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異世界<おせっかい>人情ラプソディ~いや、『おせっかいスキル』で無双って何⁉️~  作者: 立沢るうど


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第八十八話……解決不可能な課題

 それから、コーディーさんが防衛大臣就任の感謝の言葉を言いに国賓部屋に来て、間もなく、サーズさんも妊娠判定報告の感謝の言葉を言いに来た。


「陛下、この度は誠におめでとうございます!」

「ありがとう、コーディー。普通なら、まだどうなるか分からないから油断はできないが、おせっかいパーティーの滞在中は、リズの所に毎日訪れていいということだから、比較的安心できる。

 さて、ユアから聞いた魔壁前出産のことだが、前向きに検討したいと思う。コーディーがいて丁度良かった。

 最低限必要な医療体制と設備について、防衛省と厚生省で四日後までにまとめ、その次の日の朝までに、おせっかいパーティーに複製資料を渡してくれ。

 原本はビルに提出だ。複製が間に合わない場合は、そのことを伝えた上で、おせっかいパーティーに原本を渡してくれ。

 魔壁までの道中は、今のところ考慮しなくていい。あくまで、出産場所が洞窟内魔壁前に置き換わっただけという認識でかまわない。

 今回の場合、どちらの省が主導して資料を作成したかはどうでもいい。私の意志を一言伝えても、頑なにそれを訴えってきたり、根回しで動いたりした奴はビルに報告しろ。

 ただし、どちらかの怠慢で主導せざるを得なかった場合は、その限りではない。それもビルに報告だ。

 他にもお前達側で目的があれば、この際に利用してかまわない」


「はっ! 承知しました! 直ちに両省に指示いたします!」

「おせっかいパーティーにおいては、受け取った資料が原本の場合は、すまないが使い終わってもできるだけ綺麗に保管し、私かビルの所に持って来てほしい」

「了解!」


 たすくの返事で、コーディーさんは退室した。


「関連で二人に聞きたいことがある。生まれてくる子どもが、男か女かは分かるか?」

「その時に、私が見たら分かると思うよ」

「性別の判定は、妊娠中期以降だな。超音波検査なら、早くて三ヶ月頃、四ヶ月頃には大体分かる。五ヶ月頃には完全に分かる」


「そんなに早く分かるのか。色々な準備はあるにしても、そこまで早くなくていいが、分かった時点で教えてほしい。もちろん、セントラルを優先してくれてかまわない」

「いいよ。本当は染色体検査とかもやりたいんだけどね。流石に、おせっかいスキルでも無理だよね」

「むしろ、みかの方が分かるんじゃないか? 全ては分からないにせよ、実際に胎児が見えるんだから」


「どういうことだ?」

「染色体や遺伝子という人間が生まれ持つ設計図のようなものに異常があった場合、先天性疾患として、胎児の形態や臓器の機能に現れるんだ。両親の遺伝子や、その組み合わせ、年齢にも依存する。

 それを出生前診断で判定し、両親が堕胎するかを決めることができる。生まれてみないと分からないこともある。

 昔は、異常が認められたら、生まれた直後に産婆が首を絞めていたなんて話もあるな。真実かどうかは調べても意味がないから、俺は知らないけど」

「私はハッキリ言うよ。障害児と分かったら堕胎するか、生まれてから分かったら、即座に殺した方が良いと思う。そのまま生かして、いらぬ苦労をさせるのは親のエゴだよ。親だって、胸が引き裂かれるほど苦しい。だったら……同じエゴなら、親の責任で殺した方が良い。

 じゃあ、今生きている障害を持つ人達はどうなのかって言うと、それはまた別の話。

 でも、自分の子どもは天使だと自分に言い聞かせるのは間違ってる。それは、精神疾患の一種だよ。『自我防衛機制』と『合理化』から来る現実逃避、認知的不協和、そして強迫性障害。

