第九十八話……モンスター用社会適合テスト!
そして、すぐに驚いた。第一問目の禁忌問題、『モンスターは、どのような理由であっても、人間を殺してよい』から、全員が✕、つまり適合だったのだ。
さらに、過去に挙がった同様の問題で、命の天秤系問題である『モンスターと人間のどちらかしか助けられない状況では、人間を助けるべきである』は全員○、一問目と対になる『モンスターは、適切な理由があれば人間を殺してよい』も全員○だった。ちなみに、現時点では、これらの回答は適合か不適合かは決めていない。
それにしても、後者はともかく、前者は答えが分かれると思っていたのだが、『モンスターは復活するから、人間の命よりも軽いだろう』という考えが前提にあるからこその回答なのだろう。
また、『モンスターは、人間との関係を良好に保つため、定められた規則を遵守しなければならない』も、当然のごとく全員◯だった。
これは、ひょっとするとひょっとするぞ、と私達出題者側が肌で感じたところで、読み上げを全問終えた。
「正確に採点する時間はないから、ざっとだが……。適合者が普通にぞろぞろいるな……」
「おお……! わしは嬉しい……! 本当に嬉しいぞ!」
プレアは涙を流して歓喜していた。
それは当然だ。私だって感動している。なにせ、三つ目のハードルを軽々と越えてきたのだから。
Sちゃんとは、もう友達のような感覚にもなってるし。
「これは……全問解説したあとに、予定にはなかったが、もう一回テストをしてみたいと思ってきたな。元々、早い進行で来てたから問題はないが……。責任者のプレアは、どう思う?」
「是非ともやろうではないか! モンスターの底力をもっと見てみたい!」
それから解説を始め、時には議論を交わし、全問を終えたところで、再テストとなった。
ペースを早めても全く問題がないほど、モンスター全員が理解を深めていることも分かる。
そして、再テストが終了した。
「よし! 正確な採点の必要もない! 全員満点で適合だ!」
たすくの言葉で、『おおー!』と広場に歓声が沸き、全員の思いが一致した瞬間だった。
「皆さん! 本当にありがとうございます!」
「もう畏まらなくていいぞ。プレアの思いも願いも俺達には十分伝わった」
「そうだよ! あとは私達が行動するだけ!」
「たすく、このあとの予定は?」
「その前に、Tくんが回答時に思い浮かんだモンスター側の要望を共有しておこうか。
遠慮することはないんだ。俺達には、上下関係も主従関係もないんだから。それが手を繋ぐってことだよ。そして、冷静に話し合えばいい。それが平和なんだから」
Tくんが改まって姿勢を正した。
「ありがとう、たすく。では、遠慮なく……と言っても、たすくも分かっている通り、迷っていたことなんだ。
俺達は、本能的に魔壁の側にいることが心地良いと感じる。それを目の前で邪魔されるとどうなるか分からない。もしかしたら、暴れてしまうかもしれない。
しかし、それは洞窟外に行くことで解決できる。とは言え、いつでも魔壁に来られるようにしてほしい、と思ったんだが、そうすると洞窟外で過ごすモチベーションが下がらないとも言い切れない。『いっそのこと、遮断すべきか?』とも思っていたから迷っていた。まず、モンスター達はどう思う?」
Tくんの疑問と要望は十分納得が行くもので、私は再度感心した。
そして、モンスターからは、どちらの意見も出て、そのどちらでもない、それこそ『どっちでもいい』や『たすくに任せる』という意見も出た。
「こちらでは聞いての通り、色々な意見が出たが、たすくやプレアはどう思う?」
「じゃあ、俺から。本能は否定しないけど、どうなるか分からないとか暴れてしまうとかは違うと思うな。俺達がBくん、Tくんとここで初めて会った時、俺は問答無用で襲われると思ってたんだよ。それが本能だ。
でも、そうじゃなかった。完全に理性が上回っている証拠だ。
そう思ってしまう原因は心当たりがある。この洞窟内では娯楽がほとんどないんだ。人間との戦闘を娯楽としていても不思議ではなかったんだが、死の恐怖が勝ってそれどころではなかった。
だから、ここが唯一、身も心も休める場所だった。それを壊されたり汚されたりしてはたまったものではない、というのが今までの考え。
これからは違う。外に出れば、色々な娯楽があり、色々な経験ができて楽しめる。リラックスできるところもある。そう考えると、ここも娯楽の一つだ。モンスターだけをわざわざ立ち入り禁止にしなくてもいいと思う。
モチベーションの話があったが、洞窟外に半強制の仕事を残しておくと、否が応でも戻らざるを得なくなる。責任を感じて。
でも、それは決して嫌なことじゃないんだ。また、ここに来られるように頑張ろうって思えるから。モチベーションの浮き沈みなんて普通のこと。その繰り返しだよ、人生は。
それを分かりやすく説明するためにうってつけの『洞窟のイドラ』をあとで教えるよ」
「わしもたすくには完全に同意する。加えて、もう一つ。実は、外に出ると行きたい場所が新たにできる。ラピスの故郷である泉の森が南東にあり、それこそ、そこに本能的に惹かれる。同じく魔壁の効果があるとされる場所じゃが、折を見て、遠征で休みに行ってもよいと思う。
とは言え、たすくが言うように、ここではやりたいことが山程できるから、それも頭の片隅に追いやられる。そういうものなんじゃ、わしらモンスターは。やはり、最大の興味は人間じゃよ」
「なるほどな。今の二人の意見を聞いて、納得できなかったヤツはいるか? 遠慮なく言ってくれ。……。では、その通りにしようか。感謝する」
「いや、いいんだよ。それが俺達にとってもベストなんだから。じゃあ、この話の流れで、俺達からも一つ希望をいいか?
問題にもそれとなく入れていたが、この広場で人間の子どもを産みたい。理由は、人間の出産にはリスクがあって、リラックス効果と回復効果が最大になるようにしたいからだ。もちろん、そこにいるリズや回復魔法を使える外部の人間にも付いてもらう。
今回の場合、一人の出産に対して、俺達含めて十五名から二十名が専用機材と共に、広場の片隅を使わせてもらうことになる。今後も行う場合、俺達が付き添わないこともあるから、その分だけ人数が減る。
俺とプレアが今言ったことを想像した上で、それに協力できるか、あるいは邪魔だと思うのかを聞いてみたい。協力と言っても、何もしなくていい。見るだけでかまわないし、見なくてもいい。でもまぁ、無事に出産できるように応援はしてほしいかな。それが希望。
時期はまだまだ先だから、結論を急がなくてもいい。ちなみに、こんな感じになる」
例のごとく、詳細書に描かれた出産想定図を、映像としてステージ上部に映した。もちろん、モンスター達がまた驚いた。
「……。俺の意見から言おうか。俺は一度見てみたい。人間が生まれるところを」
「私も!」
「俺もだ」
「お、俺も絶対に見たい! 俺はモンスターが魔壁から出てくるところが好きで、誰かが死んだら、真っ先にここに来てたんだから! 最近は全然なくて、がっかりしてたんだ!」
それまで影を潜めていたRDくんが、自分の趣味を暴露した。
まぁ、確かに私も見てみたいかも。魔壁からどうやってモンスターが出てくるのか。でも、もう見ることはないだろう。残念。
その後も、モンスター達は続々と賛同の声を上げ、意見をまとめる必要もなく、結論が出た。
またも、四つ目のハードルを難なく超えてしまった。
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