第四十七話……反省の色よ!
「こんなの理解できるわけありません! サーズお兄様は、この国を崩壊させるおつもりですか! おかしいでしょう! いえ、私の頭がおかしくなりそうです! 私への嫌がらせとしか考えられません!」
自信満々に学習前テストを受けた後、ビルに国家持続方針の複製紙を渡されたフォーリエは、それを読み始めた直後、怒って紙を投げ捨てた。
テストの採点は、国賓部屋で待機中のセレナが行っていて、その結果が本人に知らされるのは学習後テストのあとだ。
本番前にそれが分かってしまうと、学習と解答が容易になりすぎてしまうことから、昨日の内に、そのように決めた。
一方、子どもが対象の場合は、本番前に知らせることにもした。
「殿下、私からは何も申し上げられませんので、ご学習の続きを」
「殿下からも厳しくおっしゃってください! 不公平です!」
「それは俺も参加して、納得して作ったものだ。これ以上は俺も言えない」
「……」
「し、しかし……! どう考えても……。殿下は、本当は私に……死んでほしいと思っているのではないですか……? だって、おかしいですもの……」
「安心しろ。思っていない。それなら、こんなことはしていない。もう本当に何も言わないからな。監視兵も含めて何も言わないし、しない」
「しかし……! しかし……!」
それからフォーリエは、うなだれてしばらく泣いていたが、自分が投げ捨てた紙を渋々拾い上げ、残りの紙と一緒に、頭を抱えながら学習の続きを始めた。
しかし、それも順調には行かず、途中で机を強く叩いたり、突然立ち上がって、『何なの、これは!』と、内容にどうしても納得できず、しばらく興奮状態が続いたり、天井を見上げたりと、すでに前途多難だった。
「勉強自体が苦手なわけじゃないんだよな。だから、始まるまでは自信満々だったんだけど、いざやってみると、全て打ち砕かれたみたいだ」
泣きながら机に突っ伏しているフォーリエを見ながら、たすくはスキルを使って、私とビルさんにしか聞こえないように、状況を説明してくれた。
その発言に返すため、私は右手を軽く挙げ、たすくのスキルを私にも促した。
「でも、まさかここまでとはね。命が懸かってるから、私はてっきり、齧り付くように真剣に机に向かい合うものだと思ってたんだけど……。
ここまで来ると、なんか可哀想にも憐れにも思えてくるんだよね。まぁ、完全に自業自得なんだけどね」
「それは、みかが優しいからだよ。普通の人なら、『いいから早く死ねよ』とでも思うんじゃないかな。
俺はどうなんだろうな……。ここに来るまでに、心を鬼にする覚悟を決めたから、達観できているのかもしれない。
仮に、この件に関わってなくて、状況だけ聞いて、ここに放り出されたら、フォーリエを全力で助けていたかもしれない」
「当事者意識は大事だよ。そうじゃないと、関係者全員の状況も心情も理解できないで、無責任な判断をしちゃうから。
ある意味、たすくにはできていると思うけど、できていない部分もある。それは、冗談でも何でもなく、サイコパス的に。
多くの人がこう思うことに、そうは思わないことが、人よりも多いのがたすく。良い面でもあり、悪い面でもある。悪い面だと思う人が多いから、たすくは日本社会で終始うざがられてたし怒られてた。
おせっかいスキルのおかげで、それは限りなく少なくなったけど、説明がないと、今回のテストのことも、誰もが受け入れ難いものだった。
それに、全員に説明できないことの方が多いし、全員がその説明を理解できるわけじゃない。今のフォーリエみたいにね。
途中で失敗したら、『あー、やっぱりね。だから、言っただろ』と全責任をたすくに負わせてくるのが普通だから、サーズさんとビルさんはそうじゃないと思うけど、これからは注意した方が良いよ。まぁ、私の言うことなんて聞かないと思うけど」
「いや……ありがとう、みか。そういう時にはどうすればいいか、考えておくよ」
「それでは、あとは監視兵に任せて、私達は戻りましょうか」
そして、私達全員が扉の方を向いて、順番に部屋の外に出ようとした時、真ん中のたすくが立ち止まり、振り返ってフォーリエを見た。
「フォーリエ、次に俺達にスキルを使ったら、お前をその場で殺す。分かったな?」
「あ……あ……殿下! 今のは……今のは違うんです! 殿……」
フォーリエの叫びも虚しく、そのままビルさんが扉を閉め、私達は部屋を後にした。
全員が扉の方を見た一瞬の隙にスキルを使われ、自動で弾き返したことに、たすくが気付いたのだろう。
「抜け目ないね。反省の色が、まるでないし」
「ごめん、みか。俺、悪魔になってた?」
「たすくのことを言ったわけじゃないんだけど……。なってない。黒い霧は出てた」
「ダメだったか……」
「それをダメと言うかは別にして……私に聞かなくても分かるでしょ?」
「いや、昨日も言った通り、直接聞きたいんだよ。だから、これからもあえて聞くことにした。みかの声とトーンと口調が好きだから。早く落ち着きやすい」
「そんなに好きなら、まぁいいけど……」
「みかも俺に甘えてくれよ。抱き締めてほしいって言ってたのに、あれから一度も言ってくれないし。昨日の夜だって、あんなにベッドで俺に『丁度良い硬さと温さで、色々擦れて気持ち良い……」
「待って! それは、セクハラだから!」
「いや、むしろ一つ前より抑えてる方だろ! 途中で止めた方が意味深に聞こえるし! 『……けど、ベッドが広すぎて抱き枕欲しい』って言ってたのにって言おうとしたら!」
「二人とも仲が良いな。戸籍システムも刷新するつもりだから、二人の戸籍登録と同時に婚姻状態にしておくか。みかの方は、『ミカ・セウミ』でいいな?」
「それは、おせっかいすぎぃっ!」
苦しいことや悲しいことがあっても、すぐに日常に戻れるのは、私達の良い所だと思う。
それは、誰にも配慮する必要のないことだから……。
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