第八十七話……スキル検証!
「…………。あ……何これ……。普通に文字で表示された……。『無関心』の下に、『―私の声』って。ユアさん、喋ってみてくれる?」
「…………」
ユアさんは、口をパクパクしている。
「あー、『声』の無関心だから何も聞こえないのか。『声質』の良し悪しとかじゃなくて。それなら、『声の大きさ』とかじゃないとダメなんだ」
「じゃあ、『声の大きさ』になったことを確認してから、『あー』で段々声を大きくしてみてくれるか? 小声から。俺も声の正規化は無効にした方が良いな」
それから、私が『声の大きさ』を確認し、ユアさんに合図を送った。
「ああああああああああああ」
「全部一定になるんだね。小声の場合は、それも無関心にしないと聞こえちゃうってことか。二つの要素を無関心にできるかも試した方が良さそうだね」
「ちょっと面白くなってきたな。組み合わせれば、色々なことができそうだし、逆に一言で表せることもあるかもしれない」
それから私達は、不明な点を明確にするべく、検証を進めて行った。
そして、無関心スキルについて、以下のことが判明した。
何を無関心にするかは、イメージとそれを表す言葉が重要で、どちらかだけでは要素を無関心にできない。ただし、自分の存在や体の一部分を無関心にする場合は、イメージだけで十分。
無関心要素数に制限はない。と言うより、三十個以上は試していない。
一気に全ての無関心要素を解消することもできるし、一つずつ解消することもできる。
訓練をすれば、切り替えに必要な時間も短縮できそう。
『無関心』を無関心化することもでき、その場合は『興味津々』になる。
ユアさんを視界に捉えないと無関心にならない。
また、一度無関心になった場合、ユアさんを視界に捉えた状態でそれを解除しないと、そのまま無関心状態が続く。
ユアさんに関係なく、相手が自己完結できる場合も無関心にできる。例えば、『声の大きさ』は、その相手がどれだけ大きい声を出しても、その周囲の迷惑を顧みない厄介者になることを含む。
ユアさんは、自分で自分のことを無関心にはできない。
現時点では、自分ともう一人だけを対象に、無関心化できる。無関心要素数も倍になることは確認済み。これも訓練で人数を増やせるかもしれない。
人間だけでなく、モンスターにもリズにも効果がある。
ちなみに、ラピス提案の『言葉』は、『言葉の卑猥さ』を無関心にする必要があり、プレア提案の『衣服』は、『身体の露出』を無関心にする必要がある。
『言葉』だと何を言っているのか分からなくなり、『衣服』だとそのデザインに関心がなくなるだけだったからだ。
さらにそれらは、『猥褻行為』に集約できることも分かり、『自分の猥褻行為』と『他人の猥褻行為』に分割できることも分かった。ただし、その場合の『自分』とは、ユアさんのことではなく、『周囲の人間等』であることには注意したい。また、『他人』も第三者ではなく、ユアさんともう一人に限定される。
ちなみに、『他人』の場合、モンスターは含まれないので、『他者』とするのがベストだろう。
このことと、前述の自己完結性から、例えば『猥褻行為』だけでは、ユアさんの預かり知らぬ所で、他者がとんでもない目に遭ってしまうため、限定修飾語が絶対に必要となる。
「やはり、スキルの本質を捉えると、すごい能力を発揮できるんですね。無関心スキルは、一般的には『忍び』スキルに該当させてしまうはずですから、その誤った認識でいくら訓練しても、大幅なスキルアップには繋がらないでしょう。いや、そもそも『スキルなし』と判定されますか」
「それもそうじゃが、わしは皆の発想に感心したのぉ。特に、無関心を無関心にするなど、思い付きたくても思い付けん」
「みかは、ビルのループ刑から発想したみたいだな。プログラミング的には、ループもそうだけど、『再帰処理』っていうのがあるから、思い付きやすい。
自分で自分を呼び出すってことだから、自分で自分を無関心にできるかにも繋がる」
「でも、使用に関しては、注意しないといけないこともあるんだよね。その典型として、無関心スキルは殺人にも使える。しかも、誰かの手を汚すこともなく簡単に。自己完結性を利用して、『自分の生』と『来世への無関心さ』に無関心にして放置すればいいだけ。