 それに、外野は無責任に言いたい放題だからね。そんな意見は聞くだけ無駄。もちろん、今の私の意見もだけどさ。

 ただし、『障害』についての言葉遊びは、バカの典型。『害』は平仮名にしましょうとか『ハンディキャップ』と言いましょうとか。文句つける方も対応する方も。

 まぁ、そう言う私も、実際に妊娠してみたり、産んでみたりしたら、意見はガラッと変わるかもしれないけどね。

 それだけ母性の目覚めはすごいんだってことも分かってる。そうじゃないと、私達人間はこの年齢まで生きられないから。

 どんなことがあっても、親は子どものことがかわいいんだなって思うよ。もちろん、そうじゃない家庭もたくさんあるけどね」


「二人ともありがとう。なるほどな……。みかの言ったことは、俺も考えたことがある。国家として、王家として、そして自分が親になった時にどうするべきかを。

 俺も正直に言おう。今のみかと同じ意見だ。ただ、王家とそれ以外の国民とで、考え方が多少異なるとは思う。

 王家の場合、必ず王位継承の問題が絡む。もちろん、程度にはよるが、圧倒的な覆せないハンデを背負った上で、絶対に王位には就けず、王になった者、あるいはなろうとする兄弟姉妹に問答無用で殺されるのは、あまりに悲惨すぎる。さらに、それまでずっと怯え続けなければいけないんだ。

 もちろん、俺とユアの責任と教育によって、それが回避できるとしても、絶対ではない。教育の失敗など山のようにあり、それを俺達自身が経験しているからだ。

 そして、税金の問題もある。むしろこちらの方が大きい。国家、国民のために何もできない、あるいは何かできても十分にできない者を生かすために、しかも自分より遥かに良い暮らしをしている者のために、血税が徴収される。そのことに心から納得できる国民はそういない。納得できると言う者がいれば、それは金持ちか真の偽善者だ。

 国家持続方針には、国民が障害を負った場合についても記載してあり、皆の熱い議論から導き出した答えの一つだろう。それは素晴らしい結論だったし、私も迷うことなく承認した。

 なぜなら、十分なカウンセリングや医療でも手の施しようがなかった場合の安楽死とセットで考慮されていたからだ。さらに、自らの責任で障害を負った者と他者から障害を負わされた者の、いずれも考慮されている。

 これは、上辺だけの基本的人権が存在しないことを意味し、サウズ国が偽善国ではないことと同義だ。

 そもそも、人権など世界に存在しないというのが俺とビルの意見だった。セントラルの勇者がその典型だ。だから、あるとすれば、国家のために生きる国民に対して、その国家から与えられた権利でしかない。その国で害を為すだけなら、当然排除される。

 国を捨てれば、誰も面倒を見てくれないのは当たり前。国からすれば、何の得にもならないからだ。仮に、『人権を尊重して俺達を保護しろ! ただし、こんな国の義務なんて負えるか!』というような奴がいたら、どこの国も門前払いだろう。

 逆に、そんな奴らを受け入れたり、野放しにしていたりする国があったら、胡散臭すぎるし、真面目に言っているなら、真性のバカか、誰かに騙されているとしか思えない。足を引っ張る人間や国なんていくらでもあるからな。

 この考えは俺が王族だから出たものだが、もし王族じゃなかったとしても、国のことを考えれば、自然とこの答えになると思う。

 しかし、重度の障害を持つ子どもがいる母親のことを考えると、本当に心が痛む。男だからそう考えるのだと言われても言い返せない。その点は想像するしかないんだからな。

 ただ、我が国にはそういう子どもは『いない』とされている。おそらく、いや、間違いなく、早期に間引いている。だが、俺も含めて誰も指摘しなかったし、捜査でも見過ごしている。

 すでに死んでいたと言われれば、それ以上追求しないんだ。障害を持っていたから生命力が弱かったのだろうという言い訳がそのまま通る。明らかに首を絞められているのに。

 腹を痛めて産んだ母親も含めて、周囲がそれで納得できている証左でもある。それが、たすくが言った産婆の話なのだろう。

 この歪みは新生サウズ国で是正される。ただし、知っての通り、その間引きが問題ない方向に。

 その場合の見舞金および出産奨励金は十分に用意し、国家としては人口増加に励んでもらい、王家とその内の一人の人間としてはお悔やみを申し上げる次第となる。正直、俺が直接渡しに行って言いたいぐらいだ。『国家のために悲しみを背負ってくれて感謝する』と。『感謝なんて余計なお世話だ!』と言われるだろうがな。

 貧困家庭へのフォローについては、公開処刑での俺の発言を思い出してもらえれば、言わずもがな。

 俺はたすくの意見が気になるな。みかもそうだと思うが」

「……。もちろん俺も考えたことがあるよ。以前、障害者介護のボランティアに参加しようと思ったことがあったんだ。でも、案の定、参加しなかった。

 俺はその時、改めて『助ける』って何なんだろうって考えたんだよ。『少しでも助けになれば』と言って助けて、その結果、何が残るんだろうって。

 そのことは、この世界に来た時に、みかにも指摘された。『その場限りで、何の解決にもならなかったら、苦痛を味わわせてるだけ』って。

 その時は、苦痛は時間が癒やしてくれるってみかに言ったんだけど、障害者はその苦痛をとうの昔に通り過ぎているか、そもそも苦痛を感じないほどの障害で、それでも日々、周囲の助けを必要としなければ生きられない人達だ。

