第九話……勇者は世捨て人⁉️
「『勇者管理組合』っていう言葉を聞いた時、俺には違和感があったんだよな。そのまま理解するなら、勇者を管理する組織ということになるが、そうなのか?」
「はい。そもそも『勇者』とは、『冒険者』の延長で、セントラルでのみ許される肩書きです。勇者は必ずスキルを持っており、『吟遊詩人』と行動を共にします。吟遊詩人は勇者の功績を記憶及び記録し、後世に伝える義務を負います」
「さっきは、吟遊詩人を『ラプス』と言っていたな」
「はい。勇者パーティーでは、勇者を『ブレイ』、吟遊詩人を『ラプス』と呼びます。個人名では絶対に呼びません。呼ぶと、勇者管理法の『特定勇者の存在の禁止』条項に抵触し、死刑となります。基本的に、勇者管理法のどんな条項でも、破ると死刑です。他の法律のように、懲役や禁錮、罰金などは存在しません」
「とんでもない悪法じゃないか! なんでそんな悪法が成立したんだよ!」
「国から勇者と認められるには、ある程度の強さと、ある程度のスキルが必要ですが、勇者になろうがなるまいが、勇者の名を騙った上、その力を悪用して、周囲に損害を与えるケースが後を絶たなかったからと聞いています」
「……。俺達が『世捨て人』と言われたことも関係があるのか?」
「はい。勇者は、勇者管理法の下、名を捨てることで、その存在が認められ、国からの重い義務を背負い、全てを管理されることで、一定の収入と衣食住がセントラル内で保証されます。『国家の奴隷』と言っても差し支えありません。
人権など、あってないようなものです。実際、勇者を本物の奴隷として扱っている貴族もいるという噂も聞いたことがあります。
つまり、勇者とは自らがその境遇を望んだ世捨て人のことなんです。社会と関わりはあるので、厳密には世捨て人とは言えないのですが、ほとんど揶揄としてそう呼ばれているということです」
「……。俺のイメージする勇者は、国家やそれに留まらず、世界のために冒険して、いろんな謎を解いたり、悪者や魔王なんかもやっつけたりして、みんなから称賛を得るような存在なんだが……」
「私も子どもの頃はそう思っていました。『勇者かぁ、なんかかっこいい! 絶対に勇者になるぞ!』と思い、日々特訓に精を出したりしていました。
親や周囲からは、『勇者にだけは絶対になるな』と言われ、それ以上のことは何も言われませんでした。言えないんです、法律で。
勇者を目指す未成年の意志や行動を明確に妨げる行為は死刑だからです。まぁ、その当時のセリフもラインギリギリなんですけどね」
「……。じゃあ、セレナが『勇者』の本当の意味を知ったキッカケは何だったんだ?」
「十六歳で成人し、それからすぐにセントラルに行ったものの、スキル認定で『スキル無し』と判定された私は、その高い『剣術レベル』であれば、勇者管理組合に入ることができると、別の道を勧められました。
そこで初めて勇者管理組合の存在を知り、法律を知り、現実を知りました。
村によっては、勇者管理組合の存在だけは教えてもいいことになっているらしいですが、それは勇者管理組合の人間が一度でもその村を訪れないと許可されません。
私が生まれ育った村は、そうではなかったようです」
「……。理想と現実のギャップに耐えられず、絶望したから自殺を図ろうとしているとも思えないが。少なくとも、組合の仕事を一年は続けていたわけだし」
「もちろん、それも理由の一つですが……。組合に入った私は、勇者管理法の改正活動を行おうと周囲に呼びかけました。セントラルの内側、それも現場を知る勇者管理組合からなら変えられると思ったからです。
しかし、その望みは簡単に打ち砕かれました。誰一人として、賛同者を得られなかったんです。それどころか、『余計なことを考えるな、するな』『粛々と自分の仕事をしろ』『いつまで子どもでいる気だ』など、様々な人から言われ、『これなら私も奴隷と変わらないじゃないか』と思うようになりました。
『社会人とはそういうもの』と考えようとも思いました。不満を抱えても、それを改善できなくても、そのことを耐え忍び、その中でも幸せを見つけ、生きて行くのが人生じゃないかと。
しかし、その考えも『あるコト』をキッカケに吹き飛びました」
「…………」
セレナの表情が段々と曇り始め、悲しみとも怒りとも取れるような、今にも泣き出しそうなものになっていった。
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