのです!」

「二人のつながりって……ただのクラスメイト(・・・・・・・・・)だろうがオレら」


その言葉に恋はびきりと凍り付き、その後、がっくりと崩れ落ちた。


ひでえ。周りの人間はどん引きだった。この鈍感ぶりはいわゆる主人公適正というやつなのか。恋の態度を見ていれば好意を持っているというくらい分かりそうなものだが。

まあもっともツンデレを人格破綻者とまで言い切るこの男のことだ、恋の行動はおかしな人間がおかしなことをしているという具合にしか写っていないのかも知れない。


「ふ、不憫すぎるなあ」

「同じ女として同情せざるを得ない……」


クラスの女子が哀れみの視線を恋に向ける。実のところその立場とか行動とかでクラスの仲間からは若干浮きぎみの恋なのだが、今回のことですこし共感を覚えられたのかも知れない。本人全然うれしくはなかろうが。


あ、床に倒れ伏してしくしく泣き出した。


「で、マサよ。出来の方はどうだ?」


もちろん太平は放置する。


「……いやあの、今それどころじゃない展開があったような?」

「いつものことじゃないか」


確かにいつものことだけど、そうだけど! この男には良心の呵責とかそういったものは存在しないのか。クラスメイトはだらだら冷や汗を流しながら戦慄するしかない。


テスト間近。本来であればそれに向かってぎすぎすした空気が流れているところなのだろうが。

2年D組は、今日も平常運転であった。















「解せぬ」


高見 望は一言呟いた。


職員室。彼女に宛われたデスクにて、腕を組み納得いかないといった様相で難しい顔をしている。


机の上。そこにあるのは高校生向けの問題集。

チャレンジしてみたらば、半分も解けなかった。


「解せぬ」

「いやそんなモンだって」


劇画調で呟く望に向かって、ぱたぱた手を振りながら言う成螺。しかし納得のいかない望は不満げな様子のままぶつぶつ愚痴をこぼす。


「いやでも現役離れてから10年たってないんですよ? もっと面倒くさい事も覚えたりやったりしてきたのに」

「そりゃなんでもしばらくやってなきゃ忘れるものだってば。大体現役の教師だって自分の担当科目以外を理解しているかどうか怪しいモンさ」


成螺の言葉に対して、職員室のあちこちでびびくんと反応する気配があるが、まあそれはさておき。

なんで望が今更こんな事をやっているかといえば、これからのことを考え教師としてのスキルを少しでも上げておこうと考えたからである。

たかだか1、2年の話ではあるが、それでも一応教師としての体面は保っておかなければならない。根がまじめな望はそう考え、まずは自分がどこまで勉学を覚えているか確かめようと挑んでみたのだが。


結果は惨敗。


密かに自信があった彼女のプライドは結構傷ついていた。


「そりゃエリート様にとっちゃ不満なのかも知れないけどね、よく考えてごらん?」


苦笑しながらも、成螺は望を宥めるように語りつつ人差し指を立てた。


「世の中ええところのボンボンで有名大学も出てたくせにクソの役にも立たないどころか妄言虚言で周囲に迷惑をかけまくって平然としている厚顔無恥な政治家とかいるんだよ? それに比べたら……」

「異様に具体的な例を挙げないで下さい! 一応政府の人間なんですよ私!」


上層部批判はどこの組織でもまずい。望は慌てて成螺の言葉を遮った。

ボク関係ないんだけどねーとか思いながら、成螺は一応話を変えてやることにする。


「まあそれはそれとして、今回の試験問題はできてるからそれに目を通しておくんだね。ボクの科目だけじゃなく他のものも一緒にしておくから、参考書片手に勉強してみるといいよ」

