第五十四話……誰かに優しく寄り添って
「セントラルでは奴隷を切り刻んでいるからな。その間接責任だ。続けるぞ。
同様に出血が酷い場合は、回復魔法を使う。
さらに、切り落とした手足を鉄槍に串刺しにして、現フォーリエ殿下の眼前で、炎魔法を使って焼却。膝、肘と同様に続け、二の腕、大腿部の中央で同様に切断し、焼却。
用意していた簡易三角木馬にきつく縛り付け、首に括り付けた縄をギロチン上部に回し、上半身を常に起こすように、調整しながら引っ張る。これを三十分続ける。この際、窒息死しないように注意する」
「三角木馬を使う理由は?」
「性欲が強く、女の快感を追い求めてきた現フォーリエ殿下に、女として生まれてきたことを後悔させるためだ。もちろん、それ自体は悪くないことだが、その手段が王族としての地位を最大限に利用した許されないものだった。
三角木馬は、男よりも女の方が苦痛を感じるので、差別感を与えるためにも採用している。そこはしっかり説明する」
「なんか、まだありそうなんだよなぁ……」
「次に、三角木馬を外し、現フォーリエ殿下をギロチンに設置。鞭打ち時と同じ体勢にした上で、直径五センチの熱した鉄棒二本を、膣口と肛門にそれぞれ挿入する。鉄棒が冷めたら再度熱する」
「やっぱりね……。それも同じ理由でしょ? なら、どっちか一つでいいんじゃないの?」
「性交で快感を覚えているので、この方法。そして、これが火あぶりの刑を兼ねているので必要。煙で窒息死することもない。
心臓が止まらないよう、胸部付近は水魔法で覆う。温度は十分調節するが、下半身が燃え、上半身に燃え移りそうな場合は、やはり水魔法で消火し、鉄棒を炙るところからやり直す」
「うーん……。流石にあとはギロチンで終わりだよね?」
「いや……眼球が残っている場合は、細い鉄杭で脳に達しないように片目ずつ潰す。国家を暗闇のどん底に突き落とし、国民を暗闇に葬った罰として。
次に、鼓膜を同じく杭で破る。国民の悲痛な叫びを無視し、聞きたくても誰の声も聞けなくなった国民への責任として。
次に、ほとんどの歯が折れるまで、小型のハンマーで口元を叩く。物言えない国民と、実際に言えなくなった国民への責任として。
鼻はそのままにして、自分の下半身が炙られて漂ってくる臭いを最期まで嗅いでもらう」
「……。舌は? そもそも、それまでに舌を噛んで自殺を図るんじゃないの? それなら、歯を一番先に折っておく方が良いんじゃない?」
「みかは本当にすごいな。こんなに惨たらしいことをしっかり受け止めて、私達のことを考えてくれて」
「化物に慣れてなかったら、できなかったかも。でも、改めて思うけど、やっぱり私は非情だよ。いつの間にか、処刑の成功と効率化を考えてるなんて」
「私は、みかが非情だとは思わないな。色々な人に優しく寄り添うことができてるよ。ファミリーネームを嫌っているらしいが、私は好きだな。安心できるから。
これはセクハラではないよな?」
「まぁ、そうだね。ありがとう、ビルさん」
「ビル、それ俺がいつか言おうと思ってたのに……」
「そういうことは、早く言っておかないとダメだぞ。いつ言えなくなる時が来るか分からないんだから。
まぁ、おせっかいスキルがあれば、どちらかが戦いや事故で死ぬことはないだろうが、病気による突然死の心配は消えないんだから」
「……」
「そう……だよな……。俺もできるだけ言おうとしてたんだけど、最高のタイミングが来ることを待っていて……。
でも、結局言えなくて……。何をしていたんだろうな、俺は。バカだよな。本物のバカだよ」
そんなに落ち込むこと? 今の話のことだよね?
たすくはセレナに同じようなこと言ってたよね? なのに、自分が言われたら落ち込むの?
それとも……。
「……。すまないが、あとでみかがフォローしてやってくれ。
舌の件は想定済みだ。そもそも、舌を噛んで死ぬのは無理なんだよ。完全に噛み切らない限り。そうすれば、舌の残りの筋肉が喉に落ちて気道が塞がり、窒息死する。出血死することはないんだ。
窒息する前に、残りを無理やり引っ張り出せば、気道を確保できるので窒息しない。その状態で、噛み落とした方の舌を持ってきて縫い合わせ、回復魔法を使えば、時間はかかるが話せるようになるまで回復する」
「へぇ、そうだったんだ。知らなかった……。たすくは知ってそうだね」
「……。あ……ああ、もちろん知ってるよ。結構めちゃくちゃなことが多いんだよな。創作で描かれてる表現って。所々、省略されたり、誤解されたりもしてさ。
切腹もこれと似たようなもので、本来は介錯が必要で、その介錯も首を切り慣れている人じゃないと、切腹した人は中々死ねないはずなのに、切腹ですぐに死ねたり、臨時の介錯人もなぜか一発で首を切り落としちゃうとか、ありえないんだよ。
一般的な服飾デザインとしておかしい乳袋とか、生物学的におかしい断面図の子宮の位置とかさ」
たすくは、早口で自分の知識を披露した。
私が言うのもなんだが、こんな真面目な場面で、恥ずかしげもなくエロ漫画の描写について話すなんて、焦っている証拠だろう。
私はわざとだからいいけど。
「……ということで、舌を噛むのは対応できる。それに、たすくも言っていたが、現フォーリエ殿下が死に際に何を訴えるのか、その滑舌を聞くためにも歯は直前、舌は最期まで残す。
すなわち、歯を折ったことを確認し、体内から下半身の皮膚にまで熱が行き渡り、火が出て上半身に燃え移りそうなタイミングで、ようやく執行人のギロチンにより、首を切断する。ギロチンのタイミングは陛下の執行宣言で。
そして、やはりスキルを考慮して、切断後三十秒はそのまま放置する。
その後、執行人が処刑台上の大きめの首置台に首と、消火済みの胴体を設置し、陛下の処刑完了宣言。陛下は、ここで城にお戻りになる。
同じく観覧者の帰宅者もいるかもしれないので、改めてその際の注意事項を私から述べる。
一時間放置後、疫病が蔓延することを避けるために、その首と胴体をその場で処刑台ごと焼く。風魔法で周囲に火の粉が飛ばないように調整する。
残った骨はハンマーで粉々にして、その辺の砂と土と一緒に足でならすだけ。
処刑台への連行開始時に雨天で、止みそうにない場合は一日延期。
開始時間は、首都民の朝食が十分に消化される正午。当日は、昼夕食抜き推奨。吐いてしまうからな。ただし、嘔吐用の箱は疫病対策も兼ねて相当数用意する。これらは処刑台と一緒に焼却処分する。
体調回復用、かつ喉が枯れないように、水筒も処刑台上全員分を用意する。
三時間経過で休憩十五分を挟む。これは執行人の休憩と言うよりは、観覧者の休憩に当たる。
以上!
私はこれにて失礼します!」
そして、ビルさんは王室から急いで出て行った。
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