第四十一話……最高の不適合者!
「失礼します」
王の間を抜けた先にある王室に入った私は、早速驚いた。
そこには化物などおらず、人間が二人いたからだ。それは紛れもなく、王と王妃だった。
「『純粋』ランクだよ……。二人とも」
「なるほどな。理由も分かったよ」
「陛下、嬉しい報告と悲しい報告がございます。この度、私サーズ・サウゼリは、身分を明らかにし、こちらのプラチナ鉱石の認定を大広間で行いました。
これは、元防衛事務次官ビル・クライツ発案の政策、洞窟攻略および冒険者育成計画の功績でもあり、こちらにいらっしゃる第一セントラル領国第二王女マリッサ・センティネリ殿下の多大なご協力により獲得したものです。
一方その場で、私を除く王位継承権を持つ全ての王族が売国行為を行なってきたことが明らかになり、特にフォーリエ・サウゼリが自身のスキルを利用し、全ての悪事を主導していたという悲しい事実も発覚しました。
つきましては、王家持続保護法に基づき、フォーリエ・サウゼリを三日後に公開処刑、他の関係者に対しては、フォーリエのスキルによる影響を鑑み、勾留してしばらく様子を見た後、適当な法律により起訴することを決定いたしました。
この際、マリッサ・センティネリ殿下のご寛大な温情により、先の被告、被疑者の全てに対して、社会適合テストを実施し、更生の余地を検討することも決定いたしました。
これは、我が国をより素晴らしい国に発展させる可能性を秘めている政策案であり、罪を犯した王族だけでなく、広く適用させたいと考えております。
簡単ではありますが、以上を私の報告とし、陛下のご意見を賜りたく存じます」
サーズ王子の報告を聞き終えた王と王妃は、顔を見合わせながら頷いた。
「報告ご苦労。そして、ここに、サーズ・サウゼリを王位継承順位第一位とし、同時に現王位を即時継承することを宣言する!
さらに、私自身を起訴人とし、前国王とその妃に、国家騒乱罪を適用し、フォーリエ・サウゼリと同時に公開処刑とする!」
「へ、陛下! お、お待ちください! 即時継承はまだしも……そのような冗談は、おやめください!」
二人が人間の姿をしていたのは、自分達が死ぬことを覚悟していたからだった。
いや、それどころか、自分達で自分達を国家犯罪者として公開処刑するという発想が、思ってもみなかったことだ。すさまじい覚悟と言えるだろう。
「冗談ではない。当然の帰結だろう。王位継承権を賭けて、子ども達に政治のほとんどを任せると言った結果、国民の苦しみを無視し、国益が日々損なわれていくことを黙って見ていたのだから。
王家持続保護法の制定時に、その選択肢があることをビルにも確認している」
「なっ……! ビ、ビルは知っていたのですか……」
「ああ。『その時は私も死にます』と言われた。それに対しては、『思い上がるな! と言いたいところだが、万が一、サーズ以外が王となる場合、お前が死ねば国家も死ぬ』と言って、思いとどまらせた。
それでも、私に直談判してきた時に、自分の首を賭けてきたから、それを閣議の時に思い出し、『貴様は国家を殺す気か!』と怒鳴ったな。
このまま城にいれば、無能な大臣や王子達に絶望して、また死ぬと言いかねないから、その機会に左遷することにした。いずれ来る復帰の機会を待つために。
仮にその先で無能な者がいても、城と街とでは、求められるレベルも人材も異なるから、それほど絶望せずに、『仕方がないか』と思えるだろうと考えてな。
私の経験からもそう言えるのだ」
「そ、そうだったのですか……。何たる思慮深さ……。陛下は……父上は……『優秀な者ほど絶望しやすい。自慢ではないが、私がそうだった。しかし、様々な立場で、様々な人間と出会うと、その可能性も低くなると私は考えている。あくまで可能性だが。私の場合は、愚かにも、隠れて冒険者パーティーに参加していた。パートナーに支えてもらえば、より安心できる。それは、仕事のパートナーかもしれないし、異性のパートナーかもしれない。私の場合は、後者だった。いや、冒険者の時に出会ったから、前者でもあるかな。吊り橋効果はすごいぞ! ガハハハ!』とおっしゃっていましたね」
「懐かしいですね……。『下半身を回復してくれ、下半身を! 治り切らないかもしれないから、夜も頼む! 直接触れるともっと早く回復するはずだ!』と言われて、『何だコイツ……セクハラだろ……』と思ったことが今でも思い出されます。吊り橋効果どころか、吊り橋から落としてあげたくなりましたから」
「いや、待て待て! もう死ぬからと言って、俺の威厳を損なうようなことをバラすな! それならお前は、今でこそ可憐な慎ましい王妃のように見えるが、昔は回復役なのに、斧と剣を振り回す凶暴キャラだっただろう! 俺に好かれるためにイメチェンしたクセに!」
