第五十六話……執行人候補者!
「サーズさん。もしよかったら、城内の執行人に選ばれた人の話を、一人だけでもいいから聞いてみたいんだけど。
どういう人で、どういう気持ちでいるのかなって」
とりあえず、自分から動ける範囲では動いてみようと、私は意を決してサーズさんにお願いしてみた。
「もちろん、かまわない。俺も気にしていたことだからな。
午後でいいか? 官僚時代の引き継ぎを午前中に終わらせるから。
それに、ビルの附則があった方がお互い話を進めやすいだろう」
「ありがと! 流石、効率的!」
「その前に、たすく。マリアン殿下は、馬車でセントラルに向かったと報告があったので、安心して首都内を歩くといい。
それと、今のフォーリエの様子はどうだ?」
「フォーリエ、アイツ……。牢屋でも勉強部屋でも、昨日からずっと監視兵に向かって、おびただしい数のスキルを打ち込みまくってるんだよな。
その度に、自動おせっかいスキルで止めてるんだけど、一回の打ち込みにつき、ほんの少しだけ針が近づくようにしてたんだよ。
もちろん、兵には達しないようにしてるんだけど、その最終ラインまでもう来てる。その数、推定一万回。
そんな感じだから、勉強もあまり進んでいない。諦めているわけではないものの、勉強に対する怒りをスキルで発散しているんだと思う。そもそも、発散になっているか分からないけど」
「たすくから、『次に俺達にスキルを使ったら、お前をその場で殺す』って言われたのに、『俺達』じゃないから許されるって思うのは、やっぱりおかしいよ。
多分、セレナとかにも使ってただろうね。あの時の『俺達』に含まれないから。
たすくがどういう思いであの言葉を言ったのか、想像できてない。
でもこれ、処刑の時に私達に使って、積極的に殺されようとする可能性もあるよ。それで殺さなかったら、嘘つき呼ばわりされる」
「酷いな……。その時は、『その場で殺すとは言ったが、すぐに殺すとは言っていない』と、貴族答弁で乗り切ってくれ」
「分かった」
「また私が言うのもなんだけど、なんか妙にコミカルなんだよなぁ……。だから、実感が湧いているのか湧いていないのか分からなくなるのかも」
「それだけ茶番が多いんだよ、政治社会は。それを特別な理由もなく、求められてもいないのに、自分が楽しむためだけに、苦しんでいる国民の前で平気でやるから、信用されなくなるんだ」
「大丈夫だ。みかには俺達が付いてる。もちろん、サーズもビルも。
みんな心配してるんだよ、大好きなみかのことを」
「そういうことは言うなって言ったのに……。ありがと! おせっかい族!」
みんなのおかげで前向きな気持ちになり、軽めの昼食を終えた私達が、国賓部屋でしばらく待機していると、ビルさんが私達を呼びに来た。
「陛下には、すでに複製紙を提出している。私はまた仕事に戻るから、あとは頼む。
今から約五分後に、執行人候補者の一人である『コーディー・フェン』が王室に向かう。
参考までに、コーディーは二十歳、見た目は凛々しく、結婚は早く四年目、四歳の息子と二歳の娘がいる。
城内勤務も四年目、成人後すぐに防衛省に入省したが、私が左遷されたあと、いつの間にか城内支援兵になっていた。
本人に聞いたところ、自分から志願したと言っていたが、どうも気になる。時間がなかったから、詳しく聞けなかったんだ。
その辺りを考慮して、彼のことを是非頼む」
ビルさんがすぐにその場を離れた後、私達もすぐに王室に向かった。
あまり時間がなかったのにコーディーさんのことを教えてくれたのは、彼を信頼、心配してのことだろう。
「失礼します! 大変お待たせして申し訳ありません! コーディー・フェン、ただいま参りました!
この度は、陛下のご即位、誠におめでとうございます! 私の全身全霊を以て、陛下にお仕えすることを改めてここに誓い、我が国の発展を、微力ながら支えて行く所存であります!」
「ああ、頼むぞ。コーディー」
「はっ! 身に余るありがたきお言葉です!」
私達が王室で待っていると、時間通り彼が入室してきた。
気合いの入った誓いとサーズさんとのやり取りに、それだけ聞けば普通のことのように思えるのだが、私から見たコーディーは『情状酌量』ランクの化物だった。
つまり、何も考慮しなければ、刑罰に当たる罪を背負っていることになる。
ビルさんはそれを察したか、あるいは念のための配慮だったのだろう。
「『情状酌量』だね」
「え……?」
「コーディー、今からそちらのマリッサ・センティネリ殿下と、その隣の彼女の質問に、正直に答えろ。
その前に一つ、私から。私がプラチナ鉱石を認定した先日の騒動の時、お前はどこにいた? あの場にいたか?」
サーズさんからの早速の質問に、コーディーさんは姿勢を正した。
「面白かった!」「つまらん……」
「続きが気になる!」「次回作に期待!」
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