第四十二話……共に最高の国家に!
その場にいた、たすく以外の全員が、目の前の『光景』に驚愕した。そこには、ビルさんの姿が映し出されていたからだ。
おせっかいスキルでビルさんに当たった反射光をこの部屋まで届けているのだろう。全ての光を持ってくると、周囲から彼が真っ黒に見えてしまうから、適当な密度の光に絞っていると思われる。
それにしても、いつからビルさんにこっちの会話を流していたのか。
「あとで長々と結果を報告するのは面倒だから、俺達が城の正門に着いた頃から、ビルさんの耳には音声を届けてたんだよ。
想定外のことが起きたら、リアルタイムにアドバイスももらえるし、一石二鳥だから」
「そんなに前から⁉️ じゃあ、サーズ王子のビルさんへの熱い思いも全部聞いてたんだ」
「う……早く言ってくださいよ! そしたら、あんなに恥ずかしいことは言わなかったのに……」
「震えてまともに立てず、嗚咽が出るほど泣いたよ。その時に南門から不審者が来ていたら、対応できないぐらいに……。ありがとう、サルディア。いや、失礼ながら……サーズ。
さて、陛下。最初に、お詫びしなければいけないことがあります。
王家持続保護法を制定するに当たり、先んじて陛下にご覧いただいた最終確定条文ですが、私でさえ想定外の、感嘆すべき陛下のご質問のあとで、改善の余地有りとして、条文を変更、および追加したことを報告すべきでしたが、失念しておりました。誠に申し訳ありません。
その条文とは、『現国王が他者の影響を一切受けず、正常な判断の下で王位継承を宣言し、第一王位継承権を持つ王族がこれを受諾した場合は、その場で当該王族が国王の権利を即時有するものとする。この際、前国王および新国王に対する起訴または中途捜査が存在する場合においては、新国王が掲げる国益に資する王家持続方針および国家持続方針に基づいて、新国王がその継続を任意に判断できるものとする。ただし、前国王に対する当該起訴または当該中途捜査が中止されても、前国王は責任を完全に免れることはなく、新国王は前国王に対して、国民への奉仕義務をその責任の範囲で課すことができる。なお、国王妃も同様とし、いずれも当該義務を怠った場合の罰則は、国民への奉仕義務とする』です。
つまり、先程の宣言で、陛下はすでに前国王となり、サーズが新国王となりました。それはご承知の通りですが、この際、前国王の起訴はなかったことにできます。
また、前国王も前国王妃も重罪相当ですから、死ぬまで国民に奉仕しなければいけません。それを破っても、国民への奉仕。つまり、無限ループです。
まさに、マリッサ殿下のおっしゃった通りになります」
「バ、バカな! 私はちゃんと制定後の条文にも目を通したんだぞ! そんなことは書いていなかった!」
「私も確認しました! しかも、つい最近のことです!」
「大変申し訳ありません。最終確定条文第二版と交換するのを失念しておりました」
「どうして最終確定なのに第二版なんだ!」
「父上、これは実務ではよくあることです。最新版と書かれているのに、古かったりするのです。私は第二版の方を読んでいるので、そのことは存じていました」
「法律では許されないだろ!」
「はい。ですから、当時の法律施行責任者である私の命で、どうかお許しください」
「ビル! 貴様、国民を人質にする気か!」
「ビル、最終責任は中央政府にある。私があとで閣議にかけよう。いつかけるかは未定だ。
失念するかもしれないが、私の責任でいずれ思い出すから、一切口出しするなよ。とりあえず、交換はしておいてくれ。
あと、昔から話していた通り、お前は宰相な。中央政府は一時的に解体し、フォーリエの影響がないことを確認してから、俺がこれまで独自に評価していた者を再評価し、大臣に任命する。もちろん、ロマリは除いてな。人数がわずかだから、最初は兼務が大変だろうが仕方がない」
「新国王陛下の初命令および初辞令、光栄に存じます。異論ございません」
「……。はぁ……お前達には敵わんな……」
「本当ですね……。誇らしくて……嬉しくて……涙が出てきます……。
一から出直す覚悟で、いくら蔑まれても、喜んで国民に奉仕したいと思います。私達には、地べたを這いつくばっても平気な『冒険者魂』がありますから……」
「父上、母上……!」
前国王は天井を仰ぎながら、静かに涙を流し、前国王妃はサーズ王子と抱き合い、共に涙を流していた。
見ると、ビルさんも泣いており、おせっかいパーティーもみんな泣いていた。もちろん、私も。
「ようやく……ようやく俺達がサウズを変えられるんだ……夢を叶えられるんだ……。頼むぞ! ビル!」
「はっ! 我が全ては、サウズ地方サウズ国のために! 共に、最高の国家に再構築しましょう! 陛下!」
その勢いで、サーズ王子がビルさんと抱き締め合おうとしたが、ホログラムなので素通りしてしまい、ちょっとした笑いが起きた。
「ふふっ……失礼。陛下、よろしいでしょうか。先程の話の続きで、まだ話題に挙がっていないようなので、念のために申しておきますと、ロマリはセントラルのスパイである可能性が高く、順番に第一王子、第二王子の派閥を経由して、現陛下の派閥にいたと思われるので、三重スパイということになります。と申しましても、セントラルに国家機密を流しているわけではなく、単にフォーリエ殿下を籠絡させ、国家を骨抜きにする目的だったかと推察します」
「ビルさんの言う通りだ。遠隔で音声のみだったのに、やっぱり状況把握力がすごいな。
さらに付け加えるとしたら、フォーリエ自身がスキルでロマリに自白させたんだが、逆にそれを利用して、アイツからセントラルに近づいたっていう経緯だ。
それを実現させてくれたロマリを愛するようになり、自分と釣り合わせるため、彼の昇進を手伝った。しかしその愛は、言うなればペットに対する愛情を増幅させたものでしかない。
アイツは、王位継承権には興味がなかったんだよ。ロマリの昇進作戦もゲーム感覚でしかない。妹達を殺害したのも、自分の愛する人が妹達に誘惑されては困るという被害妄想の独占欲が理由だ。
断言してもいい。アイツは間違いなく、テストに合格できない。そして、俺のスキルを使って黙らせるか薬を打たない限り、処刑台で泣き叫ぶ。私は悪くないと。
できれば、そのまま泣き叫ばせてほしい。俺はその一部始終を聞いてみたい。興味本位や愉悦じゃなく、どういう思考をするのか、そういう思考にさせないようにするには、どういう方法があるのかを考えたいんだ。
その断末魔を国民に聞かせ、国民にも考えてほしいと思っている。それには、事前に説明が必要だ。
それがアイツの死を無駄にしないための、現時点でアイツを救う唯一の方法だよ。
そして、どれだけ惨い状況でも、それを見届けることが、『アイツの命』を救えなかった俺の責任でもある」
「そんな責任は、本来どこにもないんだけどね。まぁ、たすくならそう言うとは思ってたけど」
「承知しました。マリッサ殿下改め、たすく様。よろしければ、全てをお話しください。これまで同様、勇者管理法に抵触してかまいません。
その間、ビルには交代要員を送って、こちらに来てもらいましょう」
サーズ王子が王室を出て、近くの兵に指示を出してから帰ってくると、たすくはこれまでのことを全て話した。
異世界転生、神様の存在、セレナと第三王女との邂逅、おせっかいスキル、セントラルまでの世直し旅、ラピスとプレアの正体、プラチナ鉱石の採取方法、プレアの夢について。
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