「は、はあ……」


人格はともかく本当に教師としてはまじめで世話焼きだよなこの邪神(ひと)。微妙な顔をしながら望は試験問題のコピーを受け取った。


「一応言っておくけど関係者以外や生徒には見せちゃダメだよ?」

「心得てます。……まあ試験問題を紛失するような間抜けをさらしたくはないので、用心しますよ」

「ん、注意するに越したことはないからね」


その後雑談し、じゃあボク授業あるからと成螺は席を立って職員室を去る。

望ははふ、っと一息吐いてから体を伸ばし、預かった問題の束をクリアケースに入れデスクの引き出しに入れ、鍵をかけた。そうしてから自分の仕事をしようと机に向かい――


「ん?」


どこからか微かに響くしゅるしゅるという音に気づく。

はてなんだと周囲に視線を走らせてみるが、一見どこにも変わった様子は見られないように思えた。

だが。


「んん!?」


よく目をこらす。すぐそば、望のほんの隣の空間。そこにゆっくりと垂れ下がってくる何か。

極細のテグス。そしてその先についている透明なかぎ爪のようなもの。


「…………………(汗)」


何の冗談だと思ったが、この学校では冗談のようなことしか起こらない。まともな対応では馬鹿を見るだけだと望は思い直す。


思い切ってテグスをむんずと掴み、引っ張ってみた。そしたらば。


「おうわおお!?」


ばりんと天井をぶち破って、奇声を上げながら何かが落下しべちゃりと床に張り付いた。


よく見ればそれは制服を纏った男子生徒のようだ。床に倒れ伏し気を失っているらしいそいつは、なぜか頭に忍者のような覆面を着け顔を隠している。


なんなのコレ。一瞬フリーズした望だが、その間に怪しい男子生徒は意識を取り戻したようだ。

はっと飛び起き周囲を確認。そして望と目が合う。


しばしの沈黙。


「……不覚っ!」


鋭く言い放って止めるまもなく懐から何かを取り出して床にたたきつける男子生徒。

とたんに閃光が走りそして。


爆発。


「のきゃあああああ!?」

「なんじゃあ!」

「また篠備賀かあのやろおおお!」


阿鼻叫喚の職員室。大騒ぎの中ゆっくりと煙がはれれば、その中央には見事なアフロになった望の姿が。

彼女は唖然としたまま、けほっと咳き込みこう呟いた。


「なんなのよ一体……」


さもありなん。まったくもって降ってわいた災難としか言いようがない。

だが。


これがまだ始まりにしかすぎないことを、彼女は知らない。















さてテスト間近の三高であるが。

最近生徒の間で妙な噂が流れている。


「テスト問題の売買組織?」


昼食であるサンドイッチを囓りながら、太平は問う。

その話題を持ち出したのはまひとだった。彼はおむすびをパクつきながら、頷く。


「うん、なんか他のクラスの子らが話してるのを聞いちゃったんだけど、結構前からテスト問題を商売にしてる人らがいるって。もっともほとんど相手にされていないらしいけど」

「そりゃお前、よほどの馬鹿でもないかぎり食いつかんだろうさ」


テストの出来で人生が左右されることはあるだろうが、だからといって胡散臭く後ろ暗い手段に訴える必要はない。カンニングとかテスト問題の横流しとか、そんなんバレてあとでエライ目に遭うのが分かっているのにやらかすようなのは、あほとしか言いようがないだろう。下手なリスクを背負うくらいならまじめに勉強した方がマシだ。


「……そう考えない人間も世の中多いからねえ」

「楽してズルしておいしいところを持っていく、ってか? 三匹の子豚でも読み直せっての」

「やっぱり以外と堅実思考だよねたいへーちゃんは」

「足場がしっかりしてないと落ち着かなからな。ただでさえ余計なことに巻き込まれまくってんだ、緩い屋台骨で吹き飛ばされちゃかなわん」


人生は嵐である。もはや太平はそれを信じて疑っていない。まあここまでさんざやっかいごとに巻き込まれてきたのだから分からないでもないが……その全てを力業で叩き潰すのはどうだろうか。

それはさておき。


「しっかしどこの馬鹿だ、人の道を踏み外すってか、思いっきり岸壁の上から飛び込むようなまねをやらかすのは」

「さあねえ、どっちにしろ関わり合いにはなりたくないよね」

「まったくだ」


ふん、と鼻を鳴らしながら、太平はパックジュースを啜った。

どうせその馬鹿も例に漏れず、奇人変人の類に決まっているのだ。関わり合いになったらろくな目に遭わない。


がしかし。

そう言う人間に限って関わり合いを持ってしまうのが、太平である。


まあぶっちゃけるとこの時点で巻き込まれることが決定していたわけで。















「申し訳ございませぬ我が主」

「言い訳はよい。……ふむ、高見 望か。思ったより手練れかも知れんな」


とある薄暗い部屋。床に跪き言葉を発しているのは忍者のような覆面をかぶった男子生徒。

篠備賀しのびが とおる】。甲賀流忍術の正当後継者を自称する……変態である。


その彼が頭を垂れる先。薄暗い部屋の奥で椅子に座する何者か。全貌ははっきりと分からないが、どうやら女子生徒らしいということは分かる。タイツに包まれた足を組み直し、その人物は鷹揚ながらも威圧感を含んだ声で告げた。


