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村人編
あたしが生まれたのは山に囲まれた村だった。
村人の多くは生まれた村を出ることもなく一生を終える。そんな村だった。
隣り村に行くにも、近くの街に行くにも魔物がいて、腕に自信がある若者だけが行ける。
後は村を訪れる行商人と税の取り立てに来る役人くらいだ。
そんな村に神官を含む集団がやって来て、あたしの夫を勇者だと言い始めた。
魔王を倒す勇者だ、と言われてもピンとこない。
村の周りの魔物が強いのも、魔王のせいだと言われて、ようやく、勇者が必要な理由が分かった。
勇者が生まれなかったせいで、魔王を倒すことができず、強化された魔物が世界中を闊歩しているそうだ。
道理で、隣り村に行くのも難義なわけだ。
あたしと一緒で、一生、村から離れることはないだろうと思っていた夫は、勇者として連れて行かれた。
「必ず帰って来る」
そう言って出て行った夫は数年後、魔王を倒して、王女様と結婚するそうだ。




