婚約破棄中の王子の隣で男爵令嬢がこてんと首を傾げたら
「ルイマリアーナ・フォン・ローゼン! 貴様との婚約を破棄する!」
高らかな宣言が貴族学園の卒業パーティー会場に響き渡った。
給仕係の足が止まり、生徒たちも静まり返る。
豪奢なシャンデリアの下、第一王子は勝ち誇った顔で一人の令嬢を指差していた。
公爵令嬢ルイマリアーナはワイングラスを置いた。
感情のない薄青の瞳が王子を映す。
「理由をお聞かせ願えますか?」
「白々しい! 貴様は悪辣な嫌がらせで、私が真実愛するリリアを苦しめ続けた!
陰気で、陰湿で、陰……陰……陰険メガネだ!」
「わたくしは裸眼です」
「や、やめてください!あたしなんかのためにっ……」
王子の隣に立つのは、ふわふわした桃色の髪の男爵令嬢リリア。
思わず守ってあげたくなるような、庇護欲をそそる愛らしい少女だった。
彼女はおどおどした様子で王子の袖を摘まんで引っ張っている。
「なんと……なんと健気な!」
王子が感極まったように声を上げ、それを見た周囲の生徒たちはヒソヒソと囁きを交わす。
一方ルイマリアーナは無表情だった。
本当に何も感じていない顔をしていた。
「リリア嬢に嫌がらせをした覚えはないのですが」
「階段から突き落とし!お茶会で紅茶をかけ!教科書を裏庭の池に捨てただろう!」
「学園に池はありません」
「あっ……!」
王子がたじろぐ。
会場の空気はなんとも生温いものへと変わっていった。
「確かに池なんてないよな……」
「というかルイマリアーナ様は、体調を崩されて長らく領地で療養していたのでは?」
だが王子は負けなかった。
「と、とにかく!貴様のような冷酷な女を妃にはできん!婚約破棄だ!」
「そうですか。承りました」
ルイマリアーナはあっさり頷いた。
あまりにも抵抗がないので、逆に王子のほうが戸惑ってしまう。
「……え?な、泣いて縋らないのか?」
「泣く?わたくしが? ……なぜ?」
真顔で尋ね返されて、王子の顔がみるみる赤くなる。
「ぐっ……!最後まで可愛げのない女だな!」
「それは申し訳ありませんでした。
では最後ですので、ひと摘まみだけ」
ルイマリアーナが一歩前へ出る。
王子は思わず身構えた。
そして次の瞬間。
――ペシッ。
「いっっっっっ!?」
ひと摘まみ分の可愛らしさとは、デコピンだった。
剣術の稽古はサボってばかり、痛みに慣れない王子は額を押さえて悶絶する。
「な、何をする!?」
「幼い頃より婚約者として苦労をかけられてきた、ほんの御礼です」
ルイマリアーナはそこで、す、と視線を王子の隣へと向けた。
「リリア嬢、せっかくですので貴女にも――」
「え?あ、はい?」
リリアはなんとも可憐に、こてんと首を傾げる。
こてん。
そのまま首が落ちた。
床に。
そしてコロコロと転がった。
周囲の空気がピシリと凍りつく。
王子も硬直した。
給仕係がトレイを取り落とした音だけが、やけに大きく響き渡る……。
転がり続けてようやく止まった頭の、天井を見上げる形になったリリアの目が、ぱちぱちと瞬きをした。
シャンデリアの輝きが眩しかったのかもしれない。
「……取れちゃった⭐︎」
首の断面から見えるのは、複雑に噛み合う金属製の歯車。
そして魔石が放つ、ほの赤い光。
「…………」
「…………」
「…………」
誰も声を出せない中、ルイマリアーナだけが小さく呟いた。
「やはり強度不足でしたか。魔導ロボットは関節部が脆弱で困りますね」
「ロ、ロボット……?」
王子が引きつった声を漏らした。
その間も床に転がったリリア(の首)は、相変わらず瞬きを繰り返している。
「エラー確認中……エラー確認中……。 頭部パーツ脱落。 原因:急激な頸部回転」
そこでようやく悲鳴が上がった。