「引き続き試験問題の入手を謀れ。まだ少しの猶予はあるが……それも多くはない」

「御意。しからばこれにて失礼いたします」


しゅばっ、と透の姿は一瞬にしてかき消える。そのまま部屋の人物はじっと座したままだったが、やがてぽつりと呟く。


「……やっぱ悪役ゆうたらこんな感じやんなあ……」


なんかこう、色々と台無しだ。















さて、大騒ぎの後何とか秩序を取り戻した職員室。

望は再び成螺と対峙していた。(ただしアフロ)


「…………えーっと、その?」

「何も言わないで下さい」

「OK見なかったことにするよ。ともかく篠備賀君だったね」


顎のあたりに人差し指を当てて、ちょっと思い起こす成螺。


「まあその、見ての通りの個性的な子だね。時々修行とかなんとかいってふいっと行方不明になることがあるから出席率はちょっと悪いかな。成績はちょっと残念。歴史には詳しいように見えるけど、なんか妙なこだわりがあって試験じゃ成績が振るわないね」

「妙なこだわり、ですか?」

「歴史の影で暗躍した忍びと史実の関係については異様なまでに詳しいけどそれ以外がダメ」

「それは全面的にダメなんじゃないでしょうか」


どんだけ詳しくても試験にはでるまい。ともかくそんなおかしな生徒が一体何をやっていたのか。望は首をひねる。


「ふむ、そういえば最近おかしな噂があるようだね。試験問題を売買する生徒がいるとか」

「………………あ、アレはそういうことだったんでしょうか」


透の奇行を思い起こし、望は顔をしかめる。あれで試験問題を盗み出せるつもりだったのか。いや奇人のやることだ、あそこからすごい技量で机の鍵をこじ開け試験問題を盗み出すくらいやりかねない。

身柄を確保するべきか、望の思考が諜報員のそれとなる。たしかに透は希代の変人でどあほうであるが、仮にも本職の望の隙をついて雲隠れする程度の実力はあるようだ。放っておけばこの先どんな面倒ごとを引き起こすか分かったものじゃない。最低でも余計なことをするなと釘を刺しておく必要があるのではないか。


あとこのアフロを元に戻す方法も吐かせておきたいし。


真剣に考え込み始めた望。それをにやにや笑いながら見ていた成螺は、不意に何かを思い出したといった態度で追加の情報をはき出した。


「そうそう、噂になってる売買組織(笑)の黒幕なんだけどね…………なんでか太平君って(・・・・・)ことになってる(・・・・・・・)らしいよ?」

「は!?」


望は思考を放り出し、目を丸くするしかなかった。















「いやそりゃないでしょ」

「ですよね~」


噂話を耳にした綾火は即座に否定し、その話を持ち込んだ精霊戦隊の参謀役である光はあっさりと追従した。


彼女らは別に太平を善人だと思い信用しているわけではない。彼は考えなしで暴力的で常識ぶりながら非常識であるが、無意味な不正などは絶対に行わないタイプだ。むしろそう言う人間は心底小馬鹿にする。

これまでの経験からそれくらいは理解している彼女らは、噂がでたらめだと確信を得ていた。


で、あるならば。


「だーれがそんな噂を流したか、だね」

「心当たりだけなら沢山ありますしね~」


太平に対してはもうなんか諦めている(・・・・・)人間が大半ではあるが、中にはしつこく恨み辛みを重ねている者もいる。校内であれば例の番長か、だが内部の人間の仕業とは限らないし、どちらかといえば主に校外で恨みを買ってる方が多い。

そう言った類の者が介入してきたというのか。しかしそれにしては……。


「びみょーに小物くさい(・・・・・)んだよね」

「策ともいえないお粗末ぶりですね~。正直誰が信じるかって話ですよ~」


校内の他の人間だって、大概は太平の人柄を知っている。そうでなくても眉唾物の噂だ、よほどのあほでもないかぎり引っかかるまい。信じる人間などほとんど皆無といっていい。


