第五十一話……モチベーションの天才!
「あ、寝てる時でもたすくのスキルが維持されることが分かったから、セレナはたすくと同じベッドで寝ていいよ。
ただし、スキルの力は反射じゃなく、一定の距離を保って無効化にして」
「じゃあ、全身プログラム変更するか。これまで通り、空気や光は通るようにして」
「それは、どのように区別しているのですか? 私はてっきり、顔の前には適用されていないのかと思っていました。
寝ている時に、勢い余って熱いキスをしてしまったら……なんてことを考えていた自分が恥ずかしいです」
「それを正直に言ってくれるセレナなら別に良いんだけど、たすくの方が調子に乗るからね。
『お前の身体の火照りを鎮めてやるよ。これがホントのラブホテリ』とか言って」
「オヤジにも限度があるだろ。ラブホテルを知らないセレナには理解できないし……。
それはさておき、区別の方法については、結構難しいことをしてるんだ。
知らない単語が多いだろうから、ジェスチャーも活用して、雰囲気だけ分かってもらえればいいと思う。それを全部理解するまで説明していたら、普通は数年単位の授業が必要になるから。
最初に、光かどうかの区別は、波動性と粒子性を持っている電磁波の内、可視光線に当たる範囲の波長かどうか。まず、それを通す。光速だから一番先。
しかし、目眩しをされたら困るから、一定以上の強い光は正規化、つまり普通の光の強さに標準化する。
暗闇の時は、少ない光を増幅する。それも正規化の範疇。いきなり明るくなったら自爆目眩ましになるから、常時正規化。
光が全くない時は、波長が長い方、つまり赤外線の方に範囲を広げることで、ある程度は認識できるようになる。もちろん、正規化。
次に、気体を通す。その内、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素他、それまでの正常かつ清浄な空気に含まれている元素をそのままの割合で通す。人間に必要なのは酸素だが、それだけ通しても酸素中毒になるだけだから。
それなら、最初から必要な元素だけを通せばいいじゃないかと思うかもしれないが、固体液体元素との判別速度が一瞬でも遅れるのを嫌った。
割合の不足分は、半径を広げながら自動探索で持ってくる。物体や魔法で密閉されても、力で無理矢理こじ開ける。こうすれば、煙や毒ガスで死ぬことはない。
音は空気の振動だから、あえて区別する必要はない。ただし、音波攻撃に備えて、一定以上の大きさであれば正規化する。
残りは反射か無効化。これでスキルも含めて、被害ゼロ……とは行かず、光を使ったスキルがあればマズイとは思ってる。その時になってみないと、みかにはどう見えるか分からないのも、問題の一つではあるかな。
その典型が、光の屈折で出現する蜃気楼のような幻。南門に着く時に話題に出さなかったら、注意していなかったかもしれない。
あとは、光の点滅による光過敏性発作。これが過去に問題となって、映像を作る時、観る時に注意が必要になった。そのずっと前から、国内外で発生していたから、対応が遅いと言えば、遅いんだけどな。
没入度が高い子どもに起こることが多いから、ラピスには特に注意を払いたい。
ただ、これは対策可能で、点滅周期や輝度差を条件に基づいて自動変換すれば、ほぼゼロの確率になる。
ついでに、別映像を瞬時に挟む、典型的な視覚のサブリミナル効果にも対応できる。他のサブリミナル効果については、あまり気にしなくていいと思う。メディアを介さない現実世界では、すぐに分かるから。
外部作用については、そんなところ。
ちなみに、日常生活においては、まだ問題がある。食事に毒が盛られた場合、つまり内部から人体に影響を与える場合だ。フグやキノコみたいな毒ならまだしも、無味無臭無色だったり、独自に生成されたものは、流石に俺にも全部分からない。
ただ、これに関しては、みかの本質スキルで見えるような気はする。食事が食事たり得ないってことで。でも、根拠はない。
説明はこんなところかな」
「……。なんとなく……なんとなくですが、分かった気がしました」
「たすくって、本当に色々な勉強を頑張ってたんだなっていうのが分かるよね。例の天才も通ってたらしいし、良い高校とか大学行ってそう」
「少なくとも俺は、高校も大学も平均より、ちょっと上の所だよ。近所の高校、そしてそこから少し離れた近めの大学。
その方が、同級生に勉強も教えられて、その人達が次の良い所に行けるかなと思って。
囲碁の天才も、家から近いからが理由だと思う。でも、雰囲気がすごく良い公立高校だったよ。