目の前の光景への理解が追いついた令嬢たちが数人気絶し、令息たちは腰を抜かし、給仕係はヒイィッと情けなく逃げ出す。
そんな阿鼻叫喚の中、ルイマリアーナだけが静かだった。
彼女は転がるリリアの首を拾い上げると、断面を覗き込む。
「速やかに可動部の全面的な改良をしなければ」
「改良イズ何!?というかそれは一体何なんだ!?」
「説明が必要ですか? ……そうですか」
王子が叫ぶと、ルイマリアーナはリリアの首を手に持ったまま、常と変わらぬ様子で語り始めた。
「実はわたくしは療養中の身ではありません。
学園の単位は一学年時に全て取得済みで、現在は学園生であると同時に研究者として、魔術塔に所属しております」
ざわり、と空気が揺れる。
魔術塔。
それは大陸最高峰の魔術師が集う研究機関だった。
所属できるのは天才たちの中でも飛び抜けた者だけという、ひどく狭き門。
「現在は主に自律思考型魔導ロボットの研究を行っておりまして」
ルイマリアーナはそう言って、リリアの頭を軽く掲げる。
頭部だけになったリリアが「オハヨウゴザイマス⭐︎」と元気よく言った。
なお現在時刻は夕方である。
「その魔導ロボットの試作一号機がこちらです」
「試作品!?」
「男爵令嬢じゃなかったのか!?」
「男爵令嬢リリアという人物は存在しません」
あっさりと断言された。
それを聞いた王子の顔から血の気が引いていく。
「う、嘘だ……」
「ロボット本体と人格プログラムの他、戸籍、経歴、入学記録、親族及び交友関係。すべてわたくしが自ら作成しました」
「何故そんなことを!?」
「殿下の荒ぶる精神を恋愛感情によって安定した状態に保つ、という結果を得るためです」
会場が困惑と、一部納得の空気に包まれた。
王子だけが口をぱくぱくさせている。
完全に意味不明、理解が出来ていない顔だった。
「ま、待て……待て待て待て……」
「はい」
「つまり貴様は……貴様が、この変なロボットを私に近づけていたのか?」
「変なロボットではありません」
ルイマリアーナは即座に訂正した。
「魔術塔でも最先端研究の、自律思考型魔導ロボットです」
「最新式です⭐︎」
リリアの首がルイマリアーナの腕の中でぺかっと目を光らせる。
「嘘だと言ってくれ頼むから」
王子は頭を抱えた。
しかしルイマリアーナはまったく悪びれる風もない。
「殿下は以前から、政務よりも感情的満足を優先する傾向がありましたので」
「急に人格分析を始めるな」
「殿下に最低限働いていただくためには、精神の充足が必要不可欠。
つまり餌……真実の愛による癒しだけをひたすら与え続ける、完璧に都合の良い側妃を用意して」
「餌?餌って言ったか今? 仮にも婚約者を家畜扱いしてなかったか!?」
ルイマリアーナは、聞こえない振りをして自分の胸に手を当てた。
「わたくしは正妃として国政を補佐する役割と、お世継ぎを産む役割を担う予定でした。
リリアがロボットでわたくしが製作者であれば、側妃が正妃に逆らうようなことも回避でき、これ以上なく効率的かと」
しん、と周囲の人々が静かになる。
ルイマリアーナがあまりにも自然に、恋愛と王妃業を分けて語ったからだ。
王命による政略結婚とはいえ、彼女はそれ程までの覚悟をもって……いやでもさっき婚約破棄に応じてたわ。
「き、貴様……自分が何を言ってるのか、本当にわかっているのか?」
「もちろんです。人間、同時に出来る業務には限界があります。
国政補佐、己の政務、社交、家庭に加えて負担の大きい感情労働まで一人でこなすのは非合理的です」
ルイマリアーナはリリアの頭部を持ち直しながら続ける。
「ですので、殿下の癒やし担当としてこのリリアを製作致しました。
ちなみに好感度上昇アルゴリズムにはかなり苦労しましたのよ」
こてん、と首だけのリリアを傾けて見せると王子が爆発した。