「ま、実際天下君の持ち物から試験問題が出てくるなりしないかぎり信じる人間なんていないっしょ」

「でしょうね~。……でも問題は~……」


話す二人の空気が、いきなりどよーんと淀む。


「この話を天下君が耳にしたら~、阿鼻叫喚の地獄絵図になるってことですよね~」

「うん間違いなくまた大騒ぎだよ……」


あたまいてー。どこの馬鹿だか知らないが、なんとも余計なことをしてくれたものだ。この話は絶対に太平の耳に入れるわけにはいかない。

まあみんな分かっているだろうからわざわざそんな事をするヤツもいないだろうけれど。よほどの馬鹿でもない限り。二人はそう信じて心を落ち着けようとする。


無駄だろうとは分かっているのだけど本当は。















「天下 太平! きっさまああああ! 漢としていや人として許されないようなど汚ねェまでしてんじゃねえぞおらあ!」

「どういうことですの天下 太平! このわたくしの信頼を裏切るようなまねをなぜ!? 事と次第によっては貴方を殺しわたくしも自害いたしますわよ!?」


はいやっぱり無駄でした。


すごい形相で太平に迫る馬鹿二人。ぺらりと教科書をめくっていた太平は、きょとんと二人を見上げた。


「? 何の話だ?」

「しらばっくれっんじゃねえぞこ――」


みぎしっ!


「――あががががが!?」


激昂して掴みかかろうとした番長にアイアンクロー。そのまま片手でぎりぎりと締め上げながら、太平は恋に問う。


「で、何の話だ?」


ここでやっと、恋は自分が早まったことを悟った。絶対零度の視線を向けられ背中にだらだらと汗を流す。

当然、全部ゲロった。


で。


「つまりお前はオレがそんなことをする人間だと思ってたんだな?」

「まことに申し訳ございませんこの際腹をかき切ってお詫びを……」

「せんでいいから反省しろ」


土下座で平謝りする恋を冷たい目で見下してから、太平はため息を吐いた。


「ったくどこの馬鹿だ人の名前勝手に使いやがって。慰謝料と名前の使用料を要求するぞ」

「問題はそこなんだ」


こうなるだろうと思って肝心の所はぼかしてたんだけどなーと内心冷や汗をかきながら、まひとはそらっとぼけてみせた。まあこうなってしまってはしょうがない、なるようになってもらおうじゃないか。僕もうしーらないとばかりにさじを投げる気満々のまひとである。

そんなまひとをよそに、太平は恋に対する尋問を続けている。


「で、お前さんはどっからその情報を得たわけよ」

「我が鯉ヶ滝が誇る私設諜報組織『SITUJI☆隊』の働きによるものですわ! 年がら年中四六時中、貴方に関する情報を集めさせていますの!」

「……うわあ正直どん引くわあ」


正座しながらもえへんと胸を張る恋。威張るところを確実に間違えている。さすがの太平も腰を引き気味だった。

まあともかくと咳払いを一つ。太平は眼光を鋭いものに変えた。


「なら頼みがある。誰がオレに関する噂を流布させたのか、そいつを探ってくれないか? それでお前さんがやらかしたことはチャラだ」


真正面から太平に見つめられてなぜか顔を赤くしていた恋だったが、太平の言葉の意味を悟るとぱあ、っと表情を明るくした。

そしてやおら立ち上がり背中に炎をしょって吠える。


「分かりましたわ! この鯉ヶ滝 恋、今度こそご期待に添い汚名返上名誉挽回して見せようではありませんか! 今しばらくお待ちになって下さいまし必ずや吉報を届けてご覧に入れますわ! ……セバスチャン! ヨーゼフ! ヴィルヘルム! SITUJI☆隊を集結させなさい、わたくしが直接陣頭指揮を執ります!」

「「「御意!」」」


どこからともなく現れた執事たちを率い、意気揚々と教室を後にする恋。それを見送った太平は、やれやれと肩をすくめた。


「あの女、将来悪い男にだまされるぞ絶対」

「もうだまされてるんじゃないかなあ……」


なぜよりによって太平に懐くのだろうあの娘。ここまですげなくされたら普通は目がないと見限るだろう。

鯉ヶ滝 恋。やっぱりどっかおかしい。


まあともかくそれほど間もおかずに彼女たちは真相を調べ上げるだろう。人格的にはアレだがそれでも世界に名だたる鯉ヶ滝の後継者候補筆頭だ。能力的にはやはり図抜けている。

