第八十五話……神様に祈りを!
「あ、ユアさんも知らなかったの? 双子はともかく、妊娠してることは分かってると思ってた。まぁ、私もこっちに来て、まともな人間の妊婦を初めて見たから、『あー、そういう感じに見えるのね』って思ったけど」
「い、いえ、全く……。確かに、『あの日』は遅れているなとは思っていましたが、精神的なものかと思っていたので……。陛下と出会う前にもそういうことはありましたから」
「ということは妊娠初期か。胎嚢が二つ確認される段階かな? 『バニシングツイン』で一人になってしまうこともあるから、注意しないといけないな。仮にそうなっても落ち込みすぎないようにしないと」
「相変わらず手広い知識だねぇ。双子って帝王切開のイメージがあるんだけど、この世界ではどうなのかな?」
「帝王切開とは何でしょうか……?」
「腹部と子宮を切開して、赤ちゃんを取り出す手術のことだよ。母体と子どもの両方を救うための方法。でも、医療が発達していない時代は、死亡率がかなり高かったみたいだ。それよりも前だと、死亡した妊婦からしか取り出していなかった。
ただ、双子の場合でも、絶対に帝王切開しなければいけないというわけでもない。その場合、最低でも一子は『頭位』である必要がある。『頭位』は、頭が子宮口に向かっている状態のことだ。二子とも頭位であれば、経膣分娩で問題ない。
早い段階でおせっかいスキルを使えば、その状態にできそうな気はするかな。妊娠中期よりあとでも『外回転術』で可能だけど、痛みを伴うし、へその緒が絡まって子どもに危険がないわけではないから早い方がいいだろう。
いや、絶対にそうしよう。ユアさんもお腹の二人も全員助ける!
ということは、セントラルに行ってから、ここに戻ってくる可能性が高くなったか。流石に遠隔だけだと不安だから」
「神様にも祈っておこうよ。神様、ユアさんもお腹の二人も全員無事で健康に生きられますように、どうかお願いします!」
「たすく様、みか様……。誠に……誠にありがとうございます! 本当に嬉しいです……! 神様、大変身勝手なお願いで恐縮ですが、どうか私達をお救いください!」
「神様、お願いします!」
そして、その場の全員が神様に祈りを捧げた。ユアさんは、祈りながらも私達の言動に感動して涙を流している。
どうやら、彼女は神様の存在をサーズさんから聞いていたらしく、彼の言うことなら間違いないと信じたようだ。
祈りを捧げ終わったあと、ユアさんは恐る恐る私達の方を見てきた。
「あ、あの……皆様は、婚姻前に妊娠した私のことを軽蔑しないのでしょうか……? ましてや、陛下の王妃になろうとする女性がこのようなはしたない女で……」
「私も最初はそう思ってたんだけどさぁ、あ、最初って言ってもずっと前のことね。そう思ってたけど、でも結婚後に不妊で悩む夫婦もいるわけで、それなら早い内に全部分かって、その上で結婚した方が良いんじゃないか、って思うようになったんだよね。
ただ、完全に遊びだったのに妊娠したり、させたりしてるのは、相変わらず軽蔑してるけどね。無計画無責任無思慮妊娠で。
あと、『授かり婚』とかいうバカみたいな名称。普通に『妊娠婚』でいいでしょ。いや、むしろ名称なんていらないでしょ」
「俺もみかと同じ意見だな。あと、名称の話はブライダル業界と広告代理店の仕掛けだな。流行りに騙されやすい人には注意してもらいたいね」
「もちろん、遊びなどではありません。サルディア様がサーズ殿下であると私が知ったのは、お付き合いを始めてからずっとあとのことで、私のような者が殿下の寵愛を受けていいのだろうかと悩んだこともありましたが、殿下は優しく私を受け入れてくださりました。
それからというもの、もし私が王妃になるのであれば、王家のためにも、子どもは多い方が良いのではないか、それなら初産も……遅くともこのぐらいの年齢までには、と考えて、最近は積極的に私の方からお誘いし、子作りに励んでいました。それまでは、殿下の多忙さに配慮して行為を避けてきましたから。
もちろん、殿下はご聡明でお優しいですから、万が一、ご自分が王位を継承できない場合、ご自分が無実の罪で処刑されることもお考えになり、子作りに対して積極的どころか、結婚のお話しもこれまでありませんでした。全ては私と、まだ見ぬ子どものために。
しかし、殿下の死は、私の死であり、子どもの死。その覚悟を以て、殿下に私の想いをぶつけたところ、少なくとも子作りには積極的になってくださりました。その時も、私は嬉しさのあまり、泣いてしまいました。
そして、例の騒動があり、公開処刑が終わった昨日、陛下からプロポーズのお言葉を賜りました。
