第六十一話……その言葉とは
「ありがとう、フォーリエ。そして、さよなら。
お前は『死ぬべき』だ。最大限の苦痛を味わって死んでくれ。
あとは……地獄で俺を待っていてくれ。またその時にゆっくり話そう。お互いに永遠の苦痛を味わいながら……」
もっと強く言い放ってもおかしくない『その言葉』を、たすくは優しくフォーリエに投げかけた。冷静になれたからだろう。
しかし、冷静な人が厳しい言葉を言う時ほど、怖いことはない。
私がいじめられていた時、『死ね』や『お前、死んだ方が良いよ』とは何度も言われたことがある。
ただ、『死ぬべき』と言われたことはなかった。そう考えると、邪悪な人達にも少しばかり人間の心が残っていたのだろうかとも思う。
もちろん、たすくが人間の心を捨てたと言っているわけではない。
しかし私は、たすくが黒い霧に包まれ、悪魔になるのではないかと思っていた。でも、その予想に反して何も起こらなかった。
つまり、悪人の死が社会のためであると考えるのは、悪魔の条件ではなかったと言える。
地獄に行くことを覚悟したからだろうか。それとも、私がそれを望んでいないからだろうか。
『本質スキル』とは何なのだろうかと、私は今更ながらに考えてしまった。
「で、殿下⁉️ 何をおっしゃるのですか! やはり、騙されているのですね!
私が何とかしますから、殿下は早く私を解放するように命じてください! 一言でいいんです! その一言さえあれば!」
「ビル、俺はもういいから、早くソイツを縛り上げてくれ。スキルの影響がないように、肌に直接触れないように、一定間隔を保つようにしてあるから」
「あ、ああ……分かった。ちなみに、みかが挙げた先程の問題、フォーリエは✕と答え、不適合だった……。
これより、罪人に対して、公開処刑の準備を行う! 罪人フォーリエを決められた通りに縛り上げろ! その後は、出発時間まで待機!」
ビルさんの命令で、コーディーを含む指名執行人五名が、縄といくつかの金具を持ってフォーリエに近づくと、手錠と足枷を付けているにもかかわらず、彼女はジタバタと暴れ始めた。
「何なの、お前達は! やめなさい! 殿下! 即刻やめさせてください! 殿下……!
わ、分かりました……。殿下が嫌とおっしゃるなら、お父様をお呼びください! お父様を!」
「フォーリエ、父上ならもう呼んである。もちろん、母上も一緒だ」
「な、なぜもっと早くそれを言わないのですか!
お父様! 私を助けてください! 愛娘がゴミどもに汚されてしまいますよ! 殺されてしまいますよ! お父様だけが止められるのです! さぁ、早く命じてください!」
「可哀想なフォーリエ……。今、命じてやるからな……」
「ああ……! お父様……! やはり、お父様だけが頼りです!」
「……。すまない、フォーリエ。よく考えてみたら、私にそんな権限はなかった……。
お前達、私のことを気にする必要はない。粛々と職務を全うしてほしい」
「お父様⁉️ 何をおっしゃって……」
「最初からずっと聞いていたよ。今更だが……本当に今更だが、親の責任として。無論、最期まで見届けるつもりだ」
「フォーリエ……あなたは私がお腹を痛めて産んだ大事な娘。それは今でも変わらない。
だから、先にお逝きなさい。先に未来を進むことが子の役割。
私達も、いずれそちらに逝きますから。国民に奉仕し続け、天寿を全うしたあとで……」
「はぁ⁉️ し、信じられません! それでも親ですか! 勝手に産んで、勝手に育てて、無責任にこの仕打ち……!
こ、こら! やめなさい! 汚い手で……」
「いくらでも罵るといい。全て受け入れる覚悟だ。お前が殺した、かわいい娘達の死と同じく……」
「身勝手な親でごめんなさい……。だから、せめて……身勝手なあなたの最期を身勝手に見届けることで、私達の身勝手を最後にしたいと思います」
「こんな……娘がこんなに屈辱的な格好をさせられているのに、平気で眺めているクズども……最低最悪……。
全員……! 全員一人残らず死ね! 死んでしまえ! 死ぬべきなのは、お前達だろ! モンスター未満の人でなし!
セントラルに蹂躙されて、泣き叫んで、無惨に滅ぼされろ! このクズ国家のクズ王家の最低最悪のクズどもがぁぁぁ!」
「……」
「……」
その光景を全員が黙って見ていた。
本性を現したフォーリエを、きっと化物のように、みんなが見ていたことだろう。
私もここに来てようやく、フォーリエの化物姿と言動が完全に一致した瞬間だった。
それから、フォーリエが完全に縛り上げられるのを見届けて、私達は牢獄を後にした。
「みんな、ごめん……。俺は……」
「たすく様は、たすく様です。変わりありませんよ」
「そうだよ。私の大好きなたすくお兄ちゃんだよ!」
「たすくとみかのおかげで、わしは『平和』とは何かをより深く考えることができた。感謝する。もちろん、たすくへの想いも変わらんぞ」
「たすく、王家を代表して、そして親友の俺からも直接言いたい。
まだまだ短い付き合いではあるが、たすくの良い所は、思っていることをそのまま俺達に聞かせてくれることだと思う。
だから、仮にたすくが自分で変わったと思っていても、俺達は自然に受け入れられる。心情の変化を理解し、共感できるんだ。その心から直接出てくる言葉に嘘偽りがないから。
それが、『たすくは、たすく。何も変わらない』と、この場の全員が思える理由だと思う。
もしこれが、最初は平和主義者で、過程を飛ばして、ある時突然、『やっぱり、アイツは死ぬべき』と言っていたら、『何だコイツは』と誰もが思うに違いない。説明不足や下手な言い訳でもそうなる。
まさに、今回の公開処刑でそうなる恐れがあった。もちろん、終わってみないと分からないことではあるが、そういう意味でも、我が国はたすくと共にあり、たすくから大いに学んでいることをいつでも思い出してほしい」
「サーズ……みんな……ありがとう……。みかは……」
「言うまでもないよ。変わってたら、真っ先に言ってるから。幻滅もしてない。
それに、さっき自分で言ってたでしょ。『俺は俺であり続ける』って。現世じゃなくて、地獄で助けることにしたんでしょ? だったら、それでいいじゃん。
その覚悟が揺らいでるような表情を私達に見せたらダメだよ。私達に甘えたいなら別だけど、そう思ってたら、もちろんたすくは言ってくれるんだよね? それがたすくの長所なんだから」
「ああ……! 甘えさせてほしい! 落ち着いたら、たくさん!
いや……みかの言う通り、もう甘えてるか……。みんなの言葉を直接聞いて、こんなに嬉しくなったんだから……。やっぱり、直接言ってもらえるって嬉しいな……」
「それじゃあお返しに、今日はみんなでたすくに甘えることになると思うけど、覚悟はいいね?」
「望む所だ!」
私達は進み続ける。みんなで支え合いながら。
一人では踏み出せなくても、みんながいれば足を持ち上げる元気が湧いてくるから。背中を支えてくれるから。手を引っ張ってくれるから。
そのことでも嬉しくなって、さらに元気が湧いてくるから。
この先、どんな状況になっても……。
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