そこだけは太平も認め、信用してはいる。多分そこだけ(・・・・)だが。


さて、慰謝料どんだけふっかけるかな? すでに恋の事など彼方にド外道な思考を巡らせ始める太平。最悪だこの男。


風が吹く。窓の外でずたぼろにされ逆さづりになった番長が白目をむいたまま揺れる。

嵐は、近い。















薄暗く陰った部屋。

備え付けられた豪奢な椅子に座するその人物は、にい、と唇の端をゆがめた。


「くくく……計画通り」


長い黒髪。小柄な体躯。不敵な笑みを浮かべたその人物は、使い魔(・・・)からもたらされる情報を見て満足を得る。


ルーシー・不破。今回の騒ぎを画策したのはむろん彼女だ。


地獄より出でし堕天使の長(こういうとなんか残念な病気のようにも思えるが、事実だ)である彼女がなぜこのようなことをしたかと言えば……天下 太平、彼を自分の勢力として取り込まんがためであった。

なんで太平に試験問題窃盗の罪をおっかぶせたらそうなるのか。ルーシーの思惑としてはこうだ。



周囲からそれなりに信用されている太平の持ち物の中から試験問題が見つかる。

真偽はともかく一気に信用はがた落ち、当然この手の話は広まるのが早いから周囲から白い目で見られる。

孤立。太平が死んじゃう!

と、そこで何食わぬ顔で手をさしのべる。そうすれば天下 太平は滂沱の涙を流しながらすがりつくだろう。

ウチと契約して地獄に堕ちようよ。おk。

やったねルーシーちゃん、太平が仲間になるよ! 第三部完!



……いろいろツッコミどころは多いが、ともかくこれがルーシーの目論見であった。

普通に考えればうまくいくとは思えない。が、ルーシーはこれでも地獄の王だ。幾重にも己の所在をごまかし、意識を他に向ける術などを用いて己が噂の根元であることを隠蔽している。妹にして宿敵である美佳はおろか、神々すらも欺けると自負している領域を生み出し、そこを基点に自らは動かず、雇い入れた自称忍である透を用いて暗躍する。

まあその、多少間抜けな人物であるが言うだけの能力は持っている。程なく試験問題を入手してくるであろう。

それが叶えば策は成ったも同然。太平さえ味方となればもう恐れるものは何もない。そこが一番の苦労のしどころだったわけだが。


「(なんせあの兄ちゃん、色々特典あり破格の契約とか、色仕掛けとか、一切通じへんかったもんなあ……)」


わざわざこんな回りくどい手段を取ったのはそういうわけだ。あの男、どんなに美味しい(・・・・)ように見える状況であっても見向きすらしない。まあよくよく考えなくても悪魔との取引だ、メリットよりデメリットの方が多いのであるが、そこをだまくらかして契約に持っていくのがプロの悪魔(詐欺師)というもの。しかしその長が自ら勧誘に乗り出しているというのにあの男と来たら、すげなく断るどころか終いにはげんこつ一発でルーシーを沈黙させやがった。


ともかく直接的な手段は壊滅。であるならば、絡め手で行くしかないだろう。そう決意した巡らせた策がこれ。お粗末な代物とも思えるが、ルーシーはそれなりに勝算があると見ていた。


「(なにしろ、直接あの兄ちゃん(・・・・・・・・)と敵対しない(・・・・・・)んやからのお)」


そう、天下 太平を相手取るときの最大の問題点、『敵対すれば破滅する』。直接対峙していればはからずともそうなってしまう可能性があるが、そうぜず外側から状況を制御すれば。

『それっぽい噂を流す』『試験問題を盗み出す』『それを太平の持ち物に紛れ込ませる』。一つ一つはどれも敵対行為とは言い難い。それらの結果で他人がどう判断するかは別問題だ。


実際最初に流布させた噂は『天下 太平が試験問題売買組織の黒幕だったら(・・・・)すごいことになる(・・・・・・・・)』というものだった。伝言ゲームで変質させたのは噂を流布させていった者たちだ。そして先も言ったとおり幾重にも所在を隠蔽し噂の根元は分からないようになっている。どっかのご令嬢やその他が色々探りを入れているようだが、神々をも欺く所行がそう簡単に見破れるはずもない。


