第七十三話……公開処刑の完了と共に
「皆も感じていることかもしれないが、終わってみれば実に不思議な感覚だ。長いようで短く、短いようで長かった。慣れない感覚の中で、私を含めて、この場の全員が、肉体的にも精神的にも限界を迎えていることだろう。
そのような中でも、最初から最後まで、しっかりと重大な職務を遂行した執行人達には、最大の敬意を払いたい。感謝する。皆も是非、称えてあげてほしい!」
私達も観覧者も、全員がコーディーさん含む五人の執行人と魔導兵士達に盛大な拍手を送った。
彼らは深々と礼をし、みんなからの温かい思いと自らの安堵に、涙を流していた。
「また、非常に短納期にもかかわらず、この誇るべき処刑台を建築してくれた素晴らしい職人達、数多くの特等席や嘔吐箱を作成してくれた素晴らしい職人達にも、改めて感謝したい。ただ、その素晴らしい物を今回は全て焼却処分してしまい、申し訳なくも思う。
皆は、まさに国の柱である。柱が脆くなれば、そして折れてしまえば、国家は傾いてしまう。そのような事態にしないためにも、今後も政府からの発注は絶え間なく行っていくと約束しよう。
予期せぬこともあって、現時点で私の言いたいことは全て言えたと思う。
ただ、政治は結果だ。いくら御託を並べても意味はない。だから……。
その目に、しかと焼き付けよ!
その耳に、しかと残せ!
その口で、広く訴えよ!
『新生サウズ国』の全てを!
そして、その手足で行動せよ! 自らを助けると共に、全国民に安心と笑顔を届けるために! そこに限界など存在しない!
その全てを、私自身が心に刻もう!
これにて、未来に語り継ぐべき、伝説の公開処刑を完了とする!」
限界を知らない歓声が、さらに大きく鳴り響き、ついに公開処刑は終了した。
これほど大量の人達が集まったにもかかわらず、大した混乱もなく、怪我人もいないとは、流石の運営力と言えるだろう。
まだ一時間後に処刑台の焼却処分が残ってはいるものの、おせっかいスキルがあれば、滞りなく終えることができると誰もが思える。
周りを見ると、全員がホッとした表情をしており、私も同じ気持ちになった。
とは言え、今ビルさんが言っている通り、『帰るまで油断はしないように。例えば、嘔吐箱をひっくり返さないように。帰っても留守の隙に物が盗まれているかもしれないから、しっかりと確認するように。窃盗犯は神聖な公開処刑を貶めた罪で処刑するから、残らず通報するように。返品を当てにして盗まれてもいないのに通報しても処刑するから、魔が差さないように』と、遠足からの帰宅時以上に注意を払う必要もある。
しかし、この高揚感と安堵感があれば、夕食も吐かずに普通に食べられそうな気がする。
それは誰もが思ってもみないことだったろう。
たすくも、子ども達に追加の食事を持ってくるかどうかを確認していたが、処刑台から降りてきたコーディーさんが、観覧者から約束の食料を貰い、それで賄うことにした。
そして、ビルさんも含めて、全員処刑台から降りたところで、たすくがビルさんに話しかけた。
サーズさんは、そのまま処刑台の奥の方から、馬車で城に帰ったようだ。
「嘔吐箱は俺が回収しようか? 予想に反して、みんな全然帰らないみたいだから、兵が回収しづらいよな」
「それでは、申し訳ありませんがお願いできますか? 本当は次回以降の経験として、こちらで全て対応したいところではあるのですが、あまり時間が取れなかったので練度が足りないのも正直なところです。
例の『守護神』に、警備については相当学んだのですが、今回は活かし切れませんでした。あとでレビューします」
「もう暗くなってるからね。逆に危なくなるよね」
「じゃあ……みんな! 嘔吐箱は俺が回収するから、少しだけそこから離れてくれ! まだ使いそうな場合は、手をかざしてそれを示してくれ! 未使用で腰掛けに使いたい場合は、誰か座っていてくれ! それらはギリギリまでそこに置いておくから!」
「特等席もギリギリまで残しておきます」
それからたすくは、おせっかいスキルを使って、嘔吐箱をそのまま宙に浮かせ、ガッチリ周囲を固めると、それらを処刑台の下に移動させた。そのまま臭いもガードしているようだ。
「二割ぐらいは腰掛けで使うみたいだ」
「ありがとうございます」
一息ついたところで、前国王がビルさんに近寄ってきた。
「ビル、相談したいことがある。私達にこの子ども達の保育と教育をさせてはもらえないだろうか。ロクに息子達を教育できなかった私達から、そのようなことを申し出ること自体、恥を知らずに申し訳ないのだが……」
「いえ、それは私も考えていたことです。おそらく、陛下も。ただ、私が先程挙げた政策案にも含めた通り、保育および教育の資格試験は受けていただきます。時間差にはなってしまいますが。
それらが上手く行けば、陛下から保護院の責任者に任命いただく流れになるかと」
「感謝する!」
「この他にも私達に何かできることがあれば、全て申し付けてくださいね」
「はい、そのつもりです。ということで殿下、資格試験の参考資料と問題を作成していただけないでしょうか。殿下方の現代教育知識は、私達を優に超えていますから」
「分かった」
「また、深夜残業するの⁉️」
「残業にはならないんだな、これが。おせっかいパーティーには、就業時間が決められてないから」
「早速、教育に悪い例が! 問題に含めるから! 名指しして!
『意図的に労働契約を結ばず、他国の女性を就労させる強権の男児がいた。名をビル・クライツという。ビルくんに相応しいサウズ国の教育はどれか。全て答えよ。
一、労働基準法を熟知させる。
二、労働者保護の観点で問題解決方法を習得させる。
三、他者への思いやりを育む。
四、女性の価値観を聞き出すスキルを習得させる。
五、責任から逃れる方法を教える』」
「流石、みか。これは、地味に難しいな……。これを答えてしまっては、後の受験者に影響が出るから、私が解答するのは控えよう」
「はい、禁忌肢で不合格! 無解答が一問でもあったら不合格にするから」
「これ多分、問題文にも選択肢にもひっかけがあるな。マジで難しいよ。おせっかいスキルがなかったら、答えられないぐらい」
「勉強しがいがあるな」
「ええ。勉強はいくつになっても、いつでもできますからね。やる気さえあれば」
「わしも日々、勉強じゃからのぉ」
「私も最近はどうやって上手いことを言おうか、いつも考えてるよ!」
「ラピスちゃんへの教育は、たすく様とみかさんの責任ですからね。どのように成長していくのか楽しみです」
なんとなく、少しだけ、みんなの緊張がほぐれたように思えた。
「…………たすく……みか……」
「今、誰か私達のこと呼んだ?」
「いや、何も聞こえなかったけど」
私は周囲を見回したが、そのような気配はどこにもなく、もしあるとすれば……。
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