「何だそれは! 何もかも皆おかしいだろうが!!」
会場の生徒たちも困惑している。
「待ってくださいませ……それでは殿下は、恋愛感情すらルイマリアーナ様に設計されたようなものなのでは……?」
「怖い怖い怖い!」
「でも確かにリリア嬢は殿下の好みにぴったり過ぎましたわね……」
ざわざわと騒がしくなる会場。
しかしルイマリアーナはそこで、小さく息を吐いた。
「ですが」
その一言で空気が変わった。
「殿下にはさすがに愛想が尽きました。
想定以上に政務能力が欠如しておりましたし、リリアへの入れ込み具合も正直……気持ち悪くて」
「なっ……!」
「ですので、わたくしたちの婚約はこのまま破棄していただければ幸いです」
ルイマリアーナは優雅に一礼する。
「殿下を心から喜んで補佐できる、新たな婚約者をお探しください」
「ま、待て!」
「なお、リリアにつきましては――
改良とフルメンテナンス後、ご希望とあらば側妃としての貸し出しを検討しております」
「貸し出しだと?」
「定期点検込みの御見積もりはこちら」
「人をレンタル品みたいに言うな!」
「人ではありませんので」
「そうだった……!」
「では今日のところはひとまず、リリアは回収致しますね」
煩悶する王子を視界に入れずにルイマリアーナがそう言った瞬間だった。
首だけのリリアが、かっと目を見開いた。
「マスター! あたし、嫌ですっっっ」
「……はい?」
ルイマリアーナが初めてきょとんとした顔をした。
生徒たちも驚く。
「自律思考から感情が生まれた……?
製作者の意向に反してまで、自分の意思表示をしただと……!?」
「まさかここまで学習できるのか!?」
「凄すぎる!」
リリアの首はルイマリアーナの腕の中でぷるぷる震えていた。
「あたしも、もう殿下は要りません!」
「言い方」
王子が傷ついた顔をする。
だがリリアは止まらない。
「あたしの役目は、もう終わりました……」
「まあ、そう言えなくもないですね」
「だから、あたし――」
リリアの瞳がきらきら輝いた。
「トマスと結ばれたいんですっっっ」
「……誰だ? トマス……?」
王子が呆然と呟く。
ルイマリアーナは、ああと納得したように頷いた。
「我がローゼン公爵家の庭師ですね」
「庭師?ロボットが人間に本気の恋を? 王子の私を差し置いて?」
「いえ、トマスも人ではありません。
庭園管理用自走式魔導機関車といって、上半身は男性型ですが下半身は車輪です」
「機関車トマス!?」
リリア(の首)はうっとりと頬を染める。
「ああ、トマス……♡ いつまでも耳と心に響く、あの紳士的なレール音…♡」
「なおトマスは剪定の他、害虫駆除、噴水清掃等も可能です」
「レール走行してるのに多機能過ぎるだろ!?」
「NOトマスNOライフ⭐︎ トマスふぉーえばー⭐︎」
「……なるほど。機械にも、心は宿るのですね……」
珍しく感情を滲ませながら呟くルイマリアーナに、とうとう着いて行けなくなった会場の誰もが頭を抱えた。
王子だけは遠い目をしていた。
「もう帰りたい……」
「左様ですか。それではリリアを回収して、そろそろ卒業パーティーもお開きに」
ルイマリアーナがそう言ったところで、ふと何かを思い出したようだった。
「そういえば」
王子は猛烈に嫌な予感がした。
「殿下には、定期点検時の説明だけでもしておきましょうか。
リリアの取扱説明書は、読まずにどこかへやってしまわれたのでしょう?」
「……取扱説明書だと?」
「はい。リリアは精密機械ですので、取扱説明書も定期点検もございます。後者に関しましては、一年に一度。
ちょうど先日、定期点検からのフルメンテナンスを行いました」
ルイマリアーナはさらりと言った。