俺がうざがられてたのは置いておくとしても、いじめはなかったはずだ。俺が教師間含めて、全学年に目を光らせていたのもあったけど、結局見つけられなかったからな。奇跡のような学校だよ。
みかが近所の俺と同じ高校に入学していれば……今の俺達はないから、それは言わないことにするとして……。
偏差値はそんな感じだけど、その分、就職時はどこでも行けるように、学力面では、高校の時に全国模試総合一位を同率だけど取っておいた。
運動面では、剣道部の団体戦での臨時助っ人が一番活躍できたかな。抜き勝負の全国大会で優勝の手伝い。最悪、一人で五人抜きすればいいルールな。一回だけ五人抜きできて、あとはそういう状況にならなかった。
大学でも、できるだけ講義を取りつつ、色々活動してたし、それらを面接で上手く言えばいい。就職には実際困らなかったな」
「えーと……たすく様は、国内の未成年者で最も頭が良く、剣術にも著しく長けているということですか? もしかして、マリアン殿下の短剣を躱していたのも、スキルではなく才能または素養ですか?」
「いや、天才じゃん!」
「天才でも頭が良いんでもなくて、目的を持って、効率良く勉強ができて、鍛えることができただけ。
ビル達の話じゃないけど、俺より遥かに頭の良いヤツも運動神経が良いヤツも、世の中にはたくさんいるよ。
まさに、セレナがそうじゃないか。聡明だし、俺なんかよりも圧倒的に強いんだから。
そもそも、俺の頭が本当に良かったら、おせっかいで怒られたりして悩んでないからな。
かすり傷なく躱せたのも、しっかりスキルを使ってたから。まぁ、その時は今ほど明確に先を読めなかったから、反射神経に任せていた部分は否定しないけど」
「たすく様は、ものすごく謙虚ですね……」
「そうだよ。誰がどう聞いても、天才の部類だよ。教育熱心な両親がいても、子どもの精神が壊れて、家庭まで崩壊するケースだって少なくないのに。
あ、人には天才って褒めるけど、ビルさんが言ってた『真の天才』しか、自分には認めないんだ。善良者と偽善者みたいに」
「それは……そうかもな……。俺が思う天才は、憧れであってほしい気はする。
でも、人に嘘は言ってないんだぞ。それも一種の憧れだと、今になって思うかな。
教育については……少なくとも勉強については、目的に向かって進んでいることを楽しめるかどうかだと思う。
苦しみの中で勉強し続けたら、いつか壊れるのは当たり前だと認識することも大事だ。
たとえ足踏みしても、『どうすれば一歩でも前に進めるんだろう』と考えて、目の前の問題を解決することに喜びを覚える。
それが、本当の『問題解決力』を養うことにもなる。もちろん、社会人になったら大いに役立つ。
以上を一言で表すと、『物事を楽しさに変換するスキル』。もちろん、誰でも取得できるスキルだよ。
その時の精神状態によっては、それができない場合もあるのは、俺を見ても明らかだけど、それは必ず役に立つものだから、身に付けておいて損はない」
「私の考えも同じです。実際にそうしてきましたから。ただ、私の場合は、勇者になったら必ず役に立つ知識や剣術が主でしたが、たすく様の勉強の場合は、人助けという名の将来に役に立つ保証がどこにもないことの方が、ほとんどのはず。
そんな中でもモチベーションを保てたのは、驚くべきことだと思います」
「そうそう、異常者だよ。良い意味で」
「そんな俺でも受け入れてくれる人達がいるのは面白いよな。人生何が起こるか分からないよ。良い意味で」
「わしは日々勉強じゃから、たすくやセレナの話は参考になるのぉ。良い意味で」
「昼寝したのに、もうみんな寝ちゃうの? そんな雰囲気だよね。良い意味で」
「そうしますか。歯磨きして。たすく様と一緒のベッドをあまり勿体ぶると、ドキドキしてきそうですから。良い意味で」
「いや、なんなのその『良い意味で』っていうのは⁉️ 良い意味で」
いつも以上にまったりとした空間で、私達の会話も弾んでしまった。
思いがけず、メンバーの過去の一部やその時の感情を知ることになり、より絆も深まった。
それは、後々役に立つからという損得のためではない。心から純粋に、そうありたいと思った結果だ。それが私達、おせっかいパーティーだ。
そして、私達に限って言えば、それは壊れることが決してない大切なものだ。
わざわざ大事にしなくても、奥から引っ張り出さなくても、常に『そこ』にある。
今、たすくのベッドから、私のベッドにやって来て、たすくの代わりにしっかり私に抱き付いてきた、寝ぼけたセレナのように……。
はい、これが三度目だからね。悪い意味で。
次話から「R15」「残酷な描写あり」となります。
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