第三十九話……最高のバカ
「その話には続きがある……」
「そして、ロマリが必要になるんですよね。もちろん、これからも」
「……。ビルは政策提案前、陛下に直談判し、想定される指摘を全て挙げ、同様の話の後、『ただ、彼の裁量ではその提出がそもそもできません。彼が、その才能により全てをまとめたにもかかわらず、本当に何もしていない上司からの提出で、その上司や上層部の評価になることだけは、避けなければいけません。実際、財務省では評価システムが破綻し、権限を少しでも超えた職務は一切評価にならず、国益に沿わない政策であっても、昇進できてしまう歪んだ構造にもなっています。被評価者へのフィードバックもなく、いつの間にか自分の評価が決定されています。この際、少なくとも役職を限定しない拡大評価と、複数昇格のための多段評価について、中央政府で特例のご判断をいただけないでしょうか。その職務を驚くべきスピードで果たせる人物は、後にも先にも彼だけですから。彼の足踏み自体が、国益を大きく損ねています。政府を越えた陛下への直接の進言、大変失礼かと存じますが、私の首を以ってお許しいただきたく存じます』と思いの丈を全て吐き出した」
「……え?」
「そして、陛下は中央政府閣議にご参加。本当はその政策案で通してもよかったが、他の無能参加者のズレた反対意見にあえて賛同、わざと怒りを露わにし、防衛省からの提出を廃案にし、防衛事務次官だったビルを、進言通りの処刑ではなく左遷。まさに、忠臣の命を賭けた忠義と誇りに、寛大にお応えになった」
「は? え……はぁぁ? 何をおっしゃっているのです?」
「まだ分からないのか? ビルは自分と家族の将来を犠牲にして、縦割りの垣根を越えて、俺をスピード昇進させたんだよ! 自分が防衛省の事務方トップでいるより、俺が一刻も早く財務省のトップに就く方が、圧倒的に国益になると信じて! 無能どもも引き摺り出して!
初めから最高の政策案を共同提出したら、そんなことにはならない! 極秘の直談判でビルだけ処分されても不自然!
アイツのことだ、家族には事前に土下座でもしたんだろう! 理解ある最高の嫁さんと子どもだ! そして、全てを背負った!
これがバカじゃなくて何なんだよ! バカだけど……俺なんかより遥かに優秀なんだ! 全てを見透せるほどに!
それがなかったら、今の俺も殿下方もここにはいない! ビルでさえもどうなっているか分からない!
この状況こそが、ビルが作ってくれた一筋の希望だ!
アイツは、俺がこの世で最も信頼できて尊敬できる、最高のバカなんだよ! 誰であろうとアイツを貶めるヤツは許さない!
フォーリエ・サウゼリ! 貴様を国家転覆罪で公開処刑する! 処刑は三日後! 獄中と地獄の底で、一人で勝手に愛を叫んでろ!」
「なっ……! ま、待ちなさい! あなたにそんな権限はありません!」
「あるんだよ! 本物のバカのお前は知らないだろうが、ビルが作った王家持続保護法にその権限が! 『王族が王位を継承するに当たり、王位継承権を順番に、または順序なく持つ王族同士が、政治的または物理的に争った場合において、国益を損なわないことを最優先とし、王族はこれを速やかに収めなければならない。やむを得ず、争いが続いた場合において、その過程または結果で、国益を著しく損なわせた王族に対しては、互いの王位継承順位に依らず、国家騒乱罪または国家転覆罪を適用することができる。ただし、起訴は王族のみに限定され、王族以外の者が起訴をしようとする場合は、王位継承に相応しく、国益に資すると認められる王族の十分な承認を得た上で、その王族が起訴することとする。また、その処罰の内容および方法については、起訴した王族が適用罪の範囲で決定し、その背景または経緯と共に、これを公にしなければならない。この際、起訴事実が国民から見て明らかな場合、起訴した王族の名において、裁判過程を省略できる』としっかり書いてあるんだよ!
国益を最優先に、国家と王家の安寧を目的として、王族にも王族以外にも配慮し、同時に効率的でもある! 書いた人の我が国への熱い想いが伝わってきて、何度も読み返したくなる、誰も否定できない素晴らしい条文だ! これが真の国防なんだよ!」
「し、知りません、そんなこと! そんな法律は無効です! 第一王女の権限により、その法律を現時点で廃止します!」
「法律を廃止する手続きも知らないようなヤツが、廃止の権限を持っているなんて滑稽だろ。それこそ、そんな権限はないんだよ!」
「あ……あ……そ、そうだ! マ、マリッサ殿下! あなたの権限で、どうか私とロマリをお救いください! サウズは、セントラルに服従しているでしょう? このままでは、サウズはセントラルから独立、いいえ、セントラルに攻め込んでしまいますよ!」
「そうなのか?」
「まさか。そもそも、サウズは独立国家です。ただ、セントラルの言いなりになっていることは事実です。そこからの脱却とセントラルとの戦争を結び付ける人がいますが、短絡的すぎま……それもコイツの仕業か……。だとすると……」
「殿下! 私を殺したら、困るのはあなたなんですよ!」
「おいおい……。コイツ、セントラルに人を売ってるぞ! 物理的に! 奴隷として! スキルや魔法の実験台として!」
「やはり……。その土台があったからこそ、スキル所持者に拡大しやすかったんでしょうね。財務省の私ですら知らないということは、完全に裏帳簿がありますね」
「何をとぼけているのですか! 殿下だってご存知でしょう! ご自分の剣術の練習のために、奴隷を切り刻んだでしょう! 魔法で焼き殺したでしょう! あれは我が国からの輸出品なんですから! それがゼロになるんですよ!」
「……」
「たすく様、ご安心ください。それはあなた以外の王子王女の話です。『バラ』の話を思い出してください」
「ありがとう、セレナ。でも、知ってはいたはずだよな……。それを抜きにしても、怒りは流石に消えないな……アンガーマネジメントでも限界があるほどに……。
これほど価値観が違う人間に対して、『多様性』なんて無価値な言葉だし……。どうすればいいんだろうな……。やっぱりここは……」
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