第四十話……処刑却下⁉️
「殿下、誠に恐れ多いのですが、それも十分お分かりのことと存じますが、念のために申し上げますと、殿下の鶴の一声はお控えください。
大恩がある殿下からのお言葉があれば、私も従わざるを得ませんから……。
これは我が国の王家の問題であって、我々の責任です」
「殿下、関係ありません! あなたのお好きなように、セントラルの利益になるようにお考えください! そうすれば、セントラルに大手を振ってお戻りになれますよ!
悠々自適の生活が! ご自分の気持ち良いことだけをして過ごせる日々が待っていますよ! たくさん気持ち良いことをなさってきたでしょう! 私もセントラルの皆様に憧れて真似をしていたんです! あの頃を思い出してください!」
「……。あの頃なんて知らないけど……そうだな。俺の好きにするよ。ごめん、サーズ王子」
「流石、殿下! 私がこの世で最も尊敬するお方です!」
「うわ……ガチで気持ち悪いな、この化物……」
「殿下……。それでは、殿下のご希望をお聞かせください」
「フォーリエ・サウゼリの公開処刑までに、彼女に『あるテスト』を受けさせてほしい。
そのテストに合格できたら、執行までにさらに猶予を与え、再度別のテストを受けさせてほしい。
それに合格できたら、処刑は中止。俺がその時いる場所に彼女を送ってほしい。俺が責任を持って彼女の面倒を見る。
ロマリとは会えなくなるけど、それでいいか?」
「殿下、ありがとうございます! 誠に、誠にありがとうございます! 殿下の寛大なお心に私フォーリエ、誠心誠意尽くして参ります! このご恩、一生忘れません!
命あっての物種でございます! ロマリのことは金輪際忘れ、あなた様に全てを捧げます!
ああ、セントラルの禁忌が何であろうと、楽しみで仕方ありません……。美しく真っ直ぐな心をお持ちのあなたと肌を重ね、真剣に愛し合う日々が!」
「あれだけ、ロマリへの愛を叫んでおきながら手のひらを返すなんて、現金だねぇ。王族としての誇りも威厳もないじゃん」
「うるさい! ゲロ女は黙っていなさい!」
「ゲロ以下の化物に言われたくないんだけど!」
「殿下、そのテストとは……?」
「サイコパス診断を拡張させた『社会適合テスト』だ。『効果測定』とも言う。本来、サイコパスは精神障害の一種だが、一般社会と王族貴族社会では、常識も価値観も異なり、お互いが異常だと判定して、相容れづらいものとなっていると想像する。
その歩み寄りも兼ねて、国が目指すべき社会を方針として示し、それを問題に落とし込み、解かせることで、自分がいる社会とはどういうものか理解させるんだ。
禁忌問題も入れる。これを間違えたら流石にダメだろっていう問題だな。
それを含めて例を挙げると、『人は殺してもいい、○か✕か』『自分が気持ち良くなればそれでいい、○か✕か』『王族は自分の国の中なら何をしても許される、○か✕か』みたいな問題が前半にある。
後半に行くと、『国益のためには、奴隷の売買はやむを得なく、その際、帳簿にしっかり記録すれば何ら問題はない、○か✕か』と少し分かりにくくなる」
「それは、簡単すぎではありませんか? あっさり、処刑を免れてしまいますよ」
「そう思うだろ? 実はそうでもないんだよ。俺が言うのもなんだけど、俺達の想像を遥かに超える社会不適合者が世の中にいるんだよ。別に、差別したり揶揄しているわけじゃなく、事実として言っていると念のために言っておこうか。
それに関する有名な話で、『ケーキを三人で分ける場合、どうナイフを入れるか』っていう問題に対して、もちろん正解は一つじゃないんだが、常識的な解答にならない人がいる。わざとやってるのかもしれないけど、それはそれで別の問題があるんだよな。
いずれにしても、その問題は、個人の精神障害の現れだけでなく、これまでの教育や環境も影響しているから、社会問題としても考えられる。
その社会不適合者を排除するのか救済するのか、あるいはそのまま受け入れるのか、そういう人達が生まれないように、環境を整備し、社会を良くしていくのか、それもそのまま受け入れるのかは、その国次第だ」
「なるほど……。殿下らしく、崇高なお考えです。とは言え、私もにわかには受け入れづらいのですが……」
「俺には、その片鱗は見えていたんだけどな。この問題は、人間とモンスターの関係に似ている。
冒険者育成計画では、高レベルモンスターと対峙した時の対応はどうすることにしているんだ? 『モンスター側がこちらに気付いた上で、明らかに戦う意志がない場合、冒険者は十分に距離を取り、不用の消耗を避けるため、注意しながら洞窟内を進むこと。ただし、挟み撃ちには、さらに注意すること』としているんじゃないか?