細工は流々。だがここまで来て油断するつもりなど欠片もない。慎重に、しかし大胆に。事を成就させ必ずや天下 太平をものにしてみせる。決意を胸に、彼女は不敵に笑みを浮かべた。


と、そこで領域に介入する反応。ルーシーが手ずから制作した領域に入るための護符、その反応だ。

それを所有する者は唯一ただ一人。


「お待たせいたしました我が主」


虚空より現れ、しゅたりと床にひざまずく人影。他でもないルーシー配下の忍び、篠備賀 透だ。


「首尾は?」

「は、首尾よく主命、果たしもうした」


威厳を取り繕って問うルーシーに、懐から取り出したファイルケースを恭しく差し出す透。

ルーシーの笑みが深まる。


「でかした。報酬は期待するがいい」

「ありがたく」

「うむ、では早速だが次なる仕事だ、この試験問題集に……」


改めて策を巡らそうとする二人。

だがそれは叶わなかった。


ルーシーの台詞を叩ききるように轟音が響く。それは部屋の扉が勢いよく蹴破られた音。


「動くな! 抵抗するなら容赦なく撃つ!」


自衛隊で正式採用されている大型自動拳銃を構えて警告の声を上げるのは、エージェント女教師(ティーチャー)高見 望略してETNだ。


ばかな、ルーシーは内心の驚愕を得る。この部屋を中心に展開しているのは神魔をもたばかる領域だ。それがなぜこの女に、諜報員でしかない(・・・・・・・・)ただの女(・・・・)に破られる!?

一瞬の思考。その間にとっさに飛び退きルーシーを背に庇うような位置で構えを取ろうとする透であったが。


「動くなと言った!」

「どわたたたたた!?」


望は宣言通り容赦なく動きを取った透の足下に縦断をたたき込む。その弾道を見切った透は焦った様子で悲鳴のような声を上げた。


当てる気(・・・・)! この女教師本気で当てる気で候!」

「(をいいいいいいいい!?)」


ルーシーは危うくツッコミを入れそうになる自分を何とか押さえた。仮にも生徒に対してあの女、本気で容赦ない。その程度でどうにかなる自分ではないが、背中に流れる嫌な汗は止めようがなかった。

もちろんルーシーの内面など知りようもない望は油断なく銃を構えたまま告げる。


「安心しなさい、弾頭は硬質ゴムです。まあ直撃すれば骨にひびくらいは入りますが」

「それは安心できる要素になりもうさん!」

「どうせ簡単には死なないし多少死にそうになってもすぐ直るんでしょう? 分かってるんですよ?」

「偏見っ! それすごい偏見っ!」

「そうやって油断させる気ですね? 騙されませんよ?」


最早聞く耳持たず。完全に目からハイライトが消えた望はただ己の任務を阻害する可能性の高い存在を叩き潰すマシンにでもなったのか。


「私は悟ったのです、変人に対しては真っ当な常識など不要と。であれば己の全力を尽くし対処するべきでしょう。……とりあえずコレ(・・)どうにかしなさい」


……まあその、多分に頭の上でわさわさ揺れるアフロあたりに原因がありそうな気がするが。


ともかく悟ったというか吹っ切れたというか、色々と肝が据わった様相の望に対して透は「うぬぬう」と呻くことしかできなかった。アフロの直し方なんて知らないし。

内心ビビりつつもそれをおくびにも出さず、おののく透に「下がれ」と命じて、ルーシーは銃を構えたままの望と相対する。


「まずは見事と言っておこう、人間。よくぞここまでたどり着いた」


鷹揚に、余裕ある態度を装ってルーシーは言う。見た目だけなら幼女だが纏う気配は強大。普通の人間なら戦慄を覚えずにはいられないはずだが……なんか目の前の女には欠片も通用している様子がない。

まあ実のところ初日から某邪神の近くにいてプレッシャーに慣れてしまっただけなのだが、もちろんルーシーがそんなことに気づく訳がなかった。もしかしてうちヤバいんとちゃうやろかと内心思いつつ、それでも彼女は王者の威をもって接する。