 しかし、その『助け』は日常生活の『手伝い』であって、それがまさに『介護』であって、俺じゃなくてもできるものだと思ったから、参加しなかった。ちなみに、『助け』と『手伝い』の言葉の違いについては、言語学の論文もあったりする。

 介護に関しては、レベルによっては『助け』に相当するけど、日常生活の大きい範囲で捉えると、『手伝い』の延長と言える。

 障害者の障害そのものを取り除きたくてもできるわけがないし、言ってくるわけもない。その意味でも参加しなかったんだ。絶対に解決できない課題の前にノコノコ行きたくない。邪魔するだけだから。

 そういう考えの下で、俺の『助け』は、その人の目の前にある困難な課題を解決するためにするものだと、その時にハッキリさせたんだよ。

 そう、俺の『助け』は、俺の『エゴ』なんだよ。『利己主義』を意味するエゴイズムでもあり、『自我』を意味するエゴでもある。だから、言行不一致の偽善者なんだ。

 じゃあ、どうしても解決できない課題を目の前にしたらどうするか。

 その答えは、『俺は何も助けられないけど、いくつかの道を示す。あとは、その人に任せる』とした。

 出生前診断の話も、考え得る選択肢を提示するし、安楽死についてもその選択肢の一つ。『処刑絶対反対!』と言わないのもそう。これは、サーズがいない時に、思想を押し付けないって話でも言った。

 逆に言えば、全部自分でやってしまったら、『助け』にならない。それは、自分の課題にすり替えて自分で解決したことになってしまうから。つまり、過程と結果の両方が『助け』でなければならない。

 だから、俺からどうするべきかは言わないんだ。フォーリエに『死ぬべき』と言った時も、その考えがあったから、二律背反になってしまった。本当に最終手段なんだよ。

 だから、選択肢が出尽くして、その上でその人が決断したことについては、『そうだな』としか言わない。でも、大体は俺の考えと同じだから、それでいいんだ。その考えは、あくまで『こうかなぁ』っていう程度だし。

 でも、雑学的な知識を披露する時は、自分の考えを混ぜてるかな。あまり意識してないから、そうじゃないこともあるかもしれないけど。

 もちろん、自分が主体の時は、自分の考えで行動する。俺に任せてくれた時とか。

 話が逸れたけど、結論を言うと、みかとサーズの意見に、今のところ俺も賛同するってことかな」

「なるほどね。今のたすくの成り立ちが分かった気がする。

 じゃあ、あとはユアさんがどう考えるかってことだけど、聞く時はサーズさんの意見は先に言わないで聞いた方が良いね。意見が違った時は、そこから冷静に議論して、サーズさんの意見を通せばいいよ。

 でも、ちゃんとユアさんの正直な気持ちを聞き出して、共感してあげないとダメだよ。もし、悲しい選択を迫られたら、傷付かないわけないんだから」


「ああ、そのつもりだよ。たすくもありがとう。では、ユアが堕胎する場合は、たすくに頼んでもいいかな?」

「ああ、いいよ。妊娠何週目だろうと、俺が胎児を殺して引き摺り出す」

「……。サーズさん、意地悪だね。まぁ、この世界の医療技術を考えると、ユアさんにとっては、それが一番安全だから仕方がないけど……。

 たすくもあえて酷い言い方をした。自分で判断せずに他者に任せた自分の責任として」


「すまん、たすく。試したわけじゃない。たすくなら絶対にそう言うと思ったからだ。自分の責任ではないのに、自分の責任にしてしまう。それがどんなにたすくの心を傷付けるものであっても……。

 俺はリズの言っていたことが気になっているんだ。リズとは違う種類の異なる黒い霧がたすくに入っていて、みかが言うように、偶に黒い霧が出てくるらしいが、元々のものに加えて、たすくが傷付く度に新たに生成してしまっていて、それが溢れているんじゃないかと。そして、それを押さえ付けているだけ。

