第八話……おせっかいスキル!
「何をごちゃごちゃと言っているのですか。早く行きますわよ!」
「ねぇ、休憩してる間、部下と何を話してたの?」
「…………」
「ねぇってば!」
「……。下品な言葉で私に話しかけないでくださる? あなた方と私は同列ではないのだから。まぁ、体は正直なようで、私のあまりの偉大さに、隠れながら震えを我慢しているのは仕方のないことですが」
「いや、これは違うんだけど……。とりあえず、寒いからってことにしておいて。水場も近いし」
「あ、そう言えば、例の泉を一目見て行きたいと思っていたのでした。その報告ができると、何かと都合が良いこともあるかもしれないので。ちょっと案内してくださる?」
「案内って、普通にすぐそこだよ。ほら、あそこに……」
私が言いかけて、全員が泉の方に目を向けると、たすくの背後辺りからガキンと金属が鳴る音がした。
「今、何かしたか?」
「バ……バカな……」
どうやら、姫の化物が隠し持っていた短剣を、たすくの鎧の隙間に突き立てようとしたところ、謎の力で弾き返されたようだった。
「はぁ……。この期に及んで、こんなことをするようなら、改心の見込みはないのかな……。しょうがない、殺すか。正当防衛だし」
「ひっ……ひぃぃぃぃ!」
たすくの淡々とした殺意の言葉に、化物一行は走って逃げ去った。
多分、本気で言っているわけではないと思うが、こうなったら、どっちが化物か分かったもんじゃない。
「君は付いて行かなくていいのか?」
「はい。私はもう思い残すことはないので、泉に行きます」
「ちょっと! それって自殺するってこと⁉️」
「はい、そうですが」
「『はい、そうですが』、じゃないでしょ!」
「そうだ! 一緒に勇者管理組合に行くんだろ!」
「いえ、そんなことは一言も言ってませんが」
「確かにその通りだ……。言ってなかった……」
「ちょっと! さっきまでの頼もしさはどこに行ったの! ……って、ようやく分かった。たすくのスキルの発動条件が……」
「本当か⁉️」
「うん……って言うか、頭の上に表示されてるんだよね……。詳しく書かれてるわけじゃないんだけど、間違いなく私だけに見えるものだと思う。今まで見えなかったのに、急に見えるようになったのは何でだろう……。化物を追い払ってレベルアップでもしたのかな……?」
「その可能性は高いな。とりあえず、表示されているものを読み上げてくれないか?」
「おせっかい」
「いや、何もしてないけど」
「いや、そうじゃなくて! 『おせっかい』って表示されてるの! 『おせっかいスキル』ってことだよ!」
「何だよそれ……。俺の紹介文が表示されてるだけじゃないのか?」
「そこの剣士さんは表示されてないし、ラピスにも表示されてないんだよね」
「ご存知の通り、勇者管理組合の人間である私はスキルを持っていません。モンスターがスキルを持っていることはあるらしいですが、その説は確かではありませんし」
「ご存知ではないんだが……ああ、そう言えば、君の名前を教えてくれないか。俺達のことは、もう知っている通り、俺がたすくで、こっちはみかだ。この虎はラピス。君の言った『ラプス』ではない」
「私の名は、『セレナ』ですが……あなたは本当に『あの』王女殿下なのですか? 過去に拝見した際の印象とは、まるで違う……。完全に別人です」
「その通り、中身は別人だ。その元王女殿下と元使用人は、ついさっき、泉で入水した。その肩書きも、さっきの姫が言ってたことで初めて知った。俺達は異世界から転生してきて、その体に入ったんだよ。口調から分かる通り、俺は元男だ」
「な……異世界……? 男……? そんなことが本当に起こり得るのですか……? 私をからかっているだけと言われた方が、まだあなた方を信用できます」
「まぁ、起こっちゃったものは起こっちゃったからね。現実を受け入れるしかないでしょ。私達にも言えることだけどさ。でも、異世界とか言っちゃって良かったのかなぁ。普通、こういうのは隠すものじゃない?」
「この場合は、隠したところでメリットもないからな。それに、セレナには伝えておきたい。その方が、正直に腹を割って話せるだろうし」
「まあね」
「ありがとうございます。なるほど……。先程の暴言の数々は、こちらの事情を知らず、一切のしがらみがないからこそ、できた所業なのですね……」