「して、どうやって我が領域をくぐり抜けた? ただの人間がくぐり抜けられるほど甘くはなかったはずだが」

その封筒(・・・・)に仕込んでいた発信器・・・の反応を追跡したら普通にたどり着けましたけど?」


ルーシーの問いにさくっと答える望。その応えにルーシーは「なるほどな……」といかにも予想の一つであったような反応を返したのだが。


「(なななななななんでやああ!? どないなっとるんやああああ!?)」


頭の中はパニック状態だった。


実のところ、望が何かすごいことをやったわけでも隠れた能力があったわけでもない。彼女がやったのは言ったとおり加工した試験問題のコピーを入れた封筒に発信器を仕込んでデスクの中に放置した。それだけである。


ルーシーが手ずから制作した領域。神々などに対しては絶大な効力を発揮するが――

科学技術に対しては、全く無防備だった。


そして一度崩壊してしまえば、あとは取り繕うことなど不可能で。


「さあ、おとなしく拘束されて下さい。企みを洗いざらい話すというのであればそれなりの温情も……」

「ここが犯人のアジトですのね!? 総員安全装置を解除、我らが敵に裁きの鉄槌を下しなさい!」

「「「「「御意!」」」」」


怪しい笑みを浮かべた望が降伏を勧告する中、再び扉を蹴破って現れる影。言うまでもないがちょろいお嬢様とその手下どもだ。

がしゃがしゃと日本国内では所有も使用も禁じられているはずの代物を向ける手下ども。それを背後に恋はずびしと指を突きつけた。


「さあ覚悟なさい! このわたくしの(・・・・・)天下 太平に手を出したこと、地獄の底で後悔させてあげますわ!」

「……その、それがし主犯ではないのですが……」


そろーっと両手をあげて降伏の意を示す透。もうだめであろうなこの状況はとすでにあきらめの境地に至っている。


そしてさらに乱入者が。

どがしゃんと割られる窓ガラス。飛び込んできた人影はくるりと一回転してからしゅたりと降りたって、びしすと指をルーシーに突きつける。


「やっとみつけたですねえさま! 授業サボってこんなところでなにしてるですか!」


別に用事があったわけではないが所在が不明であった姉の姿をうろうろ探していた実はお姉ちゃん子だった美佳が、ぷんすか怒りながら問いただす。もちろん何が起こっているのか把握していない。


一度破られた領域はもはや立て直す事は不可能。それ以前に懐まで入り込まれた時点でもう詰みだ。やっべええええと失策を悟ったルーシーは、電光の速度で透を引き寄せその懐から閃光弾と煙幕弾を取り出して――


「戦略的撤退!」


床にたたきつけ、脇目もふらずに逃げ出した。















「「「「「まあああてえええええ!!」」」」」


透の首根っこをひっつかんだまま逃走するルーシー。そしてそれを追う望以下追撃者たち。

壮絶な鬼ごっこは、校内すべてをコースとし際限なく続けられる。


廊下を、庭を、壁を、張り出しを、樋を、場所と状況を選ばず彼らはひたすら駆ける。

駆ける駆ける駆ける。追っ手はやまず、終わりは見えぬ。一体自分は何をやっているのか、何でこんな事になったのか。っていうか悪役というのはもっとこう、ちがうやん!? 逃げ回りながらルーシーは思考をぐるぐると巡らせた。


ともかくなんとか逃げ延びて雲隠れし、ほとぼりが冷めるのを待つしかあるまい。これ以上目立つのはなんだが派手な術の一つも使って目くらましをしその隙に……とか考えていたら。