 どんどん溢れやすくなって行き、いずれはどうなるか……。それを悪魔と呼んでいるが、具体的にはバッドヴェノムドラゴンを遥かに超えた存在であることは容易に想像できる。

 その際、たすくが無事ならまだいいが、たすく自身が変化した場合、あるいは、たすくのスキルがまともに使えない状態の場合、冗談抜きに世界は終わる。

 ノウズ地方の最強の冒険者に依頼することも考えられるが、それも確かな方法ではないし、甚大な被害は避けられない。

 何より、俺の親友を、俺達の英雄を、そんなことにはさせたくない。

 そこでお願いだが、ここを出発するまでに、たすくの責任で、それを防止するための対策案をまとめて、俺達に共有してくれないか? 一本釣りにならないように、課題の分析から行ってほしい。それが妥当かどうか議論したい。

 対策案で、みか達に頼るのであれば、その具体的な方法を明示して」

「そうだな……。分かったよ。そんなに俺達にここにいてほしいならそう言えばいいのに……」

「え、そうなの?」


「バレたか。でも、その気持ちはこれっぽっちにも満たないさ」

「ああ、分かってる。本当に俺の親友でいてくれてありがとう。嬉しいよ、サーズ」

「……今の茶番、いる?」

「男の人にしか分からないやり取りなんでしょうか」

「男のロマンだよ、きっと! みんな男のロマンが大好きなんだよ! ロマリじゃないよ!」

「どういうことじゃ? 『男のロマン』と『ロマリ』ってそんなに似ておるか?」

「…………ラピス、不思議……」


 そう言えば、ずっと確認したかったことをしていなかった。みんな人間の姿のままだったからなぁ。

 でも、それも後回しだ。


「じゃあ、問題作成の続きをするから」

「ああ、悪かったな。忙しいところ。でも、実務ではよくあるんだ、これが。横槍が入って、自分の仕事が全く進まないってことが。途中で会議なんか挟まったりして」

「あるある。だから、仕事の納期を決める時は、『マージン』を考えないといけないんだよな」


「……」

「俺は城から直だから、通勤時間の分だけ仕事に回せていたが、街から通勤してる同僚は、城に着いた時点で疲れてるから、さらに勿体無いと思ったな」

「わざわざ勤務地に近い場所に家を借りてる人はいたな。でも、そこまでして仕事を優先してくれる人は、雇用主からすればありがたいよな。逆に、精神的に参る人もいたけど。休みの日の日常生活が通勤や仕事みたいに錯覚して」


「……」

「労働時の精神ケアも考慮したいんだよな。それこそ、忙しすぎて鬱になる者が多くなってきていたから」

「それも大事だが、その状態になるのはパワハラが大きな点を占めてるんだよ。その調査が必要かな」


「……」

「セクハラもそうだが、パワハラもか。上司からの圧力ってことだな。他のハラスメントは?」

「色々ある。最近はありすぎて、それ自体が問題になってるな。『エアハラ』なんていうのもある。職場の気温調整を考慮せずに体調不良者を出してしまう、みたいな話。あとは……」


「モラハラぁ! 仕事の妨害、邪魔をするバカ達!」

「流石、みか。やっぱり、共通認識なんだな」

「ハラスメントの多くは、無自覚でしてしまうからな。だから、予め研修が必要なんだ」


「無自覚すぎるでしょ! この二本の横槍達は! たすくはいいにしても、サーズさんはヤバいからね!」

「大丈夫。俺のはネタだから。やってみたかったんだ、ネタを。たすくは本気だろ?」

「もちろん、俺もネタだ」


「いや、実際に邪魔されてるから、ネタになってないんだけど……。もうサーズさんにも手伝わせるから!」

「本当に流石だな。みかだけだよ。俺をこき使うのは」

「あんまりみかの言うことを聞いてると、ユアさんに疑われるぞ?」


「あ、おせっかい!」

「よし、手伝いは中止しよう。俺がすべきことではなかった。むしろ、邪魔するだけだった」

「上手いな、サーズ」

「何も上手くないんだけど……いいから、仕事しなさい!」


 私は停滞した仕事と迫る納期に板挟みになり、少しだけ焦った。今日は残業かな……。



 いや、女子高生なんだけど!

「面白かった!」「つまらん……」

「続きが気になる!」「次回作に期待!」

「おせっかいすぎ!」「言うほどおせっかいか?」


と思った方は、以下の「☆☆☆☆☆」から、応援をお願いします!


星一つであっても、皆さんの反応が大変励みになります。

星五つであれば、なおのこと!


ブックマークもよろしくお願いします!



最後に、本話をお読みいただき、ありがとうございました!


Xアカウント @tachizawalude

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