1月2日の午後
元日は過ぎて、お正月も2日目。
ジャンヌは今日も……
翌日は、親せきの一家との食事会だ。
これが、一番面倒な正月行事である。ずっとひきこもっていた私にとっては、親戚と会うのは本当に気まずいし、話題も無い。インターネット、ブログ上の人間ならばアニメやちょっと風変わりな事、神から賜りし言葉等を話す事も出来るが、親戚連中は皆、普通且つ常識的な真人間ばかりだ。いつもの様な話題を出しても失笑を買うのがオチだろう。
食事する場所はいつも違うのだが、今回は大須にある「玉野屋」と言う店だった。
これに、私は驚いた。この店は以前、ジル=ド=レイらと私のブログのオフ会を行った場所だからだ。偶然と言うものは恐ろしい。私は、この店に深い何らかの縁でもあるのだろうかと思った。
店に入ると、あの時も絶妙なもてなしとビンゴの賞品運びを見せた女将さんが現れた。そして、私に気付いたが、特に何も言わずに部屋に案内してくれた。ここで、あのオフ会の事を持ち出されたらどうしようかと思っていたから、ホッとした。実に良く気のきく女将である。やはり、この気配りは尊敬に値するだろう。
前回は「十五夜」という大きな部屋だったが、今日は「曲がり菊」という少人数向けの部屋に案内された。人数が少ないのだから当然といえば当然だ。私は、いそいそと隅の席に座ったが、現世の父が変な気を聞かせて非常に目立つ真ん中あたりの人に挟まれた席に座らされた。現世の父も悪い人間ではないが空気が読めないのが問題だ。女将を見習ってほしい。
オフ会の、あの賑やかな光景とは違い、今日の玉野屋は悶々とした雰囲気に包まれていた。親戚と両親がなにやらダラダラと世間話をしてるのだが、全く付いていけない。FX証券とか年金とか海外旅行の自慢話とか弟や親戚の子供さんの進路のこととか、実に普通すぎて興味がわかない。世の中を遮断していた私には入る余地が無い。親戚家族の末っ子、太郎君がおもちゃで遊んでいるのを見ている方がまだマシだが、マシなだけだ。かのFOX老人の話が本当に面白かった事を実感する。ああ、こんな風にただ座っているだけなんて、なんと有意義では無い時間なのだろう?
私は、ただ黙々と運ばれてきた食事をいただき、じっと考えた。
考える時間は十分にあった。色々な事を考えた。
私は何故、転生したのだろう?
何故、神はお言葉をくださらなくなったのか?
ジルの言っていた事は本当なのだろうか?
神が隠されたと言うのは、信用に足る事なのだろうか?
ふと、部屋に入ってきた女将を見る。
女将はこちらを向いて、優しく微笑んだ。