第九十七話……いよいよ始まる!
それからプレアは、『モンスターと人間の共存社会実現方針』のベースとなるモンスター用社会適合テストについての説明を始めた。
これは人間とモンスターの常識を擦り合わせるためであり、間違った答えでも落ち込むことはないと補足もして、特に異論はなかった。
実際の進め方は、全てのモンスターに仮の名前を付けてから、ラピス達が社会適合テストを受けた時と同じように、私から問題を読み上げ、どのモンスターがどのように答えたかをたすくが記録していくことになっている。
プレアの説明が終わると、たすくが記録用紙を持ち、モンスター達に名前についての説明を始めた。
「名前はアルファベットと大まかな性別で仮に付ける。熊系モンスターなら『ベアー』の『Bくん』、トロール系なら『Tくん』、スライム系なら『Sちゃん』という感じだ。ドラゴン系のように複数いる場合、レッドドラゴンなら『RDくん』とする。申し訳ないが、今はそれで我慢してほしい」
「私、ずっと『Sちゃん』でいいよ!」
「俺も別に『Tくん』でいいんだが……」
「もしかしたら、名前に『興味』を持つかもしれないからな。ちゃんと想いが込められていて、意味がある名前の方が嬉しいんだ。プレアの名前だってそうなんだよ。すぐに分かるさ」
「あ、そうなんだ」
「ふーん……想いと意味が嬉しいか……。まぁ、そうなのかもな。『楽しさ』『嬉しさ』以外にも重要な感情がありそうだな」
「多分、『好き』とか『愛』だな。人間のカップルが死ぬ間際に言っていた」
「Bくんの言う通りだ。今みたいな情報共有や議論をこのテストが終わってからもしていてほしい。心配事が出てきても、そこで諦めずに、どのように解決すればいいかを考えるんだ。きっと楽しいよ。明日には人間に変身できるようになってるかもな」
「うん、分かった!」
「今、みかが持ってる紙に文字が書いてあるんだろ? もし、一言一句その通りに読んでくれたら、ついでに俺達の文字の学習にもなるんじゃないか? まぁ、全て記憶できればの話だが。
俺も記憶力には自信があるが、そこまではできそうにないな……。分担するのもありか」
「誰か記憶力に自信があるヤツいるか?」
Bくんの問いかけに、意外にもSちゃんが即座に立候補した。
「記憶力じゃないけど、私なら体の中に気泡を作り出して、そのまま再現できるよ!」
「そうなのか……。初めて知ったが、すごいな……」
「じゃあ、ちょっとやってみせてくれ。『そのまま再現』がよく分からないから」
Bくんの促しに、Sちゃんは中列から私の目の前まで体を伸ばして、問題用紙をじっくり見始めた。彼女の体もかなり大きいので、それでも元の場所での体積は十分に維持している。
「あっ! Sちゃんの言った通り、細かな気泡がいくつも湧いてきて文字になってる! しかも、思ったよりコンパクトに! これなら全文どころか、分厚い本だって余裕だよ!」
『あっ! Sちゃんの言った通り、細かな気泡がいくつも湧いてきて文字になってる! しかも、思ったよりコンパクトに! これなら全文どころか、分厚い本だって余裕だよ!』
「え⁉️ 声も再現できるってこと⁉️」
「そうだよ!」
「確かに文字と声がセットならいつでも学習できるが……」
「一体どうやってるんだ? 仕組みが全く分からないぞ」
「俺でさえ分からないよ。現象を説明するだけなら、体内で化学反応を起こして、気体を作り出し、蒸気圧と外圧を等しく保ちながら文字を作っていて、体表面で受けた音のフォルマントを、気泡の大きさの違いによる破裂音で再現しているんだけどな。おそらく、複製も可能だろう」
「すごいよ、Sちゃん!」
「えへへ……。『これ』がそうなんだ……。褒められると『嬉しい』んだね!」
モンスターのいくつもの知恵に私達は感動しつつも、そろそろ社会適合テストを進めることにした。
おせっかいスキルで各モンスターの答えを読んでいけば、モンスターが他のモンスターに釣られることもない。例えば、『Tくんの頭が良さそうだから、Tくんと同じ答えにしておこう』、みたいなことがないのだ。
テストの前提としては、モンスターが人間と暮らすためにはどうすればいいかを本気で考えながら答えてほしい、とみんなには説明している。常識の擦り合せとも言ったが、どの点をどこまで歩み寄れるかを見るためでもある。
つまり、私達が王族用学習前社会適合テストを試しに受けてみた時のように、『現在の考え』を前提にしていないことを意味する。
これは、すでに社会の一員である人間と、これから社会に馴染むモンスターとでアプローチを変える必要があるだろうとの考えからだ。未成年者用の社会適合テストを作る際も、今回と同様になるだろう。
それから間もなく、全モンスターに仮の名前を付け終わり、モンスター用社会適合テストが始まった。
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