ちゅいん。


空を切る音を立て、何かがルーシーの頬をかすった。

そしてそれを皮切りに次々と飛来する弾丸・・


「アンタら少しは遠慮とかせやあああああああ!!」

「盗人猛々しいですわね! おとなしく捕らわれるかここで果てるか、選びなさい!」


ガチでデッドオアライブだった。いや銃弾くらいではルーシーは死にはしないが……。


「ちなみに弾頭は現法王猊下直々の祝福儀式が施された純銀弾頭ですわ!」

「歴代最強法王になにさせとんじゃああああああ!」


訂正、結構ヤバそうだ。


ちょうど休憩時間になり他の生徒も何事かと顔を出してくる。まずい、今の追撃者(こいつら)だけならともかく、他の連中が感づいて関わってきたら逃げ切れない。

どうする、どうしよう。どうやってこの場を切り抜ける。思考を巡らす、当てもないまま駆ける。最早手詰まりかとも思えたが――


一つのひらめきが、次なる手段となる。


完全に目を回している透の懐を漁る。そして目的のもの(・・・・・)を引きずり出して封を切った。

そして。


「おるあああ今回の試験問題(・・・・・・・)じゃあ見さらせェ!!」


周囲に向かってぶちまける。


そう、後生大事に透が抱えていた試験問題のコピー。それを紙吹雪のようにまき散らしたのだ。

試験対策に苦労していれば、いや、そうでなくても試験問題と聞けば思わず見てしまう生徒も多いだろう。それで混乱が起きれば逃げやすくもなる、そう考えてのことだったが。


まき散らされた試験問題。あるいは手にとって、またはたまたま偶然に、生徒や追撃者たちの目にとまる。当然ながら恋や美佳、そしてルーシー本人もそれを瞬時目に入れた。


阿鼻叫喚の地獄絵図が生じる。















「私は何も見ていない私は何も見ていない私は何も見ていない……」

「もけけへぺれぱむぎきゅいなはこたばたらす……」

「触手が……触手があ……」

「qあwせdrftgyふじこlp@……」


ぐるぐる目を回したり泡をふいたりしている生徒たちが、次々と担架で運ばれる。

意識を失いうんうん唸る生徒の中にはルーシーや透、美佳に恋の姿もあった。

その光景を見ながら、望は一言呟く。


「解せぬ」


一体何が起こったのか、さっぱり理解が及ばない。巻き散らかされた試験問題のコピー、それを目にした生徒たちが一斉に倒れたのだ。しかもなんか発狂しながらというおまけ付きで。


回収した試験問題を見る。なんのことはない、コピーした問題の一部を塗りつぶし内容が分からないように加工したフェイクである。どうしてこれを見て発狂したりするのか。頭の周りでクエスチョンマークが乱舞する望だったがふと気づく。


「ぴっぴぷっぴぷっぴぴっぴぴ~♪」


傍らに、へたくそな口笛を吹きながらそっぽ向いて冷や汗をだらだら流している成螺の姿があることに。


「よし何をやらかしやがったか全部吐いてください」

「OK分かったからそのちょぱった純銀製弾頭装填ずみショットガンを突きつけるのはやめて下さい」


つるし上げを食らった成螺は割とあっさり口を割った。ショットガンが怖いと言うよりアフロで迫る望が怖かったのかも知れない。


「いやさ、最初に言ったじゃない。関係者以外や生徒(・・・・・・・・)には見せちゃいけない(・・・・・・・・・・)って」

「え゛?」

「……見ると正気度(SAN値)が一気にマイナスに突入します。コピーを加工したヤツだったから効果が低くなってるみたいだけど」

「あんたなにやらかしてくれてるんですかあああああああ!!??」

「と、盗難防止にいいかと思ったんだよう。まさかこんなことになるなんて思わないじゃないか。そ、それに関係者は見ても大丈夫だし、ね?」

「それ以前の問題だあああああ!!」


望は叫んだ。叫ぶしかなかった。


こうして事件は無理矢理に収束した。首謀者二人はしばらくの間停学および謹慎と相成ったが……その期間のほとんどを病院のベッドで過ごすことになったのは自業自得であろう。


なお、入院した中には成績上位者が結構な割合で含まれていたため、試験順位はえらいことになり順位が桁違いに上がった某正義の味方が小躍りしたらしいが、それは別の話である。


あとどっかの邪神は学年主任と教頭にめちゃくちゃ怒られた。















さらに。


「さ、耳そろえて慰謝料払ってもらおうか」

「……せめてローンにならへんやろか」

「いいけどトイチな」

「あ、悪魔かアンタ!?」


どっかでそんな会話が繰り広げられたそうだが、まあどうでもいいことだ。













「…………アフロ戻んない…………」


がんばれ。多分次回には直ってる。












お久しぶりの更新です。

すまん色々あるんだ。


で第三話なんですが……活躍してないぞ主人公www

つーかこれ、望さん主役でよくね? という感じで頭を悩ます筆者です。おかしい狂言回し的な立場のはずなんだがなあ彼女。キャラが壊れるのは筆者のいつものパターンなんでいいんですがね。(酷)


さて次の話はいつになるやら。そして太平君は活躍できるやら。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