「それじゃあ、セレナにはいくつか確認したいことがあるが、まずは順番で、みかの話、発動条件の話から行こう。リスク回避にもなるからな。キリの良い所まで話してくれ」
「お、流石だね。会議の進行役。多分だけど、発動条件は、『余計なお世話』とか『おせっかい』とかって言葉を相手に言わせること。本心から出た言葉じゃないとダメだと思う。もしかしたら、この先レベルアップして言葉も不要になるかもね。
発動後は超人的な力を発揮するんだけど、その内容も、ある意味『おせっかい』に準ずる。
まず特徴的なのは、あらゆる力に『干渉』できる。無効化することも、別の方向に向かせることも可能。本人の力が変化しているわけではない。
もう一つは、他者の考えていることを察知できる。これは、ある意味で『おせっかい』を『おせっかい』にしないための能力だと思う。せっかくやったことを無駄にさせないためのね。
もしかしたら、頭の回転が速くなる効果もあるかも。
ただし、いずれも時間制限か回数制限があったり、あるいは、おせっかい対象の問題が解決したりすると、通常の状態に戻る。どれかは、今のところ不明。
今言ったことは、一切表示されてないけど、『おせっかい』って表示と、私とたすくのやり取りから推察した。こんなところかな」
「ありがとう。なるほどなぁ……。俺の勘だけど、みかの推察は合ってると思う。
相手に言わせることは、あんまり意識しない方が良いな。いつもの俺であるべきだろう」
「うん。たすくにとっては、最高のスキルだと思う。これまでの自分を否定しなくていいんだよっていう神様のメッセージだよ、きっと」
「そうだな……。涙が出てくるぐらい嬉しいよ。ありがとうございます、神様。このスキルを是非活かしたいと思います!」
「……。あの……質問いいですか? まるで神が存在するかのように話していますが、私達の世界では、神は存在しないことになっています。なぜなら、その信奉によって誰も救われていないからです。一部、神の存在を信じている者達がいましたが、その昔、辺境に追いやられました。このこともまた、その存在を否定することに他なりません。
お二人が神を信じる根拠は何ですか?」
セレナを含め、この世界の人々がそう言うのも無理はない。私だって死ぬまで信じていなかったのだから。
「私が死ぬ直前、神様らしき声を聞いたから、かな。それをたすくも信じてくれてる。セレナの言ったことは私も納得できるよ。本来なら、私を死なせないように、幸せになれるように、色々してくれるのが神様でしょ、って思う。
でも、それは私が勝手に作り上げた神様像なんだよね。少なくとも、私が知っている神様はそうじゃない。万能ではないのかもしれないし、常に私達を見ているわけではないかもしれないから。なんなら、私達が死んだ時も、偶然見かけただけかもしれない。実は神様ではなく、世界の管理者という肩書きなのかもしれない。
でも実際には、これまで頑張ってきて、私を救おうとしたたすくには、優れたスキルが用意され、いじめで自殺しようとした私には、再びそうならないように、そしてたすくの足を引っ張らないようにするためか、神様の言葉通り、制約有りの本質恐怖スキルが用意された。
元の世界にスキルは存在しないから、これだけでも『神様』が存在する証左と言えるんじゃないかな」
「ありがとうございます。なるほど……確かに……。私も考えを改めなければいけませんね……。世界の常識を疑えと、これまで何度も意識していたことなのに……」
「それは、セレナが自殺しようとしていることと関係があることなのか? もちろん、俺は君の自殺を止めたいと思っている。まずは聞かせてくれないか。君がその結論に至った経緯を。死のうと思っているのなら、それを話すことぐらい、わけないだろう?」
「そうですね……。何から話しましょうか……。お二人には、まずは『勇者管理組合』について話す必要がありますか……」
「それが良い。長くなりそうだから、木陰で座って話そうか。対話形式の方が話しやすいならそうする」
「では、お願いします」
「面白かった!」「つまらん……」
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