だからこそ、無意識化では絶対に使えないように訓練するべき。仮に使ってしまったとしても、すぐに考えを改め直せるようにも。だから、時間の短縮が必要なんだよね。すぐに通り過ぎてしまった人は、そのままになっちゃうから。
もしかすると、その通り過ぎてしまった人を誰かに捕まえてもらうために、無関心スキルの高速多数切り替え操作が必要になるかもしれない。
もちろん、ユアさんの精神も鍛えないといけない。普段のユアさんなら、絶対にそんなことはないけど、鬱状態になったらそう考えても全くおかしくないから。
そういう意味では、嫌なことがあった時の『逃げ』にも使わないようにしたい。それに慣れてしまうと、逆に打たれ弱くなっちゃうから」
「流石、みかだ。よし、ユアさんには別のスキルも習得してもらおう。誰でも習得できるスキルを」
「はい、お願いします! 誰一人不幸にしたくはありませんから!」
それから、たすくのスキル講座が始まり、ユアさんは真剣に耳を傾けていた。
私はその間、資格試験の問題作成を再開し、五問ほど作成したところで、たすくの講座が終わった。
「誠にありがとうございました。この短い間にもかかわらず、皆様のことが大好きになりました。本当に本当に嬉しいです……。と、友達……ができた……みたいで……」
「ふふっ。遠慮しなくても、俺達はとっくに友達だよ」
「そうだよ。たすくは別にしても、私達は友達、もう面倒だから親友ってことにしようよ。私もユアさんのことが大好きになったし、私の『目』で全て保証されてるからね」
「あ、ありがとうござ……ううん……ありがとう……みか……ちゃん……。嬉しい……」
「なんで俺が別なんだよ……と思ったら、みかは『男女間で友情関係は成立しない』という立場ってことか。まぁ、その気持ちは分かる。俺は別だけど」
「ユアさんが完全にフリーならいいけど、万が一があるからね。そうじゃなくても、サーズさんにほんの少しでも心配かけたらダメだよ。もちろん、サーズさんが二人の関係を疑わないにしてもさ。
それは、ユアさんにも言えることだけどね。ユアさんは、そもそも他人との距離の詰め方にまだ慣れてないと思うし。
例えば、サーズさんと喧嘩したからと言って、たすくやビルさんの所に行っちゃダメだよ。物理的にね。絶対にその場で仲直りしないと」
「みかちゃんは本当に優しいんだね。ちゃんとみんなのことを考えてくれて、遠慮なく言ってくれる。早速、私の親友っぽさを見られて嬉しい」
「それじゃあ、みかの言う通りにしようか。別にそのことで今の関係が悪くなることもないし、すでに自然な関係に近いからな」
「でも実は、みかさんも危ういんですよ? たとえ同性だとしても。簡単に心を許してしまいますからね」
「うふふっ、セレナちゃんの言う通り。サーズ様もたすく様もいらっしゃらなかったら、みかちゃんのことを恋愛対象として見ていたかもしれません。いえ、きっとそうでした。それだけ魅力的な女性ということです」
「みかはモテモテだなぁ」
「でも、『色々首を突っ込んで、邪悪な世界に立ち向かっていたら、いつの間にか英雄になって、女の子にもモテモテになっていました。』って言ったら、たすくのことだからね」
「あまり変わらないような……。でも、みかさんはそのさらに上を行ってますからね。男にもモテモテで。しかも、世界でも類を見ない優秀な男達に」
「た、確かに! みかちゃんが一番危険な存在です! サーズ様とビル様と私を籠絡させて、我が国を完全に支配できる器です!」
「無自覚だしな」
「お前達が言うな! 友情はどうしたの、友情は! やっぱり、女の敵は女か!」
「あ、やっぱりサーズ様のおっしゃる通り、みかちゃんのツッコミは、とても気持ちが良いんですね。ごめんね、みかちゃん。本当は大好きだよ~」
「だな」
「……。コ、コイツら……」
「……よしよし……。私もみかのこと大好きだよ……」
「私もみかお姉ちゃんのこと大好き!」
「わしも! みかの子どもも産んでみたいぞ!」
「おせっかいスキルで、みかさんが性転換できれば、それも可能ですね! これは迷ってしまいます……!」
私は、距離感が分からないユアさんだけじゃなく、性欲四天王にも抱き付かれながら、それならもっと気持ち良くしてやろうかと思ったが、冷静になってやめた。
余計に調子に乗って、後戻りできなくなりそうだから。
私も含めて……。
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