だから、シルバードラゴンが洞窟外に出た時も、冒険者は慎重になり、それに倣った兵士も、命令で煽られない限り攻撃を控えることで、人間側の被害が全く出なかったんじゃないか? そうじゃなかったら、戦力の逐次投入を避けるために、一斉に攻撃してるだろ?」
「まさに、ご慧眼。おっしゃる通りです。そこは、ビルとも議論しました。『我々人間はモンスターを恐れているが、モンスターも人間を恐れている。どちらも死にたくないのだから、戦わないに越したことはない。人間のように、常に何かを奪い合っているわけでもないのだから。互いに恐れなくなった時、歩み寄った上で、戦いが始まるのか、手を取り合うのかは分からないが、後者だったら素晴らしいことだ。ワクワクさえする』と。
殿下がいらっしゃる前提では、恐れなど一切ない状況。そこでまずは、歩み寄りからですか……。本当にあなたには、何度も目覚めさせられる……。
承知しました。そのテストを王族用、貴族用、従事者用、別々に作成し、全員に受けさせた方が良いですね。まずは王族用ということで……。
なるほど、そこまでお考えになってのご発言ということですか。感服いたしました」
「流石、その通りだよ。国防にも関係するから、ビルさんにも作成に協力してもらおう。サイコパス診断が趣味のみかも大いに協力できるんじゃないか?」
「別に趣味じゃないんだけど……。まぁ、やってみたいかな」
「ふふっ、そのつもりです。これから忙しくなりますので、どうかご覚悟を。
もう一つ、よろしければ殿下には、この政争の幕引きにおける混乱を避けるため、城内人員の選別がある程度完了するまで、こちらにご滞在いただけないでしょうか。
もちろん、セントラルにご出発なさることは承知しておりますが、私がすぐに暗殺されては元も子もないと申しましょうか……。
何から何まで殿下に頼り切りで、お恥ずかしい限りですが、その代わり、殿下のお望みのことがさらにあれば、我が王家の総力を上げ、実現する所存です」
「分かった。滞在させてもらうよ。じゃあ、その間、サーズ王子とビルさんが作った法律と政策案を見せてくれないか? セントラルの法整備の際に参考にしたい。
俺は専門家じゃないし、この通り、好きにやってる部分もあるからさ、痒い所に手が届くような思考ができる優秀な人の真似ができればいいなと思ってるんだよ。
そういう人とは、普通の生活をしてたら出会わないからな。二人に会えて本当に良かったよ」
「……。もったいないお言葉……。私の方です……。私の方こそ、あなたにお会いできて本当に良かった。
かつて、私に対して殿下が、『その才能と環境が羨ましい。いつかあなたのようになりたい』とおっしゃってくださり、光栄に思っていたのですが、最近の殿下を取り巻く状況に、私の存在が悪影響だったのではないかと心を痛めておりました。
なんとか殿下をお救いしたいと思っていたところに、マリアン殿下があなたに殺されそうになったとの話が飛び込んできて、そんなはずはないと。
ビルの『目利き』が行われ、さらに純粋で誠実な殿下に変わりないことが分かれば、マリアン殿下の虚言であることは明白。
以降は、僭越ながら絶対の信頼を置いていましたが、高々一時間程度でこれほどのことになるとは思ってもいませんでした。ビルでさえ、読み切れたかどうか。
全ては、あなたがキッカケなのです。そういう意味では、いつの間にか、私の方が『今のあなた』を羨ましく思っていたのかもしれません。
だからこそ、私は今まで募らせていた感情を爆発させて、この大広間であのような啖呵を切ったのだと、今になって思います。
あとでお話をお聞かせください。『今のあなた』になった経緯について……」
「ああ。もちろん、全て話すよ」
そして、私達はロマリ達、フォーリエ、第一、第二王子を牢屋に連れて行き、この騒動でも姿を現さなかったサウズ王に、事の顛末を報告するべく、王室に向かった。
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