9:名古屋城迷宮
「織田信長と徳川家康」
上官にそう言われ俺は頷く。
「なんだん、疑っとるだかん」
「やだにゃーよわーやつはうたぐりぶかーて、にゃー」
「ねー」
頭痛を押さえるような仕草をした上官を無視して俺は指示を仰ぐ。
「二人は自分と契約をしました。どうしましょうか」
「あー、豊臣秀吉でも回収するか?」
なにをいうのかと瞠目すると地図が出される。
「名古屋城のダンジョンが最近活発化している」
「守山基地の管轄でしょう?」
「それが、かなり強力なエルフがいて、そいつがなんだか強い英霊を連れているらしい」
「ほー」
「そいつが、豊臣秀吉ではないかと」
「そうですか。じゃあ、名古屋城に向かいます」
「そうしてくれ」
敬礼して退室して待っていた岡田を連れて4人で新豊橋駅に向かう。
4人分の新幹線の切符は経費だ。知らん。トラックで向かう方が不経済である。
「豊川にも新幹線引きゃ良かったのに」
「まあ、大変ですよね」
「しんかんせんとかいうだかん。いいねーはやいねー」
「こりゃどこまでも行ける!!!まっすぐ走っとる!!!」
ん、んー……
「線路の上以外は走れんでね」
「なんだそれ」
新幹線の構造を教えてやると信長はがっくりとした。
「なんだ、でかい馬じゃにゃーのか」
「馬じゃねー」
「ああ、もう名古屋ですよ」
名古屋駅から東山線の栄を経由し、名城線で名古屋城駅。7番出口から歩いてすぐ名古屋城だ。
まあ、うん。叫び声、怒号、銃声。
日常では聴かない音である。
入場券を買う場所はヒトがおらず、俺は銃を構えて岡田に合図を送る。
「いいかん、英霊は確保するでね。殺すな」
「はい」
AK47を構える岡田はナイフを何本も腰にさしばらっと束を流す。
走って名古屋城の前まで行くと自衛隊が発砲し、それに合わせてエルフが魔術を唱える。
「信長ああ!!あれっ秀吉かん」
「応、猿だね」
自衛隊を飛び越え此方を捕えたエルフが指でターゲッティングする。俺はシールドを張り魔術を無効化。
エルフを上から狙う。が、それを短刀で襲い掛かってくる金髪の秀吉。
その表情は笑顔。
「御屋形様を従えとるとはやるにゃーおみゃーは。さて、俺に勝てるかな」
ぱんと魔術弾を撃つと秀吉は倒れる。
岡田がエルフをナイフでめった刺しにし、絶命させると秀吉はピタリと動きを止めた。
「あー……まあ、雑魚だったでにゃー……どうしようか」
「俺についてこい」
「ふーん?御屋形様と狸連れとるで、つよーだらーね」
「まあな」
「よかろう。俺を従えると良い。たまにゃあ、従ってやらーね」
手を握ると俺の手の甲に痛みが走る。
そこを見ると花弁が追加されている。
「ここに印が付くってことは、あと5人?」
「儂にはどうとも言えんにゃーおみゃーの魔力なら16人従えられると思うがにゃー」
「ふーん」
そんな話をしていると背後から遠慮がちに声をかけられる。
「連絡のあった島風少佐でしょうか」
「ああ、すまない。急いでいたもので……島風少佐、到着いたしました」
敬礼して見せると安堵したように上官は秀吉を見る。
「豊臣秀吉、だとか」
「はい。英霊だそうで」
「……使い魔、と言う認識でよろしいか」
「はい。ですが、命令すればなんでもする、と言う点では使い魔より強いです」
「なるほど。このまま、名古屋城攻略をお願い致します」
「はい」
岡田はナイフを仕舞い、こちらに来る。
「名古屋城を攻略する」
「ダンジョンですね」
「うん。ここは平均36時間で攻略できる。階層は10。ダンジョンボスを倒すぞ」
「はい」
◆
「狸めっ」
「太閤殿煩いに」
「嫌味は好かん」
「そうですか」
「猿、そんくらいにしときゃー」
「はい!御屋形様」
信長には従順だが、家康とは仲が悪い感じか。
「ここは、S級ダンジョン。まあ、この規模なら制圧はなんとなくでできるでね」
「ええ?」
「ここはトロール、スコーピオン、レアどころだと宝石亀、オーガ……」
だんだんと青褪めて行く岡田の顔を見て笑う。
「このメンツでお前が死ぬことはないでね、安心しりん」
「はひぃい」
歩きながら魔物を退治しつつ先に進む。
3時間ほどで、10階に到達する。
ダンジョン内と外では時間の流れが違う。
「んじゃ、秀吉頑張れ」
「んにゃー!!!」
ばさっと音がし、上空からドラゴンが降りてくるそれに飛び掛かる秀吉。
「聚楽左文字!!!」
片手の短刀が光り、ドラゴンの心臓を確実に捕えて貫く。
墜落するドラゴンと着地する秀吉。
ドラゴンが魔力に還元され、秀吉に行く。
「おお!力が漲るがや!!!」
「そうかん。じゃ、上にもどるに」
ぷかぷか浮かぶ水晶に手を当て瞬間、地上に戻る。
名古屋城の入り口の付近。入場券を買うところではなく、名古屋城の方だ。
自衛隊員がテントを張り、待機しているのを見てそちらに向かう。
上官が出てきて、微笑む。
「島風少佐」
「攻略しました」
「ありがとう、よくやった。上にも報告しておく、給料が上がるぞ」
「ありがたいですね」
「トラックで帰るか?」
「いえ、名鉄で帰ります」
「そうか、また頼むこともある。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
岡田達のところに戻り、肩を叩く。
「駅弁でも買うかん」
「いいですね。名古屋名物って何ですか」
「……天むす?」
「てんむす」
「それ、三重の名物だら」
「何で知ってんだよ」
「ある程度、頭に情報が入っとる」
「いいんだよ。三重はあか〇くがあるから」
「ええ……」
「伊勢神宮があるってことだら」
家康に言われ俺は肩を竦める。
「だからいいら?天むすで」
「まあ、なんでもいいけど」
「英霊って腹減るだかん」
「へりゃぁせんけど、くえりゃあ、ありがたい」
「なんで」
「魔力が足りんくなるでね。実体化してるだけでも魔力を使うんだわ」
「あー、じゃあ、霊体化しときゃー」
「やだ」
「やなんだ」
「やだね」
信長と家康が交互に言い、俺は溜息を吐く。
「まあいい。基地に戻るに」
「新幹線だ、新幹線!!!」
「帰りは名鉄だに」
「なんでだん!!!」
「だって、新幹線高いもん」
「ふえええ」
信長がぐじぐじするのを無視して歩き始めた。