『国民の、そして俺のユアになってくれ。もちろん、一生だ』。
『はい。国民の、あなたのユアになります。もちろん、一生……いえ、死後も来世もその先も永遠に……』。
私が想い人にずっと言ってみたかったセリフを先読みするような、あまりにも素敵な嬉しいお言葉に、陛下と抱き合いながらも、私はまた泣いてしまいました。それからずっと頭から離れず、何度も思い返してしまいます……。
お父様、お母様にもこの名前を付けてもらって本当に良かったと、お恥ずかしながら手のひらを返しました」
「なんか途中から惚気話になってたけど……。まぁ、結婚したら『ユア・サウゼリ』になって、国民からすれば、『俺達のサウズ王家』みたいに思えて、親近感がより増すからね。改めて良い名前だよ」
「ただ、二人きりの時は、サーズはユアさんのことを『ツー』と呼ぶことにしたらしいぞ。『ユアユア』『ユアツー』だからって。ダブルを使うと、語感が良くないからって」
「た、たすく様! それを暴露されるのは、流石に恥ずかしいです!」
「じゃあ、ラブラブな時は『ツーちゃん♡』『サーくん♡』って呼び合うんだ」
「いや、ユアさんは『サーズ様♡』って呼びたいらしい。子どもの頃から王子様に憧れていたから。でも、マンネリを解消するためには、『サーくん♡』呼びも辞さない覚悟だ」
「では、サザエ村、もとい、サザン『エッチ』村出身の私から、マンネリ解消方法でもう一つ提案を。無関心スキルをマスターすれば、人前で堂々と変態行為をすることができるかもしれません。所謂、『露出プレイ』です。
誰にも一切の影響がないということは、法律上も問題にならないはずです。バレるかもしれないドキドキ感はないですが、開放感での興奮はあるはずです」
「じゃあ、私も一つ! 部分的に無関心にできないかな? そしたら、ユアお姉ちゃんはどんなに大きい声を出してもいいし、サーズお兄ちゃんにどんなに変態的な言葉を使っても幻滅されないよ! だから、一人で興奮できる!」
「……私がいれば、幻滅もされないかも……。その環境が心地良いと感じるから……。二人で興奮できる……。私にじっと見られてるから、さらに興奮できる……」
「お、お主ら……わしを置いてけぼりにする気か……? もしかして、性欲四天王最弱は、わし……?
いや、わしも何か……何か……お、そうじゃ! この際、城内全員が衣服に無関心になり、一日中全裸で過ごせるようになるというのはどうじゃ? 人間の常識を改変するのじゃ!
実際、わしらも昨日の夜から朝にかけて全裸で過ごしたら気持ち良かったぞ。モンスターは裸が当たり前じゃが、人間が全裸でおる姿を見るのが面白い。『仲間感』『一体感』も覚えるからのぉ。
そこから、恥ずかしいポーズや行為に適用させる発展性もある」
性欲四天王の他の三人が、プレアの意見に対して『おおー』と感心していた。
いや、何が『おおー』なの……。
「これが、おせっかいパーティーなのですね……。その勢いで、全てを実行してしまいそうです……」
「ダメだよ、真面目に受け取ったら。半分は惚気話に乗っかったセクハラなんだから。もう半分は……うーん、やってみたら面白いかもねって感じ」
「みかが変態行為を肯定した……? 無関心スキルの影響を受けたか……。
それとも、ユアさんが乗り気だからか?
『しまいそう』とか言っておきながら、実はやる気まんまんだからか?
『はしたない女』は謙遜ではなく、真実だからか?
でも、それでいいんだ。男は自分のためだけに淫らになってくれる女性が好きなんだから。俺達がもっとアイデアを出そうか?」
「た、たすく様! それは、おせっかいすぎます! サーズ様には絶対に言わないでくださいね! 絶対ですよ! フリじゃないですからね! サプライズにするんですからね!」
ユアさんは、かわいく怒りながらもすぐに笑って、目の端から涙を溢れさせていた。
これまで、ユアさんに友達はいなかった。おそらくビルさんは、サーズさんの彼女とあまり仲良くなったら、周囲から誤解されかねない。あるいは、周囲がわざと足を引っ張ってくると考え、遠慮していたのだろう。
でも、今は違う。私達がユアさんの友達だとハッキリ言える。
そもそも、出会った時から『友人』だったのだ。だから、瞬時に心を通わせることができた。
そのことに気が付いたユアさんの涙だったと思いたい。いや、絶対にそうだ。
だって、ユアさんの笑顔とその涙は、とても美しく輝いていたのだから……。
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