第九十四話……高いハードル⁉️
「じゃあ、ここにある鉱石の中で、最も硬いものはどれだ? もし、お前達にも砕けないのであれば、それを砕くことで、俺の力の証明になるんじゃないか?」
「……。じゃあ、あれを砕いてみろ。あそこにある青い石だ」
「あれは、あらゆる遠隔攻撃を吸収し、近接攻撃も効かない。最強の石だ」
見ると、魔壁に向かって右上の方に、その青い鉱石があった。
「分かった。その前に一つ確認できたことがあるんじゃないか? まだ見ぬ鉱石の情報を、お前達から聞き出すことができた。そして、色々な検証にチャレンジする賢明さをお前達が持ち合わせていることも知れた。
つまり、俺の頭脳を確認できたはずだ」
「……。なぜわざわざそんなことを言うんだ? そんな必要はないだろ」
「…………。時間稼ぎか? いいから早くしろ」
「だって、一瞬だし。ほら」
『なっ……!』
その場に集まった全モンスターが飛び跳ねるように驚いた。実際、地震が起きたほどだ。
なぜなら、たすくが指定された鉱石をその場所から『バキッ』と丸ごと剥がし、さらに半分にするために『ボキッ』と折り、その内の半分を『プシャーッ』と木っ端微塵に砕く。その一連の流れが、瞬く間に行われたからだ。
当然、全て遠隔だ。これにより、この場のモンスター達を一瞬で殺せることが証明できたことになる。
「念のため、硬さを確認してくれ。本当にこれでいいんだよな? 間違ってたら、ちゃんと教えてくれよ?」
「……」
「……」
残った半分の鉱石を目の前に転がされても、まだモンスター達は開いた口が塞がっていない。
やはり、その間にもモンスター達は集まってきており、その状況を見て戸惑ってもいる。
「わ、分かったじゃろう、お主達! この人間の、たすくの力が! しかし、何度も言うように、話し合いをしたいだけなんじゃ! 脅す気などないのじゃ! 今は……」
プレアが最後の言葉だけボソッと言ったものの、モンスター達の間には『そんなことなどどうでもいい。逃げたら殺される』とでも言うような恐怖感が支配していた。
「やりすぎたか? いや、でもなぁ……。普通に証明しただけだからなぁ」
「たすくが冷静すぎて、底が知れないからだろうね。オーラもほとんどないわけだし。ということは、逆にオーラがあった方が安心なんだね。かと言って、ここでみんなのオーラを見せても意味ないけど」
「ど、どういうことだ? オーラをわざと見せていないとでも言わんばかりに……。そんなことができるのか?」
「お前の……たすくの力の全てを教えてくれ! そうでなければ、俺達が何をされているのかも分からず、生きた心地がしない! この広場でもこれだったら、他の場所なら心臓が止まっている!」
「いいよ、全部教える。全員集まったらな。
あと、三体か……。ちょっと遠いから、もう少しかかるな。そう考えると、ほとんどは魔壁近くにいるんだな」
「モンスターにとっては、出入口に近いほど危険だからね。じゃあ、今の内にみんなに整列してもらおうか」
「そ、そんなことも分かるのか……」
「どうなってるんだ、今の人間は……。そもそも、どうしてその女……みかは、俺達を前にして終始平気な顔をしてるんだよ。普通、怖がるだろ」
トロール系モンスターの方は、ちゃんと私の名前まで覚えていてくれて、その記憶力の良さに私は感心し、嬉しくもなった。
まぁ、名前を知っておけば、連携時に誰が誰に何をしてほしいか分かるから、念のために記憶しているのかもしれないが。それはそれで、想像以上に知能が高いと言える。
「ふふっ、そう言えばそうか。確かに、みかはそうだよな」
「あー、そっか。自分でも今気付いた。じゃあ、教えてあげようか。
あなた達以上の化物を見てきたからだよ。それに比べれば、あなた達はかわいいもんだよ。私の体も震えないし」
「……。地獄にでもいたのか……?」
「ぜ、全員だ! 全員の力を教えてくれ! そうじゃないと生きた心地が……!」
「あははは! やっぱり、たすくお兄ちゃんとみかお姉ちゃんは、すごいや!」
「結局、脅しみたいになってしもうたが、この場合は、過程や方法など、どうでもよいことじゃな」
「……うん……面白い……」
「なんとなくは流れが分かるのですが、あとでみかさんに教えてもらいます……」
寂しそうなセレナには悪いことをしたが、私達はすでに希望を抱くことができた。
一つ目のハードルはクリアした。
まだハードルはある。さらに高いハードルだ。
しかし、思った以上に賢いモンスター達を前にして、私は少し震えた。
その震えは、きっと……。
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