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ワールドダンジョン・グランギニョル  作者: 津崎獅洸


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8:長篠城址迷宮 4


英霊様様だな。

銃弾もただじゃない。撃たないに越したことはないのだ。

家康と信長は意気揚々と魔物を討伐していき、安全に歩くだけでいい。


「深雪大尉」

「は!」

「暇かん」

「まあ、暇ですね」

「そうだよなあ」


サイクロプスがなます切りにされて、スコーピオンが火縄銃に撃ち抜かれる。


「ふわぁ」

「欠伸しとる場合かん」

「だって、お前らが強すぎるせいで暇なんだわ」

「そうかんそうかん。そりゃ、おみゃーが強いで、そうなっとるんだにゃ」


信長に言われてはたと立ち止まる。

そういえば、俺の方が強いと言って、元の主を殺していたな。


「俺がお前たちに殺される可能性もあるだかん」

「んにゃ、そりゃねぇにゃー。おみゃー以上ともなれば、魔法使いクラスだぎゃ。無理無理。そっちは、英霊なんぞいらんにゃー」

「え?少佐の魔力判定Aですよね?」


びくっと肩を震わせ、岡田の腹にパンチをくらわす。


「ぐえっ!!な、なんで!!」

「う、煩い!」

「理不尽!!」

「もしかして……Aを超えているんですか?」


深雪にそう言われ、顔を歪めた。


「……秘匿事項だ。誰にも言うな」

「はひ」

「はい」


S以上だとばれてしまったが、彼らは誰にも言わないだろう。

S判定以上の魔術師が秘匿されるのは一般常識。

まあ、深雪には爆弾が仕掛けられているから、俺に逆らったら死ぬ。だから安全である。

岡田は知らん。喋ったら、そのイケメンが見る影もなくぼこぼこにしてやるが。

不意に赤い目がこちらを見る。


「おみゃーの判定、魔法使い手前じゃ」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


どがっと思い切りよく華奢な体を殴り飛ばすと向こう側に信長は飛んでいった。


「なにするだん!!兄上様!!大丈夫ですか!!!」


家康が慌てて信長の元に向かい、俺は背後の二人の方を見ずにさっさと足を進める。

二人がひそひそと話しているのが聞こえる。


「ま、まさかEX?そんなわけないですよね、大尉」

「知らない。でも、EXなら少佐なんて地位に甘んじてるとは思えない。カマかけじゃないかしら」


く、くそ!!

EXだとばれるのはまずい!!

何故か。

それは簡単。EXとは0か100かのどちらかの特殊能力者たちだからだ。

0なら魔術が一切つかえない代わりに、魔術関連の能力を受け付けない。つまり、魔術が効かない体質なのだ。

それに引き換え、100の場合。最悪である。“魔法使い”に類するものとして扱われる。

“魔法使い”と魔術師の違いは簡単だ。


魔素が無くとも思い通りに魔術を使えるのが、“魔法使い”。

魔素がないと何もできないのが魔術師。


ようは魔法使いは魔素ではなく自分から放出される魔法素を扱う。

根本が違う。


だからEXは危険視されるとともに重用される。

国がランクEXに首枷をつけたいのはこれが理由。


俺は残念ながら後者。そう、本来は“魔法使い”と呼ばれる、奇特な存在である。


「儂を殴り飛ばすとは何たることか!そこに直れ!撃ち抜いてやる」

「あ、兄上様」

「やってみりゃいいじゃん」

「ほう!」


がうんと咆哮を上げて火縄銃が撃たれその弾丸が俺の前で掻き消える。


「……儂の主にはふさわしい、魔力だ」

「そうだら?まあ、黙っとりん。余分なことは言わんで」

「はあ」


そう溜息を吐く信長を先行させ10階層目に到達する。


「ここにボスがおるでね。ボスを倒しゃあ、いったん、魔物が落ち着んだわ。気合い、入れりんよ」

「はっ!」

「はい」


ボスは迷宮によって、異なる。F級なんかの迷宮ならゴブリンキングなんかが出来るが、ここは推定S級。

ドラゴンが出てきても驚かない。


「ぐぉおおおおおお」


地を這う低い声。


そして、走ってくる鋭い角を持つ地竜。


「力の見せどきだに」


家康にそう言うと彼はすらりと太刀を抜く。


「ソハヤノツルキウツスナリ」


そうっ言って刀を振るうと斬撃が飛んで一刀両断。

地竜はぶった切られて真っ二つになる。

と同時に魔力が家康に還元される。


「家康君、強くなったねー」

「嫌味は好かんに」

「ふん。このように、ダンジョンボスを討伐すると、魔力が還元されるんだわ。ヒトであればかなり強くなるもんで魔力判定が上がる場合が多いんだわ。使い魔の場合、格が上がるだけどこいつらにどこまで通じるかは、知らんが」


岡田と深雪はぽかんと家康を見る。


「じゃ、出るに」

「はい、じゃあ、俺が先行します」

「いや」

「え?」


疑問符を浮かべる岡田の肩を掴む。


「こっちだに」


ダンジョンボスが発生した地点に向かう。

そこにはぷかぷか浮かぶまあるい水晶。


「これに触れると入口に戻されるんだわ」

「はあ……」

「いくぞ」

「はい!!」


水晶に触れると一瞬で地表に立つ。

そこは自衛隊員が銃を構えこちらを見ていた。


「島風少佐、ご無事で」

「うん。閉じたもんで、魔物はあんまり出てこん。でも、ゼロになるわけではないで駐屯は必要だで豊川基地から派兵することになる。連絡を」

「はっ!!」


部下がトラックに向かうのを眺めつつ、俺は煙草に火をつける。


「少佐、そちらの二人は?」

「こっちが徳川家康、こっちが織田信長。よろしくねー」

「は?」

「なんだん、難聴かん」

「儂の前で腰抜けの態度をとったら死ぬぞ」

「殺すな殺すな」


ひきつる部下の顔に俺は笑いかける。


「英霊とて使い魔だで命令外の事では殺しゃあせん、気をつけりんね」

「はひぃいい」


部下たちがキラキラした目で二人を見ている。


「ふあああ」

「少佐たちが潜って25時間経ちましたが、地上では時折出てくる魔物だけでした。長野県からエルフが出てくることはなかったです」

「そうかん」

「え!?25時間も経ってたんですか!?」


岡田が驚いて俺に詰め寄る。


「そうだに。ダンジョンじゃあ常識だで、覚えときん。25時間なら早い方」

「ひぃいいい」

「情けなぁにゃーおみゃーは」


織田信長は嗤いながら煙管をふかしていた。



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