「その際リリアの人格プログラムを一時停止させましたので、自律思考部分はわたくしがリアルタイムで代行致しました」
「…………は?」
王子の顔が奇妙な表情で固まった。
「つまりリリアが先日、殿下ぁ⭐︎お慕いしておりますぅぅぅ♡などと言っていたと思いますが、実は中身はわたくしルイマリアーナだったということです」
生徒の誰かが吹き出した。
王子の顔色が一気に青ざめる。
「ま、待て……いや、そんなはず、そんなことあるわけが――」
「お疑いでしたら映像があります」
「やめろ」
即答だった。
だが公爵令嬢ルイマリアーナは忖度しない。
ぱちん、と指を鳴らすと空中に魔法陣が展開され、巨大な映像投影が始まった。
『殿下ぁ〜♡』
映し出されたのは、学園中庭のガゼボ。
男爵令嬢リリア(の姿をしてはいるが実質ルイマリアーナの遠隔操作)と、そしてその隣には。
『リリアたんは今日も可愛いでちゅねぇ〜♡』
でろんでろんに顔を緩ませた王子がいた。
誰が見てもデレデレと蕩け切ったその姿に、会場が水を打ったように静まり返る。
「やめろ」
『えへへぇ〜、しゅきしゅき王子しゃまぁ♡』
『よちよち、お膝においで〜ポンポン♪』
『はぁい♡』
「やめろォ!!」
王子の絶叫が響いた。しかし映像は止まらない。
『リリアたん、このお菓子食べゆぅ〜?』
『たべりゅ〜♡』
『あぁ〜ん、ほんと可愛いでちゅねぇ〜♡』
『えへへ〜♡』
「死にたい!!」
王子が膝から崩れ落ちた。
ルイマリアーナはいつも通り感情の読めない無表情だったが、周囲の生徒たちは震えていた……笑いを堪えて。
「ぶふっ」
「こら、不敬罪!」
「だってあの第一王子殿下が!赤ちゃん言葉を!」
『リリアねぇ、あなたのこと……だぁぁぁい好き♡』
『私もだぁぁぁいしゅきだよぉ〜♡』
「うわあああああああああ!!」
王子がついに頭を抱えて転げ回った。
床をごろんごろんと転がる姿はとても王族とは思えない。
それでもまだ映像は流され続ける。
『リリアたん、だぁいしゅき出来てえらいえら〜い♡
よちよち〜♡』
『きゃは♡』
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
王子の魂がどんどん削れていく。
ついに彼はぴたりと動きを止めた。
目から急激に光が失われ、虚ろになる。
「……りりあたん……かぁいい……」
「あら? 何故か殿下が現実逃避を始めてしまいましたね。 仕方がありません、定期点検に関してはまた別の機会に改めて御説明しましょうか」
王子は尚もぶつぶつ呟き続けている。
「よちよち……おかしたべりゅ……りりあたん……」
完全に駄目になってしまった。
精神が脱兎の如く逃げ出して帰って来ない彼は、もはや捨て置かれた人形のようになっている。
するとその時。
「何をしているのだ、お前たちは」
低く威厳ある声が響く。
ゆっくりと会場の扉が開かれ、そこに立っていたのは――
国王陛下。
そして王妃陛下だった。
国王陛下は、会場の惨状をぐるりと見回した。
美しいカーテシーを披露する公爵令嬢ルイマリアーナと、遅れてぎこちなく礼をとる周囲。
その隙間から覗く、気絶して床に倒れたままの令嬢たちと、首から上がない男爵令嬢の身体。
外れた首だけで、喉渇いちゃったぁ〜…お茶飲みたーいなどと喋るリリア。
そして。
「りりあたん……よちよち……」
虚空を見つめながら同じ言葉を呟き続ける第一王子。
その姿に国王陛下は深々と溜め息をついた。
「……結局この愚息めは最後まで、リリアの正体には気がつかなかったのだな」
心底呆れた声だった。
それに王子がぴくりと反応する。
「ち、父上……?」
「男爵令嬢リリア側妃計画は、王家の許可のもとで行われていたのだ」
ざわりと会場が揺れる。
王子は、え?という顔をしていた。