「……」
「違いますぅー! 元々清楚キャラで、ノウズ地方の有名な冒険者に憧れて、そういうキャラ付けにしたんですぅー! 戻したキッカケは、途中でボロが出たらあなたに笑われて、殺したくなるに違いないと思ったからですぅー! 戻した時も笑われて、タコ殴りにしましたけどね!」
「いや、それなら元々清楚じゃないだろ! まぁ、身体の方は清らかだったけどな。ガハハハ!」
「父上……」
「サーズ、今すぐこのセクハラバカオヤジを処刑しなさい。あなたがやらないのなら、私がやりますから」
「母上……」
「まぁ、こんなに明るく振る舞ってても、国民と国益を損なったことを心底悔やんでることに変わりはない。そうは見えないかもしれないけど。
それに、もう一つ。サーズには、妹がさらに二人いた。しかし、幼くして亡くなっている。それを受け入れているんだ。すごいことだよ」
「はい……。兄も私も、やはり妹はかわいいですから、いずれも事故で亡くなった時は、とても悲しかったです」
「その妹達が、自分の座を将来脅かすと思い込んだフォーリエによって殺されたことを、王も王妃も気付いている」
「なっ……!」
たすくの暴露に、サーズ王子だけでなく、王も王妃も驚いている。
「で、殿下、なぜそのことを……あなたのスキルですか……?」
「ああ。そして、フォーリエのスキルによって、王子達が気付くこともなかった。王達は、あまり人前に姿を現さず、面会できる人物を極力制限していたから、免れているようだ。
いや、もしかしたら、気が付いた後にスキルを使っても効果が薄いのかもしれないか。
いずれにしても、現在は影響がなさそうだ」
「ゆ、許せない……! 殿下! それでもまだ、あの化物に機会をお与えになるとおっしゃるのですか!」
「気持ちは分かる。俺だって許せないんだ。全身から怒りが込み上げてくるのを必死に抑えている。
だって……その妹達が笑顔で……みんなと遊んでいる光景が……! 遺体を抱いて泣いている王妃が……! 目の前に! 鮮明に見えるんだぞ! 誰が許せるって言うんだよ!」
「殿下……」
たすくは堪えきれずに涙を流し、震える声を必死に絞り出した。
たすくもスキルアップしていたのだ。頭の中に、映像も音声も、今起こっているかのように流れ込んでくるのだろう。
「……だが、王達はそれを受け入れた。それも継承権争いに含まれることであり、化物を生み出してしまったのは自分達の責任だから。
それに、国民を殺しているフォーリエを黙って見ているのに、肉親が殺された時だけ処罰するのは、国民を大切に思っていないことと同義だから、何もすることができなかった」
「う……その通りです……。私もどこか国民を見下していたのでしょうか……。父上も母上も尊敬します」
「サーズ、尊敬などしなくていい。私は紛れもなく悪王だ。政治は結果。悪王を尊敬する良王など存在しない」
「殿下、このように愚かな私どものために、尊い涙を流してくださり、ありがたく存じます。
私どもとは違い、サーズは自慢の息子でございます。私どもがいなくなった後もご迷惑をおかけするかと存じますが、何卒ご容赦いただき、お目をかけていただけますと幸いに存じます」
王と王妃は立ち上がり、一国の君主であるにもかかわらず、たすくに向かって深々と頭を下げた。
しかし、二人の礼儀に対して、たすくがどのように返すかは、私には容易に想像できた。
「断る」
「で、殿下⁉️ サーズが何か粗相をいたしましたか⁉️」
「違う」
「で、では……私どもの顔に泥を塗るおつもりですか⁉️」
「そうだ。二人の公開処刑は中止。いや、起訴を取り下げろ。国民の亡骸に囲まれて、泥を食べて生きて行け!」
「っ……!」
「殿下、いえ、『あなた』というお方は……本当に世間知らずですね……。涙が出てくるほどに……。あなたこそ、『最高の不適合者』だ……」
「お、お待ちください! そのような……そのような権限は、あなたにはありません!
ましてや、あなたの現在の身分は、『元』第一セントラル領国第二王女であって勇者、いえ、セントラルからは偽勇者とみなされていると聞く……。
あなたが、いや、貴様が何と言おうと、私達の公開処刑は実施する!」
「そんな言い方にしたって、俺は怒らない。強い口調で怒られ慣れてるからな。
確かに俺に権限はないよ。でも、サーズ王子にはあるんだよな? 彼は、俺の言うことを王家の総力を上げて、何でも聞くって言ってくれたんだよ。
サーズ王子、説明を……いや、せっかくだから、法律を作った『本人』に聞くか。そうだろ、ビルさん!」
「⁉️」
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