第八十三話……来訪者!
朝食を食べたあと、私達は国家保育資格試験の問題を作成していた。参考資料を先に作るより、そちらを先に作った方が私達に合っていたからだ。
その問題を元に、たすくが参考資料を並行して作成することにした。
「じゃあ、これ。『ビルくん三歳が泣き喚き、他の子どもに危険が及ぶ可能性がある場合、保育者はビルくんまたは他の子どもに対してどのように接すればよいか。正しいものを全て選びなさい。ただし、いずれの子どもも、その両親から預かっていることを前提とする。
一、一刻も早く他の子どもから引き離す。
二、ビルくんが泣き止むまで見守る。
三、他の子どもにビルくんを何とかするよう諭す。
四、ビルくんに他の子どもが迷惑するからと言って泣き止むよう注意する。
五、ビルくんがなぜ泣いているのかビルくんに聞く。
六、ビルくんがなぜ泣いているのか他の子どもに聞く。
七、ビルくんが泣いている原因を取り除いてあげる。
八、ビルくんが自分で原因を取り除けるようアドバイスする。
九、なぜそのような状況になったのかを分析して他の子どもに教える。
十、詳細な分析結果を保育者同士で共有する』」
「また、さり気なく難しい問題を出してきたな……。選択肢も多いし。一は間違いだと思わせて、実は正しい。保護者間で大事になったり、責任問題になったりするからな。だから、二は正しくない。あとは、すぐには分からないけど、十は間違いなくひっかけだろ」
「そうそう。あとは、保育と教育をわざと混在させた。問題を解くだけで、効率良く勉強できるからね。だからこそ、微妙に間違いやすくもあるんだけど」
「やっぱり、みかは才能あるよ。具体的な問題から発展して、色々なことを想像できる上に、効率まで考えられてるなんて、普通はできないんだから。これなら楽しく勉強できそうだし」
「自分でも意外だったかも。問題がスルスル出てくるのは間違いないからね。次は、『どうしても女性保育者のおっぱいを吸いたいビルくん』にしようかな」
「可哀想なビルくん……。訴えられないようにしないと……」
問題作成を続けていると、国賓部屋の扉がノックされた。
「おはよう。今、大丈夫かな?」
「お、噂をすれば。おはよう」
「おはよう。って言うか、ずっとビルくんの話題だったけど……」
「率先して問題を作成してくれているとは流石だな。感謝する。報酬はしっかり用意しているから安心してほしい。
さて、保育と教育関連が終わったら、モンスター用社会適合テストの方に移りたいんだが、日程的にはどんな感じになりそうかなと思って聞きに来た。
もちろん、無理はしなくていい。おせっかいパーティーが城に滞在する分には、いくら長くてもこちらとしては嬉しいのだから」
「どうだ、みか? みか次第のところがあるから」
「深夜残業しないなら、早くて四日後かなぁ。遅くても五日後。問題だけなら二日でできるけどね」
「じゃあ、完成した問題から、先代に学習していただくか。資格試験と言っても、落とすための試験ではないからな。仮に落ちても、その場でどこが間違っていたかを確認して再試験だ。すでに、保育も教育も始まっているのだから、時間差がないに越したことはない」
「本当に流石だよ、ビルは。十分に時間があるなら、それが試験のあるべき姿だよ」
「問題の対照性やバランスも考えたいんだけど、それも後回しでいい? もしかしたら、問題そのものが変わるかもしれないよ? もちろん、整合性や本質は変わらないようにするけど」
「それなら問題ない。そもそも私達が求めるクオリティ以上のものが出来上がっているのだから。最終確定は、まだ先でいいよ。一度売った商品と違って、手直しはいくらでも効く。是非、完璧を求めてほしい」
「本来、クオリティと納期のバランスは考えないといけないけど、俺達の場合は仕事の範囲も量も限られてるからな。だから、最終的なクオリティを追求できるってわけだ」
「そこまで期待されたら、やるしかなくなっちゃったじゃん……」
「ありがとう、みか。ただし、何度も言うが、無理はしないでくれよ。肉体的にも精神的にも。休みながらでいいんだ。国家持続方針や社会適合テストの時と違って、そこまで急いでないんだからな」
「ビルもな。まだ不十分だろ? ちゃんと寝て、家に帰ってくれよ……とサーズなら昨日みたいに言うぞ。嬉しくて張り切るのも分かるけどな。そういう時こそ、慎重になるべきだ。調子に乗ると碌なことがない。本当にないんだ……」
「……」
「……。ありがとう、たすく。是非、そうするよ。さて、私は仕事に戻る。午後以降なら、城内を自由に歩いてかまわない。明日以降なら、城外でも。
何か問題が起こらない限り、私はここに来ない。完成した問題は、コーディーに毎朝渡してくれ。ただし、四日後の朝に進捗を聞きに来るから、順調に行った場合、たすく達はその次の日に洞窟Aに行って、モンスター用社会適合テストをモンスター達に説明、レクチャーしてほしい。私達は行かずに別の仕事をしている。
モンスターは『責任』を知らないとのことだが、もし責任者を呼べと言われたら、その結果を踏まえて『モンスターと人間の共存社会実現方針』を作成した時点で来ると伝えてほしい。その際は、こちらも事情があって忙しいんだと、ハッキリ言ってくれてかまわない。ただし、君達との関係を蔑ろにしているわけではない、ということも伝えてほしいかな。自分達の命を優先するのは当たり前だからな」
「分かった。強さの上下関係があるから、強くは言われないと思うけど、その時があれば不信感を払拭させつつ伝えるよ」
ビルさんがお礼を言って、仕事に戻って行ったあとは、私達も昼食まで仕事を続けた。
午後になって、国賓部屋のドアがまたノックされ、一人の女性が入ってきた。
すでに『友人』ランクであり、似たような人を見たことがある既視感とその美貌、物腰の柔らかさから、まさに清楚系お嬢様、箱入り娘といった感じで、それが誰であるかは想像に難くなかった。
でも、何かおかしい……。いや、明らかにおかしいんだけど……。
だって、その女性の体が微妙に透けてるんだから……。しかもあれは……。
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