第六十二話……処刑台への道
全裸開脚で全てを露出したフォーリエが、正門から大きい台車に載せられて出発したその後ろを、私達は付いて行くように歩いていた。ビルさんや前国王達、回復役、攻撃兼防御役の魔導兵も一緒だ。
これも儀式としての一環で、たすくを始めとした私達を立会人として、国王とその護衛を除く関係者全員が処刑台まで歩いて行くことになっているらしい。
仮にそうでなくても、その責任感から、たすくはそうしていたと言っていた。
処刑台までの道の両側には、すでに多くの観覧者が集まっており、先に見える処刑台の周りも溢れんばかりの人が集まっていた。
流石のフォーリエも、最初は観覧者に向かって、『見るな、ゴミども!』と怒鳴っていたが、今は俯き、『嘘よ……これは夢……。そう、夢なんだわ! あははは……!』と現実逃避している。
処刑台は思っていたよりも広く、短期間の施工にもかかわらず、がっしりとした作りになっており、職人達の腕が伺い知れる。
その処刑台の上は、水筒も含めて準備万端で、いつでも処刑を執行できそうだ。
そして、全員処刑台に着くと、私達は正面の特等席に移動し、用意された椅子に座った。ビルさん達は、全員処刑台上だ。
フォーリエが台車から降ろされ、傾斜が緩めの階段をズルズルと仰向けに、鉄柱越しに引きずられて上がっていく様子は、私達から死角になっているので見えなかったが、処刑台に上げられた瞬間は、私達も周囲の観覧者も、ついにこの時がやってきたかと実感し、少しざわついた。
特等席は私達の所だけでなく、処刑台周囲の最前列全てに配置され、高額料金を支払うことで、その権利を購入することができるが、それらは全て完売、すでに全員が着席していた。
ただ、冷やかしや愉悦のために、それを購入することは禁止されているので、腹の中はどうか分からないが、みんな真面目な顔つきをしているとセレナに教えてもらった。私から見れば、その人達は『情状酌量』ランクに限りなく近い、『対話』ランクの化物だから。
ちなみに、処刑台上の座席は、国王用の一つしかない。前国王達でさえ、立ったままそれを見届けなければならない。もちろん、体調不良になった時は、その場にしゃがみ込んだり、座ったり、寝転んだりしてもいいとのことだ。
サーズさんが到着するまでの待機時間も大変だろうが、みんな直立不動で流石だと思った。
それから十五分ほど経過して、サーズさんが到着したが、まずはビルさんの注意事項の伝達からだ。
「さて、聞こえるかな?」
ビルさんの確認に、観覧者は全員大きくどよめいた。
なぜなら、ビルさんが普通に喋った言葉が、観覧者全員に等しく行き渡ると同時に、処刑台上のギロチンから、さらに約五メートルほど上に、処刑台の映像が大きく、鮮明に、どの角度からでも見えるように、複数映し出されたからだ。
これは、城での待機時間中に、たすくからサーズさん達に提案したもので、ご親切にも正面と背面の二画面分、つまりフォーリエの表情を逃さず観ることができるようになっていた。
特等席のメリットが一つ失われたとも言えるが、それを気にする購入者達ではないだろう。
「この『映像』というものと、この音声は、そちらの最高特等席にいらっしゃる立会人、セントラル内第一セントラル領国第二王女、マリッサ・センティネリ殿下の類稀なるスキルと頭脳、および物理学知識によるものだ。
今回は特別に、この状態で一部始終を執り行うこととする。
さて、陛下のご到着に際し、宰相を仰せつかった私ビル・クライツが、本公開処刑に当たり、最優先の注意事項を述べる。心して聞くように。
万が一、本公開処刑を妨害する者が現れた場合、観覧者は速やかに『妨害者だ!』と前方に叫び、それを聞いた前二列分の観覧者がさらに前方に伝え、その声をここまで届けてほしい。
同時に、妨害者に危害を加えられないよう、また妨害者がスムーズにこちらに来られるよう、道を開けてほしい。マリッサ殿下のご協力の下、こちらで取り押さえるが、妨害行為は国家反逆罪で死刑になることを、妨害者並びに皆も肝に銘じるように。
また、緊急時はこちらの指示があるまで、その場を動かないこと。下手に動くと、ドミノ倒しになり、多数の圧死者を出すことに繋がりかねないからだ。
もし、混乱を招いたり、焦って勝手な行動を取ったりした場合は、死刑に処す可能性もあるので注意すること。
残りの注意事項は、後の説明で述べることとする。以上!
それでは、陛下から公開処刑開始宣言を賜る。静粛に拝聴するように! 宣言直後は歓声を上げてもかまわない!」
そして、サーズさんが処刑台上の席から立ち上がり、ビルさんよりも前に出た。
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