「王太子教育の一環としてな。
状況把握、情緒安定、異性対応……将来的な側妃制度への適応確認等も兼ねていた」
「私は一切聞いておりません!」
「お前が届けられた資料も魔導ロボットの取扱説明書もろくに読まんからだ。
誰もお前に計画を秘密になどしていない。
お前が何も知ろうとしなかっただけだ」
ぴしゃりと言われて、王子は阿呆のように口を開けて固まった。
実際リリアにはルイマリアーナ謹製の八百ページ超の取扱説明書が存在している。
人が殺せる程度には分厚く、全てに目を通した者は魔術塔所属の数名しかいない。
「まあ良い。婚約破棄については認める。
無論、お前の有責でな」
国王陛下は疲れたように額を押さえた。
「な、何故です父上!? 私は騙されて……」
「それがわかるまでお前はしばらく謹慎しておれ。
そしてルイマリアーナ嬢には長年よく耐えてくれたと、まずは礼を言おうか。
婚約破棄の慰謝料や書類等は、また後日ということになるが」
「……本当に」
王妃陛下がとても残念そうに嘆息した。
「貴方は結局、何を言ってもどうやっても幼少期からずっと……愚かなままだったわね」
「母上まで!?」
王子はとうとう涙目になった。
だが誰も庇うことはない。
全ては彼の身から出た錆だからだ。
そこへ見かねた近衛騎士たちがやって来て、半泣きで騒ぐ気力もない王子をずるずると引きずって退場させていった。
会場にはなんとも言えない静寂が残る。
その時だった。
ルイマリアーナは、ふと視線を感じた。
「……?」
見ると、生徒たちのうち男性ばかりが何やらそわそわしていた。
妙に落ち着かない様子で、視線がちらちらとルイマリアーナとリリアを行ったり来たりしている。
「ええと……」
とある伯爵令息が覚悟を決めて、恐る恐る手を挙げた。
「ちなみに、その……リリア嬢の……同型機の販売予定などは……?」
会場が一気にざわついた。
「おい!」
「ば、馬鹿っ!」
「だが気持ちはわかる……」
「結婚後、妻に隠れて愛人を囲うより誠実だろう!?」
「しかもメンテナンス可能ということは!」
「見た目や中身を自分好みに調整できるのでは!?」
そこに思い至った男たちの目が輝き始める。
控えめに言って最低だった。
女性陣は当然、氷のように冷たい目で彼らを睥睨している。
「……現状では一点物ですが、リリアというか魔導ロボットの量産化は、魔術塔でも視野に入れております」
「おお……!」
ルイマリアーナの回答に、会場のあちらこちらからどよめきが起きる。
「性格設定はどんなタイプが!?」
「外見カスタムはどこまで詳細に!?」
「趣味嗜好の最適化は可能ですか!?」
「現在鋭意研究中です」
「素晴らしい!!」
男たちが怒涛の勢いで食いついたせいで、もはや卒業パーティーどころではない。
既にこの場は魔導ロボットの新製品発表イベントだった。
イケメンは……作れる……? という、何かに気づいてしまった令嬢たちの囁きもちらほらと聞こえてくる。
そんな中。
国王陛下がコホン、と咳払いをした。
会場中の人間が一斉に静まり返り、注目する。
しかしそれは、場を鎮めるために発されたものではなかった。
「ルイマリアーナ嬢」
「はい」
「……私にもロボットを一台作ってもらえないだろうか」
王妃陛下が背後ですっと目を細めるが、夢中で言い募る国王陛下は気づかない。
「なに、簡単なことだ。
見た目も中身も王妃そのままで良い。
ただし胸、胸を出来る限り大きく、そう限度ギリギリまで、何なら際限なく大きく――」
スパァン!!
とても慎ましやかな胸を持つ王妃陛下の扇の一撃が、国王陛下の後頭部に炸裂したのを以って、波乱の卒業パーティーは幕を降ろしたのだった。
ルイマリアーナ:家庭内暴力制止機能なんかも需要ありそうですかね




